青学大・原晋監督が語る“テレビ出演批判への反論と国政への思い”
令和最初の箱根駅伝で、2年ぶり5回目の総合優勝を飾った青山学院大学の原晋監督(52)。復路では一度も首位を明け渡さない独走ぶりだったが、勝利を掴むまでの道のりは平たんではなかった。’16年には部員が知人女性に暴力をふるっていたことが発覚。’19年には、飲酒などで4年生4人が退部したのだ。それでもメディアに出続けた原監督には、批判が集中する。記者が直撃すると、原監督は当時の心境や噂される国政進出への思いを語った。
――箱根駅伝優勝おめでとうございます。
「はい。ありがとうございます」
――昨年は5連覇を逃し、4年生が飲酒などで退部するという事件が起きました。メディアにコメンテーターとして出続ける監督に、批判的な言葉も少なくなかったと思います。今年リベンジされての心境は?
「メディアに出演することは、悪いことではないと思っているんです。私たちは陸上競技というステージで戦っていますが、いくら勝利しても、そこから発展しなければ面白くないですよね。勝っても報われない世界だったら面白くない。勝利したチームが、その業界をもっと世間に普及させなければなりません。誰になんと言われようと、テレビに出るのは悪いことではないと思っています」
――ご自分が陸上の普及と発展のために、広告塔としてやっているんですか。
「そうです。それが大儀ですね。ただ、私が出たいと言っても、出られることではないですからね。オファーがあってのことなので、本当にありがたいことです。こんな言い方をするのはよくないかもしれないけれど、スポーツしかできない人間というのは魅力がない。たまたま駅伝という分野で選手たちは日本一になりましたが、人、カネ、情報を操ってもっと力をつけていくべきです」
――具体的には?
「陸上の監督だろうが、相撲の親方だろうが、会社の経営者だろうが、みな同じです。その分野のことしかできないようでは、器が狭くなります。得意な分野でしか活躍できない選手はイカンと思います。ある分野の頂点を極めた人は、どの分野でも成功する力があると思います。指導者は、その力を育てなくてはならない。これからは、いろんな分野の人たちが関わり合うことで、日本という国全体がより良い豊かな文化的先進国になっていくべきだと思います」
――視野が狭いといけないということですね。
「支配的なお上が、右向けと言えばみんなが右を向く。それが変でもルールなんだからという、戦後日本の古い価値観の時代が長く続きました。そうではなくて、価値観は時代とともに変わっていくものです。これからは末端の私のような人間でも、時代の風を吹かすことができる。新しい文化を作って構築する。そういう意識で、スポーツ人も文化人も経済人も政治家も関わっていくことが文化的先進国になるための手段だと思いますね」
――ところで、監督には、国政への出馬の噂があります。陸上界の改革は、国会議員として取り組むということでしょうか。
「ハハハ。こればかりはね、私が総理大臣になりたいと言っても、なれないでしょう? 私がやりたいと言っても、文部科学省の大臣はやれないでしょう? 求められてから考えるべきであって、求められてないのに『やりたいです!』なんて言えるわけがないですよ」
――打診されたことはあるんですか。
「ないです。ないです」
――最後にタイムを大幅に縮めたと言われる、ナイキの厚底シューズについてはどう思いますか。
「ハハハ。もうここらへんにしましょうか」
逆境を乗り越え、青学を5回目の優勝に導いた原監督。自信に満ちた様子で、終始笑みを絶やさなかった。
- 撮影:足立百合