都市部にイノシシが急増 台風被害と人間の愚かな行為が原因だった

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人間の生息地域に姿を現すようになったイノシシ。写真は昨年3月に撮られた福島県内の画像

12月15日の昼過ぎ。東京都国立市のJR国立駅前は、日曜日ということもあり多くの人が行きかっていた。突如パトカーのサイレンが、あわただしく鳴り響く。

「捕獲しろ!」

網を持った警察官に追われるように現れたのは、体長1mほどのイノシシ。唖然とする通行人をしり目に、立川方面に走り去っていった――。

全国の市街地で、イノシシの目撃情報が相次いでいる。12月2日には東京都足立区の河川敷で、4日には埼玉県志木市や富士見市で、15日には東京都立川市で。都市部に出没することから“アーバンイノシシ”と呼ばれる野生動物は、10月までにキバで刺すなどして32人にケガを負わせているのだ。

ここまで頻繁に、イノシシが市街地で目撃されることは極めて珍しい。なぜ近頃アーバンイノシシが急増しているのか。野生動物保護管理学が専門の、兵庫県立大学・横山真弓教授は「理由は複合的」と解説する。

「まず、イノシシの繁殖力が非常に高いことがあげられます。シカのメスは1年に2頭しか生みませんが、イノシシは4頭生む。12月から2月が繁殖期で、春に生まれたイノシシが大きくなっているんです。環境省は捕獲を進めていますが、とても追いついていない。山里から溢れた個体が、市街地に進出していると考えられます」

環境省によると、‘17年度のイノシシの全国個体数は90万頭近く。30年前の3倍以上に増えているのだ。東京都猟友会の八尾明・副会長は、今秋に列島を襲った台風や河川の氾濫などの災害も影響していると推測する。

「今秋起きた大型の台風が、イノシシの生息地域に大きな被害をもたらしたのでしょう。彼らが普段食べるミミズや木の根などのエサやすみかが、水害で流されてしまったんです」

最も深刻な理由が、人間の心ない行為だという。前出の横山教授が続ける。

「人間が山中などに捨てたゴミに、イノシシが反応しているんです。ゴミの中には、栄養価の高い野菜や果物の皮などが入っている。また人間は、イノシシが近づくと攻撃せずに逃げていきます。学習能力の高いイノシシは、人間は危険な相手ではなく、ご馳走を持っている存在と認識しているのでしょう。あまり恐怖感を持たず、ジワジワと市街地に生活圏を広げているのかもしれません。イノシシの体重は通常50kgほどですが、中には人間の食べ物に慣れ150kgを超える個体も確認されている。イノシシのアーバン化を防ぐには、安易に野生動物の生息圏にゴミを捨てる人間の意識を変えなければいけないでしょう」

イノシシに遭遇したら、どう対応すれば良いのだろう。前出の八尾氏が話す。

「大声をあげたり、走って逃げると相手を刺激して危険です。ゆっくり後ずさりして、建物の中などに退避することが大切。高い場所にいても安全ではありません。1mほどの高さなら、イノシシは跳躍し飛び越えることが可能なんです」

災害や人間の行動によって、野生動物の生息域はどんどん狭まっているのだ。

 

  • 写真時事通信社

Photo Gallary1

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