ピエール瀧もハマった「コカイン」を吸い続けた人の末路 | FRIDAYデジタル

ピエール瀧もハマった「コカイン」を吸い続けた人の末路

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昨年3月に逮捕されたピエール瀧。ここから薬物逮捕ラッシュが始まった…
昨年3月に逮捕されたピエール瀧。ここから薬物逮捕ラッシュが始まった…

危険薬物を使用した人の「本当」の姿

「本当に限られた時間で、1人でストレスなどの解消をしなくてはいけず、ほかのものを見つける時間がない中、違法薬物に簡単に手を出してしまったのは非常に甘かったと思います」

2019年3月、コカインを使用した疑いで関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕されたミュージシャン・俳優のピエール瀧(当時51)は、公判でコカインを使用した理由を問われ、こう答えた。

瀧氏の逮捕後、「KAT-TUN」の元メンバー田口淳之介、プロスノーボード選手の國母和宏が大麻取締法違反の容疑で、また女優の沢尻エリカが合成麻薬MDMAなどの所持の容疑で、次々に逮捕された。

有名人の薬物逮捕ラッシュとなった2019年。「コカイン」「大麻」「MDMA」など危険薬物に手を出すと人はどうなってしまうのか。テレビでは報道されない薬物中毒者の「本当」の姿を読み解く。第1回目は「コカイン」。その効果と危険性について迫る。

マイルドで短時間で醒めるため、バレにくい

「鏡の上に取り出したコカインを、テレホンカードなどでしっかりと粉末にしつつ、細い筋(ライン)を作る。それをストロー状に丸めた紙幣で鼻から一気に吸い込む。いわゆる“スニッフィング”というやつですね。

すると、徐々になんとも言えない軽やかな多幸感に包まれてくる。いきなりガーンと来て倒錯してしまう覚醒剤に比べると、コカインの効き目というか味わいは非常にマイルド。お酒で言うとシャンパンによく例えられるのもよく分かる。ただですよ。覚醒剤の刺激に慣れている人にとっては、その軽やかさが物足りなく感じられる。ドラッグカルチャーを体験取材していた当時、覚醒剤に慣れていた僕にとって、コカインはソフトすぎましたね」

そう語るのは、90年代のドラッグカルチャーを取材し、自身のドラッグ体験をノンフィクション小説『SPEED スピード』(96年、飛鳥新社)にまとめた作家の石丸元章氏だ。石丸氏が言うコカイン服用時の“軽やかな多幸感”は、どんなメカニズムで引き起こされるのだろうか。日本薬科大学の船山信次教授が語る。

「コカインは覚醒剤同様アッパー系のドラッグです。両者の脳内における作用機序には複雑なところがありますが、端折って言えば、覚醒剤が、快楽の伝達物質ともいわれるドーパミンの放出をうながす作用が強いのに対して、コカインの方は主として放出されたドーパミンの再吸収を阻害する作用が強いために、精神の高揚を引き起こすとされます。また、体内に摂取したコカインはすみやかに分解されるために、その作用のピークは15〜30分ほどと非常に短いのも特徴です」

覚醒剤と比較すると効き目がマイルドで、かつ短時間で醒める。この特性ゆえ、社会生活と両立しやすいコカインは、70年代以降アメリカのセレブを中心に愛されてきた。

「覚醒剤の場合、注射によって体内に入れるケースが多いのですが、コカインの場合は注射痕が残らない“スニッフィング”が主流。それゆえ、バレにくいという利点もあります。ピエール瀧さんは、音楽だけではなく俳優業もこなし、さらに家族も持っていましたよね。覚醒剤では、こうはいかなかったでしょう。ただ、僕がドラッグシーンを取材していた20年ほど前はコカインの方が圧倒的に高かったので、貧乏人にはなかなか手が出せなかった」(前出・石丸氏)

