難化による安全志向ではない 受験生が“東大早慶”を受けない理由

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早稲田大学のシンボル大隈講堂。毎年10万人以上の志願者を集めている早大だが今年は大幅に減りそうだ

「東大に受かる実力があるのに、中堅の私立大学に入れればいいという生徒が増えています。超安全志向になっているんです。もっとチャレンジ精神を持って受験してほしいのですが……」

都内の私立中高一貫校の教師が嘆く。

年々、受験生の安全志向が強まっている。偏差値が70以上ある生徒でも、東大や早稲田、慶応などの難関大学を回避する動きが強まっているのだ。大手予備校の河合塾によると、今年の前年比志願者数は最上位国公立の「旧帝大7校」(東京、京都、北海道、東北、名古屋、大阪、九州)と東工大、一橋、神戸が95%。「早慶上理」(早稲田、慶応、上智、東京理科)は94%に落ち込んでいる。

受験生が安全志向に走る理由は、主に二つあると言われる。森上教育研究所所長の森上展安氏が解説する。

「一つは定員の厳格化です。大規模私立大学の定員超過率は、’18年にそれまでの1.2倍以内から1.1倍以内に引き下げられました。そのため各大学で合格者が減少。早慶を中心に倍率が上がり、難化しているんです。二つ目が混迷した、文部科学省の大学入試制度改革。英語の民間試験導入や国語や数学に記述問題を取り入れるというモノですが、これまでの多くの国公立志望者がしてきたマーク式の受験対策がムダになる可能性があります。多くの批判を受け民間試験などの導入は延期されましたが、新テストは来年から始まる予定です。そのため『絶対に今年決めたい』という受験生が増えているんですよ」

40代以降の“お父さん世代”からすると、受験生のチャレンジ精神の無さに歯がゆさを覚える方も多いだろう。だが高校3年生にとって、「現役合格」は死活問題なのだ。

「定員の厳格化で、上位大学は年々難化しています。浪人しても、早慶に入れる保障はありません。それなら確実に受かる『日東駒専』(日大、東洋、駒沢、専修)に入学したほうがいい。そもそも周囲が現役で合格しているのに、自分だけ浪人するのは恥ずかしいでしょう」(都内の高校3年生)

消極的な理由ばかりではない。将来を見すえた別の考えから、東大早慶を敬遠する受験生もいるという。前述の森上氏が話す。

「進学校の生徒に浸透しているのが、データサイエンスという考え方です。大量の情報が行きかう現代。社会で活躍するためには、ビッグデータを有効利用できる数学的思考が必須になります。たとえ東大であろうと、一般的な文系の学部ではもはや対応できません。人気が高まっているのが、情報を数学的思考で学べる滋賀大学や武蔵野大学のデータサイエンス学部、中央大学の国際情報学部なんです」

社会の価値観も変わった、と森上氏が続ける。

「いい大学に入り大企業に入れば安定、という人生観はもう古い。現代は激しい競争社会です。東大や早慶を出ても、実力がなければ閑職に追いやられ、最悪の場合数年でクビになります。就職人気企業に入社しても、定年まで倒産しない保証はありません。そのことを受験生もよく理解している。税についてでも投資についてでも、社会で武器になる自分なりの専門分野を見つけ、それを学べる大学や学部を選ぶようになっているんです。より専門性を高めるために、大学院に進み修士の資格を得る生徒も多くいます」

もはや東大、早慶が絶対的に優位な時代は終わった。受験生は卒業後に活躍する自分の姿を想像し、受験校を決めているのだ。

Photo Gallary1

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