23季ぶりの早明対決 新生国立競技場で大学ラグビー王者が決定

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連覇に挑む明治大のバックス陣

明大と早大のラグビー部は1月9日、それぞれ午前10時半、午後3時から大学選手権決勝前最後の本格的な練習を実施した。それぞれが「箸本龍雅(明大のロック)いる!」「丸尾(崇真・早大のナンバーエイト)来るよ!」と、対戦校の突破役を叫んで防御の連携を確認する。

前年度王者で14度目の日本一を狙う明大の八幡山グラウンドには、これまでと同様「真価」というスローガンの書かれたフラッグが掲げられる。昨季4強で過去最多となる15度の優勝回数を誇る早大の上井草グラウンド入口では、「緊張」という書が雨などで濡れないようコーティングされていた。

卒業生を中心に熱烈に支持される両校は1月11日、東京の国立競技場でぶつかる。約6万人収容のこの舞台でラグビーの試合が行われるのは改築後初。さらに、決勝での早明対決は23大会ぶりである。入場券の価値は高まるばかりだ。

8日には明大の授業のなかった出場予定選手、早大の3選手が会場を下見した。ピッチに入らぬことを条件に許された、グラウンドレベルでの視察機会。こっそりと芝を触った選手の1人は「硬くて、走りやすそう」と気持ちを高ぶらせた。

「ワールドカップ日本大会の試合があった時に横浜国際総合競技場の観客席に行きましたが、あのくらいの規模のグラウンドに自分が立つことにはまだ実感がわかないというか…。わくわくもしていますし、不安ではないけど、未知、という感じではあります」

こう語るのは、早大4年の岸岡智樹。正確なパスとキックでスペースをえぐる理論派のスタンドオフは、50メートル走6秒台前半と俊足でもある。まもなくスーパーラグビーへ挑むスクラムハーフの斎藤直人主将とともに、高速展開を実現したい。

明治大のキック戦略の要、スタンドオフの山沢京平

対する明大のスタンドオフは3年の山沢京平。突破する際のボディバランス、奇想天外なプレー選択で相手に脅威を与える。こちらはくぐもった声で、確かな決意を明かす。

「結構、自分は自分のことやチームをどう動かすかを考えるので、あがったりはしないです。秩父宮の満員(約2万人)でしか(試合を)経験したことがないのでどうなるかわからないですけど、そういうこと(特別な舞台であること)は気にしないようにしていきたいです。(互いの声が聞こえづらいなかでも)ジェスチャーなどで意思疎通していきたいです」

関東大学対抗戦Aに加盟する両校は12月1日、東京・秩父宮ラグビー場で全勝対決をしている。この時は明大が36―7で勝利。タックラーをわずかにかわすフットワーク、人と人がぶつかる瞬間のインパクト、倒れた後の起き上がりの速さなどで際立った結果、ゲインライン(攻防の境界線)で前に出続けられた。

しかし今回、このゲインラインでの相関関係が大きく変わりうる。

ケガから復帰し、2戦目で大一番に臨む早稲田大インサイドセンターの中野将伍

早大は前戦で故障者だった選手が相次ぎカムバック。特に身長186センチ、体重98キロという4年生インサイドセンターの中野将伍は、1月2日の準決勝(秩父宮)で復帰。昨年9月に右ふくらはぎの肉離れで戦線を離脱師して以来の実戦となったが、持ち前の突破力を発揮し、昨季準優勝の天理大に52―14で大勝した。

学生生活最後の大一番へも、「色んな所で相手に的を絞られない(パスの)もらい方をすればゲインラインは切れる」。大外に揃うフィニッシャー勢では、2年生フルバックの河瀬諒介が今季好調。中野はこうも続けた。

「敵が3、4人と寄ってきたら、オフロードパスも狙っていきたい。僕が仕かけるところと周りを活かすところをいい感じにやって(配分して)いきます」

将来の日本代表入りも期待される大駒の復帰は、明大の姿勢も変える。対面となる4年生インサイドセンターの射場大輔は、「タックルなし」という約束だったはずの防御練習で得意のハードタックルを放っていた。

その様子に「…気合い、入ってるな」と目を細める仲間が、3年生アウトサイドセンターの森勇登。身長174センチ、体重83キロと小柄だが、仕事量や視野の広さで周囲の良さを引き出す。特定の選手をマークするわけではないとしながら、相手のジョーカーへの警戒心をあらわにした。

