真冬の首都圏直下型地震「やるべき備え」 年末年始は厳重注意!

気温は低く、空気は乾燥。火災発生で1000ヵ所以上から火の手が上がる可能性も

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’11年3月11日、東日本大震災で起きたコスモ石油千葉製油所(千葉県市原市)の火災。巨大な火柱が上がった

下のマップを見てほしい。

’19年12月に入ってから、北関東で地震が相次いでいる。なかでも茨城県北部では震度1以上の地震が11回も観測されているのだ。ほかにも、栃木県北部、茨城県南部で震度3、4の揺れが連続で発生。1年前の同時期と比べると、回数、震度の差は歴然である。

関東大震災から97年。何やら不気味な空気を感じてしまうのは、本誌だけではないだろう。

東海大学教授で地震予知・火山津波研究部門長の長尾年恭氏はこう指摘する。

「茨城県南部は、元々『地震の巣』と言われていて、年に何度も地震が起きます。ただし、マグニチュード(M)5程度の地震が2日続けて発生していることには注目しないといけない。茨城県南部の地震に誘発されて、茨城県北部と栃木県北部でも地震が起きたとも思われます」

では、なぜ北関東でいまM5級の地震が続発しているのか。長尾氏が続ける。

「北関東のプレート間に溜まっている『歪み』が限界を迎えたことが原因でしょう。東日本大震災によって福島・岩手・宮城では、陸上の地盤が5m、海底では20mぐらい動きました。その影響で両脇が動き出すのは当然です。そこでできた歪みを戻そうとして、プレートの再配置が起こり、それが茨城県や栃木県での地震を引き起こしています。

とくに、12月4日以降も余震が続いている茨城県北部には注意が必要です。そこには福島県の浜通りの沖と同じ断層が存在しています。この断層が動き出すと、茨城県北部で震度5強ないしそれ以上の地震が起こる可能性があります」

はたして、一連の北関東の地震は「首都圏直下地震」の前触れなのだろうか。

「科学的にないと言い切ることは難しい。近い将来、この北関東の地震が、首都圏直下地震を誘発する可能性はあります。北関東に歪みが溜まっているのは確か。今後、東京で震度4〜5の地震が頻発するようになれば、首都圏直下地震が起こる確率はかなり高くなると考えるべきでしょう」(長尾氏)

海洋地震学の権威、東京大学名誉教授の笠原順三氏もこう懸念する。

「関東大震災の際は、発生の1年ぐらい前から、茨城県から浦賀水道(房総半島と三浦半島の間にある海峡)にかけて地震活動が活発になったことがあったんです。これをかつては『ドーナツパターン』と呼んでいました。将来に大きな地震が起こる周辺で、地震活動が活発になるという意味です。茨城県北部と南部、栃木県北部は単独ではそれぞれ地震が起きやすいのですが、同時にその3ヵ所が活発になるというのは珍しいので、首都圏に対して心配はあります。

太平洋プレートとフィリピン海プレートは東京湾北部から茨城県南部付近、深さ60〜80㎞の沈み込んだところでぶつかっているのですが、その境目がいま活発になっている。首都圏はその延長上です。いつ、というのは難しいですが、首都圏直下地震の可能性はかなり高まっていると考えたほうがいいでしょう」

2万人以上が亡くなる

政府の地震調査委員会が発表している「全国地震動予測地図」(2018年版)によれば、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率は、全国の都道府県庁所在地の中で千葉市がもっとも高く85%。次いで横浜市が82%となっている。東京・新宿区でも48%だ。

これは極めて高い数字であり、その確率がいま上がっていることは間違いないだろう。立命館大学の歴史都市防災研究所教授の高橋学氏が言う。

「10月12日、台風19号の被害に隠れてしまいましたが、実は千葉県南東沖でM5.7の大きな地震が起きています。この地震をきっかけにその後、フィリピン海プレートと北米プレートの沈み込んだ境界部分で小規模な地震が次々と発生しているのです。さらに広範囲で北米プレートが跳ね上がれば、巨大地震につながる。’23年の関東大震災もこのタイプだと言われています。もし東京湾やその入り口付近が震源になれば首都は津波に襲われる。東京五輪の会場となる埋め立て地をはじめ、大変な被害をもたらすでしょう」

この冬に地震が起きてもなんの不思議もない。政府の中央防災会議は、M7程度の首都圏直下地震が風の強い冬の夕方6時に発生することが、最悪のケースだと発表している。その場合、死者は2万3000人、建物全壊・焼失が約61万棟、経済被害が95兆3000億円に上るという。他の季節に比べて、なぜ冬の夕方の地震は被害が大きくなるのか。その理由は火災だ。死者のうち約7割が火災によって命を奪われると予想されている。

「備え・防災アドバイザー」の高荷智也氏はこう解説する。

「冬の夕方は在宅率も高く、各家庭で暖房器具を使っているうえ、夕食の支度のため台所でコンロを使っており、火災が起きやすい。しかも冬場の空気は乾燥しているため、火災の規模は大きくなる。そのタイミングでの首都圏直下地震による火災は、同時に1000ヵ所以上から火の手が上がると想定されています。

さらに『火災旋風』が発生する恐れがあります。これは炎が大きくなりすぎて、炎同士が合体し竜巻状になって移動を始めるという手のつけられない大規模火災です。木造住宅が密集する都内の地域では、これが同時多発的に発生してもおかしくないと言われています」

真冬の地震から生き延びるために、個人が備えることはできるのだろうか。

「町全体が燃えてしまい、逃げ場を失ってしまうのが、『地震火災』の恐ろしさです。どこで起きやすいのか、どこへ逃げるべきなのか、その情報は東京都など各自治体が公開しています。まずはそれを把握しておくこと。そのうえで、地震発生後の生活を考えて、十分な備蓄品を準備しておく。首都圏で大地震が発生すれば被災者の数は甚大で、支援物資がなかなか行き渡らない可能性が高い。最低でも1週間分は必要でしょう」(高荷氏)

火災とともに真冬の地震で注意すべきなのは、避難時、避難後の寒さである。冬は気温も低く、夜も長い。電気・ガスが使用できなければ、首都圏であっても低体温症のリスクは急激に高まる。

防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は「寒さ対策」についてこう語る。

「一つ目は、灯油ストーブ。ライフラインが止まっても使用できる暖房器具を用意しておくことが大切なんです。二つ目は、カイロを備蓄品に入れること。首の両脇、股の下、脇の下にタオルなどで巻いたカイロを巻き付けると、温まった血液が循環することで、身体中が温かくなります。三つ目は、カセットコンロ。炎だけで温まるのではなく、水を入れたやかんを置いて暖をとってください。温かい食べ物を作ることもできるので必須です。四つ目は、エマージェンシーブランケット。衣服の上から羽織ると、体温を外に逃がさないようにしてくれるので役立ちます」

この年末年始にも首都圏で大地震は起こりうる。これを肝に銘じてほしい――。

’19年6月24日、千葉・東京・神奈川で震度4の地震が発生し、首都圏の鉄道はダイヤが大幅に乱れた

『FRIDAY』2020年1月10・17日号より

  • 写真朝日新聞社

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