エコー&注射1本でヒザ、肩、足首の痛みが劇的に消える最新治療法

撮影・取材:吉澤恵理(薬剤師・医療ジャーナリスト)

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エコー装置を患部に当てて診断しながら、ダイレクトに注射できるので、スピーディかつ劇的に症状が改善

都内で暮らす50代の女性Aさんはある日、何の前触れもなく肩の激痛に襲われた。腕はまったく上がらなくなり、何もできないので寝ようとしても、あまりの痛さで眠れない。

石灰沈着性腱板炎――体内で自然にできる塩基性リン酸カルシウム(石灰)が肩関節の腱板に沈着することで起きる、40~50代に多くみられる肩痛だ。

痛みに耐えかねて病院を訪ねても、レントゲンを撮ってわかるのは肩にモヤっとした白い影がかかっていることだけ。

これまでは医師が経験に基づいて肩関節内にステロイド注射を打って経過を見ることぐらいしかできなかったが、Aさんの激痛は注射1本で軽減され、1週間もすると腕を回せるほどに回復した。

Aさんを救ったのは整形外科の世界で現在、注目を集めている「運動器エコー」と呼ばれる治療法だ。実際に治療を担当した「狛江はく整形外科」の白勝(はくかつ)院長が解説する。

「レントゲン撮影では石灰化していることはわかっても、肩の腱板のどこが炎症を起こしているのかまではわからない。ところがエコーを併用すれば、モニターで炎症を起こしている場所を確認しながらピンポイントで処置できるのです」

エコー検査とは、超音波を体内に当て、反射してくる音を受信して画像を作り出す検査法。妊婦の胎内の赤ちゃんを映像化する腹部エコーなどが有名だが、整形外科に応用することで目覚ましい成果があがっているというのだ。

1~2枚目写真はエコーの装置を患部に当て、炎症を起こしている場所を確認しながら、処置している場面である。

「石灰が沈着している箇所に注射針を刺し、吸引することで、痛みの原因を直接、取り除くのです」(白院長)

レントゲンでは見つからない

3枚目写真はアキレス腱の痛みを訴えて受診した80代の男性Bさんの足首のレントゲン写真だ。

一見、何の異常も認められないが、エコー検査を用いることで〝痛みのもと〟がハッキリ、可視化されたという。

「レントゲン写真には何も写っていないので、一般の病院であれば、シップや痛み止めの薬が処方されて、経過観察あるいはリハビリとなります。ドクターにもよりますが、痛みが引かないようであれば、炎症を抑えるためにステロイド注射を打つケースもあるでしょう」(白院長)

この場合、ステロイドを打つ箇所は医師の裁量に任されるため、いつまでたっても痛みが引かないというケースが散見される。ところが、エコーを用いると「見えなかった痛みのもと」が見えると白院長は言うのである。

「Bさんの場合、エコー検査によって、アキレス腱が腫れており、炎症を起こしていることがわかりました。炎症を起こしている箇所が確認できたので、直接、ステロイドを注射。足を引きずりながら受診に来られたBさんは、スタスタと歩いて帰られましたよ。2~3日で症状はほぼ全快し、この1週間後にはお礼を言いに来られました」

ステロイドを打つと腱の脆弱性が高まるので、白院長は最低6ヵ月は間隔を空けて、トータルで3回以上は打たないようにしているが、エコーを用いることで〝ムダ打ち〟が避けられるのだ。

「エコーを用いることで、診断と治療が同時にできる。患者さんにモニターを見せながら病状を説明できるのは大きなメリットです。ピンポイントで治療できるから、漫然と痛み止めや注射を繰り返すことによるQOL(生活の質)の低下を防げます。注射の針もモニターで見られるから、血管や神経を傷つけるリスクも避けられる。レントゲンのように被曝する心配もないので、子供や妊婦にも安全に使用できる。運動器エコーはメリットだらけの画期的な治療法なのです」

唯一の難点はエコーを治療に取り入れている整形外科が少ないことだ。

「私がエコー診断を始めたのは約4年前。エコー装置の開発が進んで解像度が上がり、臨床で使えるレベルになってきてからです。大学の医局に在籍していたころなんて、触ったこともありませんでした。日本整形外科学会の整形外科専門医試験に運動器エコーに関する問題は出題されないし、外来には整形外科医が使用できるエコー装置も存在しないので、ヒザや肩などにエコーを使うという発想がありませんでした。整形外科医がエコー装置の使い方を学ぶ場所がなく、医師個々の熱意によるところが大きいのです。エコーを治療に使っている開業医は全体の3割程度、オペを行う大学病院や市中の病院では1割以下といったところでしょう」(白院長)

保険の面でも点数などが明確に決まっておらず、行政の対応も不十分だという。

そんなデメリットを補って余りあるほど有用なエコーを学び、広めるべく、白院長は講習会を開催するなどして、普及に努めている。長年、多くの患者を苦しめてきたヒザ痛や肩痛が確実に、即座に治る時代が、すぐそこまできている。

患部のエコー画像。モニターで患者に見せ、説明しながら治療する。画面右上の白い棒状のものが注射器の針だ
(上)アキレス腱の痛みを訴えて受診したBさんの足首のレントゲン画像。左側が患部だが、何も写っていない (下)アキレス腱をエコー検査すると、炎症を起こしている箇所が複数、確認できた(黒い線で囲んだ部分)

『FRIDAY』2020年1月31日号より

  • 写真狛江はく整形外科提供

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