悲願の初優勝へ死角なし 御所実業の強力FWが「花園制覇」に挑む

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御所実を悲願の全国大会初優勝に導くため、奮闘する中心選手たち。右PR島田彪雅、FB石岡玲英、左PR津村大志(左から)

悲願は初優勝だ。

御所実は12月27日に開幕した第99回全国高校ラグビー大会に挑む。

「対相手ではありません。相手によってデキが変わるようではダメ。自分たちのやるべきことをいかに出せるかに尽きます。1試合1試合、一生懸命やるしかないですね」

監督の竹田寛行は大会を見据える。高校ラグビー界の名伯楽のひとり。無名の奈良の県立校を前名の御所工時代を含め、31年の指導で大会準優勝3回の名門に育て上げた。

大会出場は2年ぶり12回目。11月15日、県予選決勝でライバルの天理を22-10で下した。その結果、春の選抜大会準優勝(19-29桐蔭学園)の実績などがかわれ、Aシードに選ばれた。

シード校はAを3、Bを東西から5ずつの10選ぶ。初戦での強豪同士のつぶし合いを避けるため、大会シード委員会が13校を決める。今年のAシードは御所実と桐蔭学園、京都成章になった。大会の前段階で「もっとも頂点に近い」との判断がなされたことになる。

竹田は自チームの戦力分析をする。

「今年はフロントローがいいですね。プロップの津村と島田。それにフッカーの川上。ディフェンスもできるし、動けます」

川上善也が真ん中。左の津村大志と右の島田彪雅(ひゅうが)の2人はともに高校日本代表候補でもある。

津村は試合で判断を下すゲームキャプテンをつとめる。172センチ、110キロの体にもかかわらず俊敏。大学選手権9連覇の帝京進学が決まっている。津村は御所実でラグビーをするために、大阪から奈良に来た。

「中学の時、御所実のテレビ番組を見たのですが、差し入れにみんなでお礼をしている姿を見て感動しました。普通はキャプテンだけじゃないですか。ここなら人間的にも成長させてもらえる、と考えました」

保健・体育教員でもある竹田は恩義に対してきちっと報いる。同時に部員たちに対する優しさもある。昔、体育教官室には菓子パンやカップ麺が置いてあった。食事が摂れずに登校してくる部員たちのためだった。

島田は東海大仰星に入学したが、「自分に合わない」と1年で中退して、御所実に入りなおした。サイズは176センチ、110キロ。先頃、トップリーグ優勝4回の名門・パナソニックとプロ契約をした。津村と並べば迫力がある。

「この環境は素晴らしいです。したいようにさせてもらっています。ファミリー感があって、先生と生徒もしゃべりやすいですね」

御所実では先輩を「君」付けで呼ぶ。「さん」ではない。兄弟関係のような雰囲気がグラウンドには漂っている。

竹田の御所実を慕うチームは多い。毎年7月末には1週間ほどかけて「御所フェスティバル」が行われる。今年は海外も含め、全国から34チームが集まり、泊まり込みで練習試合をこなした。

津村の中では満足感がある。

「ここを選んでよかったです。指導陣は素晴らしいし同級生はみんな仲がいいです。唯一無二の存在です」

竹田の31年の努力は御所市や奈良県の協力を呼び起こす。グラウンドは人工芝でLED照明が備え付けられている。寮も竹田が作った。津村や島田は寮生だ。

学校は薬品科学科など5学科で構成されている。在校生は650人ほどだが、ラグビーは県の強化種目になっていることもあって、1割は県外生を受け入れられるようになった。

全国制覇のためのハード面は整う。

ソフト面は今年、伝統のディフェンスとモールに磨きをかけてきた。攻守両面で拠り所を持っている。

全体をまとめるチームキャプテンは石岡玲英(れい)だ。関東リーグ戦の強豪・法大に進むフルバックは守りに自信を持つ。

「ディフェンスはウチの強みです。周囲とコミュニケーションをとってやっています」

試合形式の練習では、数回連続して攻撃を止めた後、ラインが破られた想定をして、30メートルほど後ろに15人全員が戻る。それを繰り返し危機管理も徹底された。

御所実ではこの石岡、津村、島田のほか、フランカーの西林勇登、スクラムハーフの稲葉聖馬、センターの谷中廉と3年生6人が高校日本代表候補に名を連ねる。

津村はフォワードらしく「モール推し」だ。

「自分たちの強みです。ラインアウトから組んで、トライを獲りに行きます」

相手を8人以上にしたり、8人すべてを体重の重いプロップに変えて練習を重ねてきた。チームとしての攻めも整備される。

1960年5月8日生まれの竹田は59歳。定年の60歳まで、「監督」として出る大会は今回を含め2回しかない。今年は天理を破り出場を確定させたが、来年は分からない。

シード校のため12月30日の2回戦が初戦になる。相手は三重の朝明(あさけ)。東大阪市花園ラグビー場の第1グラウンドで午前9時30分キックオフだ。

島田は言う。

「先生に教えてもらったことを出し切って、優勝したいです」

恩師への思いを秘め、高校生たちは戦う。

  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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