大坂なおみ 不振を克服させた凄腕コーチ“データ駆使の高度戦術”
大坂が今年の初戦で勝利を飾った。復活の裏には昨年2月に契約した新コーチの存在が
「カモーン!」
勝利の雄叫びがコートに響く。
世界ランキング4位の大坂なおみ(22)が、オリンピックイヤーの初戦となるブリスベン国際の女子シングルス1回戦で苦しみながらも勝利を呼び込んだ。
大坂はランク23位のマリア・サカリ(ギリシャ)を相手に第1セットを楽々と奪うが、続く第2セットをタイブレークの末に落としてしまう。
「これまでの大坂ならば、一度相手に試合の流れを握られてしまうと、そのまま自分のペースを取り戻せずに敗れてしまうことが多かった。しかし、今年の大坂は違う。第3セットでは中盤まで一進一退のまま進んだものの、第4ゲームから立て直して一気に試合を決めました。
昨季の終わりに右肩を故障し、コンディションも心配されていましたが、強烈なサービスエースを16本も放っていましたから、もう問題ないのでしょう」(日本テニス協会関係者)
この試合後、彼女は報道陣に向けて力強く語った。
「今年はすべての試合で勝ちたい」
昨年2月にサーシャ・バイン氏とのコーチ契約を終了した後は、成績が振るわない時期が続いた。その大坂が今なぜ自信を持ってそう宣言できるのか。それは昨年12月から指導を受けている新コーチ、ウィム・フィセッテ氏の存在が大きいだろう。フィセッテ氏はこれまで4人の女子選手を4大大会決勝まで導いた凄腕指導者であり、卓越したデータ分析力で知られる。
テニスライターの秋山英宏氏が語る。
「大坂選手がトップの中のトップに立つためには、戦術を上手く駆使することがまだ足りていなかったわけです。その部分を補うために新しいコーチと契約したのだと思います。これまでのコーチは、どちらかといえば面倒見のいいお兄さんという存在でした。一方、フィセッテ氏はデータを駆使する時代の最前線にいるコーチです。経験を積み、精神的にも成長した今の大坂選手なら、新コーチの要求を受け入れられるだけの素地ができていると思います。二人で戦術的な着地点を見つけていくことで、彼女のテニスはさらに進歩していくことでしょう」
すでに技術面や身体能力は世界トップレベルの大坂に、今季は強力なブレーンが加わったのだ。
米国『テニスマガジン』記者のスティーブ・ティグナー氏も太鼓判を押す。
「コーチを替えることでナオミは正しい方向を向くことができた。フィセッテ氏とナオミの能力が重なり合えば、グランドスラムやオリンピックで優勝しないほうが難しいでしょう(笑)。まだ22歳で多くの可能性を持っている。’20年は彼女にとって大成功の年になりそうですね」
ブリスベン国際では4強まで進み準決勝でK.クリスコバに1-2で負けたものの、1月下旬の全豪オープンを皮切りに次々と4大大会が開催される。そして、満を持しての東京五輪。今年はナオミスマイルを何度見られるだろうか。

『FRIDAY』2020年1月24日号より
写真:Getty Images(1枚目写真)、AFLO(2枚目)