田村正和以来、50代で月9「絶対零度」を背負う沢村一樹の覚悟 | FRIDAYデジタル

田村正和以来、50代で月9「絶対零度」を背負う沢村一樹の覚悟

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好発進を遂げた月9ドラマ『絶対零度』。今シーズンも沢村の活躍が目立っている
好発進を遂げた月9ドラマ『絶対零度』。今シーズンも沢村の活躍が目立っている

‘18年夏期の月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』(フジテレビ系)の主演が、俳優・沢村一樹であることが明らかになった時の衝撃は今も忘れられない。

「『絶対零度』は、‘10年春期に女優・上戸彩主演で産声をあげ、スペシャルを挟んで‘11年夏期にSeason2が制作され、いずれも高視聴率を記録。Season3が制作されるとしても上戸の主演は外せない。『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』で味をしめたフジテレビが出産・子育中の上戸彩の復帰作として勝負をかけるものとばかり思っていたら、上戸は特別出演。朝ドラ『ひよっこ』(NHK)で好感度がグンと上がっていたとはいえ、まさか月9の主役に沢村が抜擢されるとは思いもしませんでした。この時、沢村は50歳。50代の”月9”の主役は、あの田村正和主演で‘98年秋期に放送された『じんべえ』以来。言ってみれば沢村は、伝説の俳優でもある”正和様”と肩を並べた訳です」(ワイドショー関係者)

当時、視聴率低迷に喘ぎ、キャスティングにも苦労していたというフジテレビ。前作『コンフィデンスマンJP』では、映画化も視野に入れ、長澤まさみをはじめとする主要キャストを口説き落としていたと言われる。

しかし、ピンチはチャンス。結果、『絶対零度』から『SUITS/スーツ』『トレース〜科捜研の男〜』『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』『監察医 朝顔』と、月9は5作連続して全話平均視聴率二桁台を記録。昨年6月に社長に就任した遠藤龍之介氏をして、「”月9”の復活こそ、フジテレビ復活の第一歩」と言わしめるに至った。

「このドラマはタイトルこそ『絶対零度』ですが、上戸主演の‘10年『未解決事件特命捜査』、‘11年『特殊犯罪潜入捜査』時代とは一転。沢村演じる井沢範人は、未来の犯罪を予測して捜査する”未然犯罪捜査班(通称ミハン)”のリーダーです。しかも、飄々とした顔の裏にダークサイドの顔も持つ、二つの顔を持つ男。ダークサイドに落ちた時の深い悲しみをたたえる沢村の表情がゾクゾクするほど魅力的。沢村にとっても、代表作になりうるドラマですね」(制作会社プロデューサー)

沢村演じる井沢は、元公安のエリート刑事。しかし”ミハン”のテストケースの冤罪事件が原因で、妻と娘を惨殺される過去を持つ。そのため普段は物腰柔らかく飄々としていても、事が起こると刑事として一線を越える凶暴性を孕んでいるため、警察上層部からは危険視されている。そんな井沢の苦悩に満ちた場面が第一話から登場する。

「大切な女性を失い復讐を企てる2人の男に、『別れの言葉すら言えない。その地獄のような苦しみは、味わった者にしかわからない』と静かに口を開くと、自身も妻子を殺されたと告白。そして『殺そうとした。でも殺せなかった。後悔している。殺そうとしたこと、そして殺せなかったこと』と苦しい胸の内を明かす。やがて『自分が正しいと思った道を、強い意志を持って選び取るしかない』と告げる場面こそ、井沢だけでなく演じる沢村の覚悟のようなものが感じられます」(放送作家)

実は沢村にも、幼い日々に背負った葛藤がある。

「沢村は12歳の時に父が家を出て、やがて離婚。しかも多額の借金を背負ったシングルマザーの母は、2人の子供を育てるために昼夜の仕事をかけ持ちするなど、家族は貧乏のどん底で辛酸を舐める。沢村が高3の時に、家族を捨てた父がフラッと帰宅。進路について話が及び『大学に行くのか?金がかかるだろう』と他人事のように言われ、沢村は怒りに震え、『お前にそんなことは言われたくない』と胸ぐらを掴んだとのことです。その父もまもなく他界。怒りの解けなかった沢村は葬儀にも参列しなかったが、父に対して複雑な葛藤を持ち続けてきたという。そんな沢村も結婚して子を持つ身になり、『父親だけが悪かったわけではなかった』と父を許せる気持ちになったと明かしていました」(前出・放送作家)

井沢が抱える”狂気”を演じる沢村のリアリティの秘密は、若き日の”父との葛藤”に隠されているのかもしれない。

沢村はあるドラマの取材の中で、井沢を演じるにあたって「今回は、特に”許す”という行為の尊さ感じながら演じたい」とした上で「井沢はまだ許せていない。いろんなことを」「今、時代がすべてを許せない世界になりつつありますが、個人的には”許す”ということが一番尊いと思っている」と思いを語っている。

初回10.6%に続いて、1月13日に放送された第二話の平均視聴率も10.7%と、『絶対零度』は今シーズンも好発進。ダークサイドに落ちた時の井沢の狂気、50代に差し掛かった沢村にしか演じることのできない新境地を見逃すわけにはいかないだろう。

  • 取材・文島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • 写真アフロ

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