「野球の危機」を救う新しい表彰 実は競技人口は10年で4割減

少年野球チームの新しい「ブランド」になるか?「エニタイムフィットネスPresentsコーチングアワード2019」

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第1回「ベストコーチングアワード」の表彰式。全国の41チームが表彰された

2019年12月15日、東京都内で少年野球チームを対象としたある表彰式が行われた。

「エニタイムフィットネスPresentsベストコーチングアワード2019」という賞だ。
その名の通り、コーチを表彰するアワードだが、選出されたのは、全国大会で優勝したチームや、優秀な選手を輩出したチームの指導者ではない。

日々の野球指導を行う上で、古い習慣にとらわれることなく、子供たちの未来を考えて、心身の健康面に配慮した指導を実践している指導者を表彰するというものだ。
選考基準として以下の3点が挙げられている。

●メディカルとコンプライアンスに基づき指導を実践されている指導者
●学ぶ意識が高く情報をアップデートして指導に取り組める指導者
●長い将来の目標と怪我をさせない、未然に防ぐ知識を持って指導を実施できる指導者

今回は以下の41チームが表彰された。

★★★ Triple Stars受賞チーム

(DoubleStars受賞者の中から複数チーム選出)

・浦和ボーイズ ボーイズ 埼玉県浦和市
・春日学園少年野球クラブ 全軟連 茨城県つくば市
・堺ビッグボーイズ ボーイズ 大阪府堺市
・館林慶友ポニー ポニー 群馬県館林市
・玉名町少年野球クラブ 全軟連 熊本県玉名町
・TOHOパイレーツ 全軟連 東京都調布市
・特定非営利活動法人 前橋中央硬式野球倶楽部 ボーイズ 群馬県前橋市
・南生田ウイングス 全軟連 神奈川県川崎市
・西田川ジュニアクラブ 全軟連 福岡県田川市
・本庄ボーイズ ボーイズ 埼玉県本庄市
・八幡イーグルス 全軟連 東京都世田谷区
・レッドスネークコルツ 全軟連 神奈川県横浜市
・和光リバーツインズ 全軟連 埼玉県和光市

★★ Double Stars受賞チーム

(選考基準を満たしたチームの中で数チーム選出)

・赤西ナインスポーツ少年団 全軟連 東京都北区
・市川ポニー ポニー 千葉県市川市
・市原ポニー ポニー 千葉県市原市
・鎌倉笛田エース 全軟連 神奈川県鎌倉市
・特定非営利活動法人春日部ボーイズ ボーイズ 埼玉県さいたま市
・北斗ベースボールクラブ ポニー 北海道北斗市
・みなとみらいクラブ ブルーウインズ 全軟連 神奈川県横浜市
・南大分友愛ベースボールクラブ 全軟連 大分県大分市

★Single Star 受賞チーム

(選考基準に則り認定されたチーム)

・昭島リトルリーグ・リトルシニア リトル 東京都昭島市
・石巻ウィンズ 全軟連 宮城県石巻市
・宇都宮ポニーベースボールクラブ ポニー 栃木県宇都宮市
・大井亀少クラブ 全軟連 埼玉県ふじみ野市
・大阪狭山ヤング ヤングリーグ 大阪府狭山市
・大府ワイルドボーイズ 全軟連 愛知県大府市
・片山ウイングス 全軟連 埼玉県新座市
・交野翔輝ヤング ヤングリーグ 大阪府交野市
・金目クラブ 全軟連 神奈川県平塚市
・清瀬ポニーリーグ ポニー 東京都清瀬市
・キングドラゴンズ 全軟連 東京都江戸川区
・湘南ヤングスラッガーズ ヤングリーグ 神奈川県茅ヶ崎市
・高茶屋ブルーオーシャンズ 全軟連 三重県津市
・高松ボーイズ ボーイズ 香川県高松市
・つくばポニー(つくばjwarriors) ポニー 茨城県つくば市
・栃木南ポニーブロンコ/栃木南Hops ポニー 栃木県真岡市、上三川町、宇都宮市
・豊川イーグルス 全軟連 愛知県豊川市
・西東京ドジャース ポニー 東京都西東京市
・ニューダイヤフレンズ 全軟連 埼玉県草加市
・花見川少年野球クラブ 全軟連 千葉市花見川区

中には、MLBレイズへの入団が決まった前DeNAの筒香嘉智や、今期パ・リーグMVPに輝いた西武の森友哉を輩出した堺ビッグボーイズのような全国的に有名なチームもあるが、町の小さな少年野球チームもある。

筆者はこの中のいくつかを取材したことがある。少年野球といえば大人の罵声が飛び交うものというイメージがあるが、これらのチームでは大人の指導者が荒い声をかけることはなく、子供の笑い声が聞こえている。指導者は子供をじっと見守るだけだ。
夏場であればこまめに水分補給をする。「のどが渇いたら断らなくてもいいから、自分で水を飲みに行けよ」指導者は子供にこう呼びかける。

なかには土日は朝から晩まで練習漬けというチームもあるが、表彰されたチームの練習時間は短い。また一握りの投手に何百球も投げ込みをさせることもない。試合でも連投させることは少ない。

「今、全国大会などでいい成績を出すのではなく、高校、大学、大人になってから活躍してほしい」

これらのチームの指導者が口をそろえて話すことだ。今回の賞を主催した一般社団法人スポーツメディカルコンプライアンス協会の中野司代表は語る。

「僕はアメリカで育ち、現地の学生野球チームで野球をしていたのですが、日本に帰ってきてわが子を地元の野球チームに入れてみて愕然としました。大人たちが子供を怒鳴って従わせようとしている。スポーツ科学の知識もない大人が、根性論でパワハラまがいの指導をしていたんですね」

中野代表はスポーツマネジメント会社を運営していたが、日本の少年野球界の改革のためにスポーツメディカルコンプライアンス協会を設立。野球指導者として活躍中の元ロッテ荻野忠寛氏も設立に参加。野球ひじ治療の第一人者である古島弘三医師(慶友スポーツ医学センター長)も、趣旨に賛同し、特別顧問に就任した。

2010年に始まった小中学校での野球競技人口の減少は、深刻な事態を迎えている。ここ10年で競技人口は40%も減少した。この間の子供人口の減少は5~6%だからこの事態は「少子化」では説明できない。
野球ができる公園がなくなっていること、他競技の選択肢が増えたことなどの要因はあるだろうが「野球」という競技が子供とその保護者から「選択されなくなっている」のは紛れもない事実だ。

海外の少年野球指導者の中には「日本じゃマフィアみたいな指導者が子供を教えている」という人もいるという。世界の中でも特異なこの環境を変えていかなければ、野球の未来はないだろう。中野代表は話す。

「今回選出したチームの中には、課題を残しているチームもあります。でも、その課題を明確にして改善しようとしているチームはそのまま認定しました。私たちは“ふるいにかける”のが目的ではありません。子供を預けても安心なチームが全国に増えてほしいと思っているのです」

表彰されたチームには「ベストコーチングアワード」のや横断幕などが配布されるという。表彰されることが、少年野球の「ブランド」になっていけば、野球界は底辺から変わっていくだろう。

来賓として元ヤクルトの館山昌平(左)も来場。野球を楽しむことの大切さを説いた。今季から楽天の2軍投手コーチに就任する

 

  • 取材・文広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

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