いまや「流行発信源」 時代遅れといわれた池袋が転生した背景
2014年ショックで開発に奮起。アニメ・ゲーム・コスプレの聖地の最新事情
「池袋が大規模な再開発を進めるきっかけとなったのは、『2014年ショック』でした。同年、日本創成会議によって、豊島区は『2040年に消滅の可能性がある都市』と認定されてしまったのです。東京23区の中では唯一の認定です。私自身、池袋の近くに住んで毎日のようにこの街を見ていたので、そんなはずはない、と驚きました。しかしこの調査結果を契機に行政も地元も奮起したのは確かです。区役所移転や劇場、公園の開設など思い切った開発が始まりました」
こう話すのは、九州新幹線や豪華列車「ななつ星」のデザインを手がけたことで知られる水戸岡鋭治氏である。
’19年11月、従来の中心部から外れた位置にある旧豊島公会堂跡に官民複合施設「ハレザ池袋」がプレオープンした。この施設は「東アジア文化都市」事業に名乗りを挙げた豊島区が主導し、文化交流のランドマークとして建設したものだ。
’20年7月にグランドオープンする3つのビルの中には8つの劇場が入るほか、「ニコニコ動画」を運営するドワンゴのイベントスペース「ハレスタ」も設置され、アニメやゲームのイベントなどが頻繁に開催される。また、’20年3月には「マンガの聖地・豊島区」をうたうミュージアムが開館を予定しており、その目玉として、手塚治虫らが住んだ「トキワ荘復元プロジェクト」が進んでいる。
『都心集中の真実』などの著作がある都市社会研究者・三浦展(あつし)氏はこう語る。
「東京の文化は、皇居を中心にして山手線の〝南側〟と〝北側〟で、それぞれ対応しています。たとえば銀座、有楽町のおしゃれな文化は渋谷に拡大したし、かつての上野、浅草の大衆娯楽は池袋に拡大していきました。それは今でも影響しており、上野に近い秋葉原のオタク文化は、池袋に広がりやすかった。池袋はまた埼玉の玄関口としての機能もあります。東京の際(きわ)として、より大衆文化的であって、渋谷の山の手文化とは違い、池袋はサブカルと親和性が高いのです」
コスプレーヤーの聖地に
池袋再開発は、建物だけではない。駅周辺では4つの公園が整備され、前出・水戸岡氏がデザインを担当した真っ赤な電気バス『イケバス』が、これらの公園や主要スポットを結んで運行。子どもや女性が安心して地域で楽しめるような街づくりが進んでいる。今ではイベントが開催される週末になると、アニメやゲームから抜け出てきたようなコスプレーヤーで街が埋め尽くされるようになった。
「以前はアキバがコスプレの聖地だったけど、最近は池袋によく来ます! コスプレできる機会が増えてすごく嬉しい」
「コスプレの衣装は100均で揃えたパーツで手作り。ペラペラなのですごく寒いけど、それでも必ず来ます。だって、この日のために生きてるようなものだし(笑)」
かつて「時代遅れ」と思われていた街は、いまや流行を作り出す場所へと変貌したのだ。
『FRIDAY』2020年1月10・17日号より
- 撮影:足立百合(ハレザ、イケバス)