8000円の傘に10万円のほうき 超高額日用品が大ヒットの理由

羽生結弦が使っている1万円超のマスクなど高級アイテムが売れている。舞台裏を追った

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「世界で初めてビニール傘を開発したのは前社長である父。500円ぐらいの一般的なビニール傘と違い、弊社のビニール傘は5~10年使用するという前提で作っていて、修理も受け付けます」

東京・台東区の『ホワイトローズ』社長・須藤宰(つかさ)氏はこう話す。手にしている「縁結(えんゆう)」と名付けられた傘は8000円! それでも年間4000本も売れる。製作に3ヵ月ほどかかるため、入手待ちの列ができているほどだ。人気の秘密は、美智子上皇后が園遊会で使用するために開発されたという逸話があるからだろう。

「美智子さまが’10年の植樹祭で、偶然、弊社が選挙用に開発した大型のビニール傘を使用されたことがきっかけでした。この傘に興味を持たれた美智子さまの意向を受けた女官長が弊社に開発の相談をしてきたのです。園遊会の時、美智子さまは参列者からご自分の顔が見えるようにと傘を肩にかけて差し、風が吹いてきても決して参列者のほうに傘を向けることはしません。そのため、風で傘が飛ばされないように内側から風が抜ける仕組みを考案しました。骨組みには折れにくいグラスファイバーを使用しています」

ビニールもマイナス20度まで変化しない特殊フィルムを使用するなど凝りに凝っている。原価が高額なため、当初は一般販売する予定はなかった。が、東日本大震災で工場が打撃を受け、経営が悪化。ダメ元で園遊会モデルとして売り出したところ、飛ぶように売れたという。

ティッシュペーパーにも超高額品がある。商品名としておなじみのクリネックスの最高クラス、「至高」シリーズだ。

「日本で最初にティッシュを紹介したのは当社。それにふさわしい『フラッグシップモデル』を作ろうと’08年に開発されたのが『至高』です。通常のティッシュは2枚重ねですが、至高は3枚重ね。’10年には4枚重ねの限定生産品『至高 羽衣』を発売し、’16年には1箱から購入可能な『至高 極(きわみ)』を発売しました。やわらかく薄いティッシュ紙を4枚重ねにすることで、やわらかさと同時に丈夫さを実現。1枚ごとの間に空気を含んでいるので、ふんわり感が増すのです。コンセプトは、〝これぞメイドイン・ジャパンのモノづくり〟です」(日本製紙クレシア広報)

「クリネックス至高 極」は、1箱1000円。同社公式サイトでは「大切なあの方への贈り物に」とアピールしている。

〝大物〟を所有せず日用品で満足

それにしても100円ショップでも売っているような日用品に、何十倍もするような超高額品が存在することは驚きだ。いったい誰が買うのだろう。

トレンド評論家の牛窪恵氏が言う。

「現在の日本は、誰もが先行きに不透明感を抱いています。特に今の40代未満の人は不況しか知らないので〝大物〟を購入することにすごく躊躇する傾向が強い。その裏返しとして、シェアカーやサブスクリプションを活用するなど、ものを所有しないライフスタイルが若い人を中心に広がっています。ローンを組んで購入するような住宅や自動車よりも、ちょっと頑張れば手が届く高額日用品で満足感を得る。そのように消費者が変化していっているように思います」

羽生と同じマスクに「いいね!」

最近はSNSが発達したこともあって、高額日用品は、ネタとして購入されることも増えてきている。

たとえば以前、フィギュアスケートの羽生結弦選手が1万2000円のマスクを使っていることが話題になったが、ファンが〈#ユヅ君と同じマスクを買ってみた〉とハッシュタグをつけて投稿すれば、いいねと言ってもらえたりするのだ。

牛窪氏が続ける。

「バブル直後くらいまでは高級車や高級ワインが評価されましたが、SNSの時代になるとB級、C級のほうが評価されるんですね。たとえば海外に行って高級グルメを食べる姿をインスタにアップしたら、羨ましがられはしますが、同時にやっかみもついてくる。自分が到底手が届かないレベルの贅沢をよく思わない人が多いんです。それなら高級ティッシュを買った体験を投稿するほうが無難だということになります。一方、販売する企業側も、大量生産品のハイエンドモデルを出すことは会社のブランドを上げることにつながるので、積極的に開発しているのでしょう」

高額商品の主力は日用品に。このトレンドはしばらく続きそうだ。

衣食住でプチ贅沢。まだまだ、こんな高額日用品も

『FRIDAY』2020年1月24日号より

  • 撮影鬼怒川毅 小川光写真時事通信

Photo Gallary8

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