英シンガーのサム・スミス「2度目のカミングアウト」で殻破る
素の自分を見せつつある氷川きよしが、多くの反響を呼んでいる。
同様に、自分が着たかった服を身に着け、メイクアップを楽しむことにしたアーティストがいる。
ロンドン在住のシンガーソングライター、サム・スミスだ。
日本では『ステイ・ウィズ・ミー~そばにいてほしい』や『Palace』などで知られるサムは、その美声と切なすぎる“片思いソング”で魅了する27歳。
デビューした2014年にゲイであることを公表しており、ほぼ実体験を書いているという“片思いソング”のお相手は男性である。
そんなサムは、昨年1年間でガラリと変化を遂げた。とくにインスタグラムの投稿が顕著だ。
まず、リップなりアイブロウなり、なにかしらメイクアップしている。太いアイラインを引くことも増えた。両耳に揺れるタイプのピアスをつけることも多く、アクセサリーも男性的ではなくなった。そして、肌を大胆に露出することが増えた。仕草やポーズはドラァグクイーンのようだ。
かつては
「あいつはゲイだと陰口を叩かれるより、デブと呼ばれるほうがつらい」
と悩み、20キロもの減量を成功させたこともあるほどなのに、インスタグラムでは再びぽっちゃりしてきたボディを披露しつつ、
「休日の半裸ってホント最高。これまで太陽から隠れるように生きてきたけど、去年はたっぷり日の光に肌をさらせたと思う」
と新年早々コメントしたのも、大いに話題になった。
実生活では、10歳のころにゲイであることを周囲に告白。デビュー前はドラァグクイーンさながらのファッションを好んで着ていたそうで、現在もシューズクローゼットにはハイヒールばかりがずらりと並んでいるという。
デビュー当時は「先入観を持たれないように」という本人の意向により、ゲイであることをあえて公表しなかったが、カミングアウト後もお気に入りだという女性的かつ派手なファッションは封印していた。
しかし、この数年でLGBTQ+(性的マイノリティ)への理解はかなり深まった。
加えて、本人のゲイアイコンとしての自覚や使命感も働いたのだろう。
昨年3月には、女性ホルモンの分泌が多く、男性でありながら胸がふくよかだったことでイジメを受け、わずか12歳で胸部の脂肪吸引手術を受けたことを告白。
と同時に、
「自分は男性でも女性でもなく、“ノンバイナリー・ジェンダー”です」
と、一歩踏み込んで自身のジェンダーについても言及している。
“ノンバイナリー・ジェンダー”とは、男女のどちらでもない、あるいはどちらでもあるという、3つ目の性のこと。出生時の性と心の性が異なる“トランス・ジェンダー”とは似ているようで異なる。
続いて同年9月には、自身の代名詞を「He(彼)」や「She(彼女)」ではなく、「They/Them」とすることも発表。
翌月に、ゲイ雑誌『アティテュード』の授賞式で、“パーソン・オブ・ザ・イヤー”を受賞。
その受賞スピーチで
「2019年は、2度目のカミングアウトをしたような1年でした」
と語っている。
年末には、カリフォルニア州のラジオ局 KIIS FMが主催するコンサートイベントに出演し、パステルピンクの透けブラウスとワイドパンツという、ノンバイナリーなファッションでステージに立ち、活き活きとしたパフォーマンスを見せてくれた。
本来の自分を偽らずに見せてくれるサムは幸せそうでとても魅力的。
次はどんな一面を見せてくれるのか、楽しみだ。
▲太っている自分を嫌悪していたサムだが、「どんな身体も美しい」の精神でコンプレックスを克服。
▲アイメイクがかわいい。
- 文:原西香(はら あきか)
(はら あきか)海外セレブ情報誌を10年ほど編集・執筆。休刊後、フリーランスライターとして、セレブまわりなどを執筆中