石丸氏によると、1g当たりのコカインの国内の末端価格は、20年前で6〜7万円程度。現在は4〜5万円前後が相場だと言うが、もっと安く売られてるという報道もある。コカインの原料であるコカは南米でしか採れないので、コカインを日本に持ち込もうとすると、自然と南米経由のルートになる。太平洋を隔てた日本への密輸は容易ではないのだ。

しかし、2019年2月の東京税関による報道発表によると、2018年に東京税関が押収したコカインの摘発件数は、前年の約3倍に増加したという。日本国内に持ち込まれるコカインの量が増えたために、価格が落ち着いてきたということだろうか……。

日本でコカインを使用するのは特殊な人物

粉末のコカイン。写真は2016年のリオ五輪時に出回ったもの/写真 アフロ
粉末のコカイン。写真は2016年のリオ五輪時に出回ったもの/写真 アフロ

「覚せい剤に関しては、北朝鮮や中国で作って、コリア系/チャイナ系のヤクザが受け取り手になり末端の売人が捌くという太いルートが確立されています。2017年には、茨城沖で瀬取りによって持ち込まれた約480kgもの覚醒剤が押収され、話題になりましたよね。

一方、コカインは北朝鮮でも中国でも作れない。どのぐらいの量のコカインが日本に運び込まれているのか、はっきりしませんが、何百kgという単位のコカインは上がったという話は聞きません。やはり、いまだに大きなルートがないのだと考えられます。僕がドラッグシーンを取材していた当時は、懇意にしている末端の売人を通して購入するというのが一般的で、その辺りの事情は今も変わってないはずです」(前出・石丸氏)

さらに、コカインに比べて、覚醒剤の方が圧倒的に流通している日本においては、コカインの需要そのものがそれほど多くないという。あえて、効き目が薄く、そして高価なコカインを選ぶ物好きは少ないというところだろう。そもそも、コカインがそれほどポピュラーではない日本においては、ドラッグ愛用者でさえ、本物のコカインを見分けることは容易ではない。

吸いすぎると鼻の穴が…

「2010〜2011年頃、『六本木で、半グレ集団が自ら供給したコカインを1g当たり1万5千円ほどの価格で売っている』という噂が出回ったことがありました。コカインをキメた若者たちが一晩中踊っているらしいという話だったのですが、取材してみると、全くのまがい物でした。コカインとは呼べない純度の低いものに覚醒剤を混ぜて、それをコカインと称して売っていたんです。コカインに入ってるはずのない透明な結晶が入っていたなんて話も聞きました」(前出・石丸氏)

自分が服用しているドラッグが、一体何なのか分からないというのは危険極まりないが、本物のコカインも決して安全ではない。前出の船山教授によると、その危険性はコカイン最大の特徴である効き目の短さに由来するという。

「一度コカインを吸引してしまうと、脳はその快感が忘れられなくなる。コカインは精神的依存性が、覚醒剤やモルヒネ同様に高いので、効果が切れたらすぐに欲しくなってしまう。さらに、耐性(与えられた用量での反復投与に起因する、薬物効果の減少)も覚醒剤並みなので、一度の摂取量も徐々に増えていってしまうんです。

さらに、長期間に渡って鼻からコカインの吸引したことによって、鼻の穴の間にある壁が無くなり、鼻の穴が一つになってしまった、なんて恐ろしい事例もあります。強力な血管収縮作用に伴う局所の血流障害で、鼻腔粘膜や周囲組織が壊死してしまったんですね」(前出・船山氏)

コカインの危険性はこれだけではない。コカインの吸引を数ヵ月続けると生じる幻覚妄想状態であるコカイン精神病と呼ばれる後遺症も報告されている。コカインが切れると、皮膚の下で、虫がはい回るような感覚に襲われるのだという。

“手軽”なイメージに釣られて、ストレス解消のつもりで手を出したら最後。人生が破綻してしまう可能性が大いにある、危険な薬物なのだ。

  • 取材・文今川芳郎

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