「(中野は)最初のアタックの起点となる選手。そこを止められれば、相手の波に乗らないようにできると思います。(キーワードは)我慢です」

もしゲインラインの攻防が互角となれば、キックの蹴り合いやセットプレー(攻防の起点)が勝負を分けうる。

陸上トラックのある国立競技場は、インゴールの縦幅(ゴールラインとデッドボールラインの間)が約6メートル。国際統括団体の最低基準を何とか満たすものの、明らかに狭い。パスを前に投げられないラグビーではキックの活用が不可欠だ。しかし、蹴った球がデッドボールラインを越えれば蹴った地点での相手ボールスクラムからのリスタートとなる。

早稲田の上井草グラウンドに掲げられた「緊張」の文字

早大の岸岡が展望する。

「インゴールにハイパント(高い弾道のキック)を上げる、ゴロを転がすという選択肢は難しくなるのかなと。逆に、(相手が後方にキックを蹴りづらいため)自陣ゴール前になるほど選択肢が減ってディフェンスがしやすい。(相手の)ロングキックは一回、見送って、インゴール(の向こう)へ転がるのを待ってみてもいいのかなと思いました」

一方、明大の山沢はキックでの陣地獲得合戦について「蹴って、ディフェンスで我慢して、相手の反則を誘うまでが自陣からの脱出。蹴り合いには負けないようにしたいです。実際はどうかわからないですが、全体的にグラウンドが狭いような感じを受けた。アップの時に(状況を)確認します」と語る。2年生フルバックの雲山弘貴と長距離キックを放つ構えだ。

さらに早大の陣地の獲り方について、「相手はハイパントでゲームを作る感じ」と明大の森。蹴り合うなかで球筋や弾道を変えられても対応できるよう、各人の立ち位置を微修正してきた。

「ハイパントの捕球をミスってしまうと、どんどん自陣に食い込まれてくる。ここを、しっかりしようと。ハイパントをきちんと処理して、ロングキックで陣地を獲っていきたいです」

攻防の起点となるセットプレーでは、ラインアウト(タッチライン際での空中戦)が見どころとなる。

明大では、3年生ロックで身長190センチの片倉康瑛が要所で相手ボールをスティールできる。当の本人はこうだ。

「(早大はラインアウトで)全員が飛べて、こっちが見ていないところで(ボールを)捕る。隙がない感じです。こっちも隙なく集中することが必要です。この1か月間、リフト(ジャンプする選手を支える選手の動き)にも1センチ、1ミリにこだわってきた。これをしっかり(試合で)出せればプレッシャーがかけられます」

かたや早大では、4年生ロックの三浦駿平が「片倉を見て、片倉のいないところを攻める。簡単に言うと(常に動き方や飛び方を)2パターン、用意しておいて、そのうちで片倉に競られないところで(自軍ボールを)獲得したい」と話す。同じく4年生でフッカーの森島大智は、ボールの投入役としてこう言葉を選ぶ。

「相手もゴール前など(の早大ボールラインアウト)で誰が捕るのかを分析していると思う。詳しくは言えないですけど、(早大は)自分たちのサイン(捕球位置などを伝える合図)を変えたり、相手選手の『こいつは避けよう』を意識したりして練習してきました」

両軍とも繊細な準備を施すなか、リベンジを目論む岸岡はこうも語る。

「早明戦(12月)は細部へのこだわりで負けたと反省して、自分たちのやるべきクオリティのスタンダードを高く求めようと話してきました。(相手に)当たる時の姿勢、フォロースルー(パスを投げる方向へ腕を伸ばすこと)、ハンズアップ(手を前に掲げてパスを待つ動作)、声を出す…。誰にでもできる当たり前のことをやり続けるチームが(勝つ)」

2連覇が期待される明大にあっても、フッカーの武井日向主将が気を引き締める。

「早大さんは前に対戦した時より成長していると感じる。怪我人も復帰して、アタックには自信を持っていると思います。それに対して、ディフェンスから脅威を与えられるかどうかがキーになります」

両チームとも、言うは易く行うは難しの「当たり前のことをやり続ける」を実現したい。

  • 取材・文・撮影向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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