発生から20年 世田谷一家殺害事件“老朽の惨劇現場”解体の是非
‘00年12月に起きた平成最悪の事件から間もなく20年。遺族は殺害現場保存を訴え続ける
「地域の方にとっては、(あの建物は)負のシンボルだと思うんです。でも、それがなくなることによって、事件を解決する熱意のシンボルもなくなってしまう。私としては、建物を保全してくださいと警察に頼まれていたつもりなのに、急に突き放されたような気持ちになりました」
宮沢泰子さんの姉・入江杏さんは、12月14日、自身が主催する追悼の集い『ミシュカの森』の終了後にそう語った。
2000年12月31日午前、東京都世田谷区にある宮沢みきおさん(当時44)の自宅で、宮沢さんと妻・泰子さん(同41)、長女・にいなちゃん(同8)、長男・礼君(同6)の遺体が発見された。
それから犯人逮捕に至らないまま、事件発生から20年目を迎える。その一方で、いま現場の住宅が解体される方向で協議が進んでいる。
「建物が老朽化し、暴風などによって損壊する可能性があるため、’19年3月に警視庁が遺族に打診しました。現場の裏手には子どもが遊ぶ公園があり、危険があることは確かです」(全国紙社会部記者)
だが、未解決事件の現場を消し去ってしまっていいのだろうか。警視庁成城署の元署長である土田猛氏はこう言う。
「可能なかぎり残したほうがいい。犯人にきちんと罪を認めさせるために、血糊の残った現場で検証を行い、供述させる意義は大きい。時効制度がなくなった現在、捜査はずっと続けられます。この事件は、DNAなど犯人に直結する証拠があるので必ず検挙できると信じています」
前出の入江さんはこう明かしている。
「平成の大事件と言われている八王子スーパー強盗事件(’95年)の現場など、すでに取り壊しになっている場所もあると警察の方から言われました。とくに地域の新しい世代にとっては、それも必要なことなのかもしれません。けれども、やはり警察の方には、もう少し丁寧な対応をお願いしたいと思うんです」
犯人を見つけ出し、事件を解決するために何をするべきか。それを突き詰めていけば、「凶行の現場解体」の是非の答えが見えてくるはずだ。
『FRIDAY』2020年1月3日号より
- 撮影:小松寛之(1枚目写真)