1月11日国立で決勝 早稲田戦に燃える明治大・箸本龍雅の進化

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箸本龍雅は身長188センチ、110キロ。現在のポジションはロックだが、将来的にはジャパンのフランカー、ナンバー8での活躍が期待されている(写真:築田 純/アフロスポーツ)

午前6時半開始の早朝練習を約2時間で終えると、小走りでグラウンドから寮へ戻る。

明大商学部3年の箸本龍雅は、この日の午前中に小テスト付きの必修授業を控えていた。ラグビー部の拠点から最寄りの八幡山駅へ向かい、電車に揺られてキャンパスにたどり着く。OBの田中澄憲監督は言う。

「最近は大学の先生に明大出身でない方も増えているので」

要は、スポーツ推薦で入学した体育会系部員も一般学生同様に学習意欲を求められる。全国優勝13回のラグビー部も、普段は授業に影響の出ない早朝にトレーニングを実施。学生の履修状況も把握している。

この時期は早稲田大学との大一番が間近だったため、集中しやすい午後練習を多く組んだ。ただし試合3日前の11月28日は空中戦のラインアウトをチェックする予定で、そのプレーの軸となる箸本は授業を抜けられなかった。予定変更は自然な流れだ。

「(ボールを)もらってから動くのではなく、自分から接点のところにアタックしに行くのを意識しました。(試合を)やりながら、その方がいいかなという感じで。毎回、毎回、少しずつ前に出られたのでよかったです」

本人がこう安堵したのは12月1日。好ランの連続で早大を36―7で下して加盟する関東大学対抗戦Aの全勝優勝を決めた後、会場である東京の秩父宮ラグビー場で記者団に囲まれた。ウェイブのかかったミディアムヘアをたらし、切れ長の目を細め、春に成功させた約7キロの減量を笑って述懐していた。

「食べるのを我慢してるのは、ラーメンっす。むっちゃ好きなんですけど……。まったく食べないわけではなくて、試合後に食べたら、その分、動こうって」

長身選手の揃うロックのポジションにあっては大柄ではない身長188センチ、体重106キロのサイズながら、強さと機敏さと器用さに定評がある。

球をもらう際、もしくは球をもらってスペースへ駆け出す際の一歩が鋭く、目の前に並ぶ複数のタックラーを巻き込み前進できる。スピードに乗ったまま深い位置へパスを出せもするので、「ちらっと早めに外を見て、(目の前のスペースが)空いていないなと思ったら振る。行けそうじゃね? と思ったら自分で行く」。ランを軸に多彩なオプションを駆使し、守ってもその出足を鋭いタックルへ昇華する。

田中監督にこう言わしめる。

「成長にどん欲な選手」

高校日本代表や20歳以下日本代表で師事した里大輔氏のスピードトレーニングを自チームでも個人的に繰り返したり、攻撃中のポジショニングなど思いついた疑問点をすぐに首脳陣に確認したりしている。ハイパフォーマンスの背景に、向上心を据える。

箸本龍雅は、準決勝の東海大戦でも、密集でその力を発揮し優位に試合を進めた(写真:築田 純/アフロスポーツ)

生まれ育った福岡県宗像市では、地元の海で獲れたふぐに舌鼓を打った。玄海小時代に玄海ジュニアラグビークラブへ通うと決めたのは、サッカーがしたかったところ両親に「ラグビーをするならサッカーもしていい」と条件を出されたからだ。近所のサッカーのチームで友達をたくさん作った一方、ひとつ年上の友達の父がコーチをしていたラグビーのチームは「…むっちゃ、嫌いでした」とのことだ。苦笑して言った。

「きついし、身体を当てるのとかも嫌いだったので」

何かしら言い訳を作って練習を休んだ箸本少年だったが、ラグビーの仲間たちには快く受け入れられた。高学年に上がって大会が増えたら、「試合だけは出てくれ」の声に応じて「ボールもらったらトライみたいな感じ」。玄海中進学時にフェードアウトのタイミングを逃していたら、サッカーの県選抜のセレクションで「皆、僕と同じくらいの体格で器用で速い」と気づき、やがてラグビーに専念することに。東福岡高では藤田雄一郎監督に「もしかして俺、嫌われてるのかな」と思うくらい叱られたが、高校2年時に「今年はよくても悪くてもお前を試合に使い続ける」と言われて意気に感じた。

最終学年時は主将として全国タイトルを総なめ。明大では1年時から主力となり、「成長にどん欲」という資質を変えずに他大学の脅威であり続けた。堂々たる体格と温和な雰囲気で人を惹きつけるうち、地に足のついたスター候補となったのである。

「『あの人みたいなタックルをしたい』と思ってもできるものでもない。うまくいっていない時に『これができているか、できていないか』を立ち返る基本を、自分のなかに作っている。『あいつ、どこにでも出てくるな』と思われる選手になりたいです」

12月21日、またも秩父宮。大学選手権の準々決勝に先発する。関西大学Aリーグ・3位の関西学大に22―14と苦戦したが「明大がダントツで強いわけじゃないことを再確認できた。これから自分たちがどれくらい成長できるかがキーになる」。簡潔で前向きな言葉で総括する。

続く2020年1月2日には、秩父宮での準決勝で関東大学リーグ戦1部・1位の東海大に29―10で勝利。一時退場者が出るなど苦しい時間帯もあったが、背番号5のランナーは持ち味を発揮した。

「(相手のタックルを)食らっている時はこっちがいいセット(素早いポジショニング)ができていなくてオプションが限られてそこを狙われる…という感じ。でも、最後の方は1人ひとりがいいオプションになったことで(防御をかく乱させて)スペースが空いてきた」

かくして、新国立競技場での決勝戦へ進めることとなった。相手は早大。箸本は喜ぶ。

「めっちゃ嬉しいです。向こうも絶対に成長していると思うんで、そこに負けないよういい準備をする。新しいことはもうできないと思うので、これまでのやってきたことの精度を高めていきたいです」

未来も見据える。遡って2019年10月13日には、同級生で正司令塔の山沢京平とともに横浜国際総合競技場でワールドカップ日本大会の大一番を観戦。日本代表がスコットランド代表を28-21で下して初の8強入りを決めた瞬間、バックスタンドの「真ん中の前から2段目くらい」で興奮した。

公式入場者数は67666人。将来的にはよりボールをもらうフランカーやナンバーエイトでもプレーしたい箸本は、決意を新たにする。

「なんか、羨ましさもあって。日本の皆にあんなに応援してもらえることに対して。自分も、日本代表に入りたい。その思いが改めて強くなりました」

春先には、国内トップリーグの強豪クラブの練習に混ざっている。今季はそのトップリーグのレギュラーシーズンが1月から5月にあるため現役学生が単独で訪問できるかは未知数だが、トップリーグ開幕から約3週間後には国際リーグのスーパーラグビーがスタートする。

日本から挑むサンウルブズは選手の確保に難儀しており、箸本は高いレベルの環境で進化したいと思っている。この確かな2点がうまく重なればいいのだが。

現在はシーズン終盤の戦いへ集中する21歳。今後はどんなステージで「成長にどん欲」な資質を活かすのだろうか。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

  • 写真築田 純/アフロスポーツ

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