小柄で礼儀正しい娘が自殺 元農水次官熊沢被告の懲役6年は妥当か

暴行をふるう長男を殺害した熊沢英昭被告。娘の自殺に妻のうつ病と最悪の結末を迎えた家庭環境を探る

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熊沢英昭被告の自宅(12月16日現在)。事件以降、妻は自宅には帰っていないようで、家には人の気配がなかった

「無意識に体が動いたんですが、ただその前にやれることがあったかもしれない」

被告人質問で現在の気持ちを聞かれると、熊沢英昭被告(76)は涙ながらにそう語った。

農林水産省の元事務次官が長男を刺殺するという衝撃の事件の判決が、12月16日、東京地裁で下された。

懲役6年。殺人罪にしては軽い量刑だが、情状酌量の判断材料になったのは、熊沢被告が置かれていた家庭環境だ。発達障害を抱える長男・英一郎(享年44)さんの日常的なDVに悩まされていた熊沢夫妻。法廷に立った熊沢被告は、事件数日前に「ゴミを片付けなきゃ」と声をかけたときのことをこう回想した。

「『ゴミ捨てろ、ゴミ捨てろばかり言いやがって』と長男が逆上し襲ってきました。殴る蹴る、そのあと、髪の毛を鷲掴みにされ、サイドテーブルに叩きつけられ……」

長男の存在によって、元事務次官はさらに追いつめられる。妻の証言によると、英一郎さんが原因で縁談が破談となり、絶望した熊沢被告の娘が5年前に自殺したというのだ。娘を知る近隣住民は話す。

「英一郎さんより3~4歳ほど年下の小柄な妹さんで、道端で会うと挨拶してくれる礼儀正しい子でした。ただ、妹さんは亡くなる少し前から様子がおかしくなっていました。会っても挨拶せず、終始暗い表情で俯(うつむ)き気味。それからしばらくして、熊沢さんの家の前には救急車が。妹さんが自殺したらしいという話は近所中にすぐに広まりました」

熊沢被告にはたしかに同情の余地はあるかもしれない。しかし、警察や病院に相談することなく、殺人という手段で問題解決を図った事実は揺るがない。元東京地検公安部長の若狭勝弁護士は言う。

「殺人罪の場合、懲役15年をベースに考え、減刑される場合でも10~12年ほど。今回の求刑8年、懲役6年というのはかなりの情状酌量があったと言えます」

どんなに精神的に追いつめられていても、人の生命を奪う権利は誰にもない。法廷では、被害者に対する謝罪の言葉は一言もなかった。「懲役6年」という刑期は、情緒に流された判決なのではないか――。

駒場東邦高等学校’92年度の卒業アルバム。美術部だった英一郎さんはアニメ会社への就職も考えていた
英一郎さんと揉み合いでケガをしたのか、6月3日に練馬署から送検された熊沢被告の右手には包帯が巻かれていた
  • 撮影蓮尾真司(熊沢被告、自宅)

Photo Gallary3

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