名演技の陰に、吉高由里子が「時間よ、戻れ」と言って泣いた夜

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個性的な私服が印象的な吉高由里子。NHK朝ドラ『花子とアン』でナレーションを担当した美輪明宏と(‘14年)

三十路を越えすっかり”お仕事ドラマの女王”と呼ばれるようになった吉高由里子。しかし、そんな吉高に物足りなさを感じてしまうのは、私だけだろうか。

「吉高が映画『蛇にピアス』で初主演を飾り、センセーショナルな話題を振りまいたのは‘08年、吉高が二十歳になったばかりの頃。衣装合わせの際、『ほとんど裸の映画なのに、(私の)裸を見ないで撮れるんですか』と、監督を務める天下の蜷川幸雄に迫り慌てさせるなど、当時の吉高には鬼気迫るものがありました。この作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を獲ると、‘14年には朝ドラ『花子とアン』でヒロイン役を射止め、吉高は当時担当していた女性マネージャーと二人三脚でスターダムへの階段を駆け上がっていきました」(ワイドショー関係者)

当時は怖いもの知らずの天衣無縫ぶりに、まわりをハラハラさせることもあったが、近頃はそんな様相も一変。‘18年『正義のセ』(日本テレビ系)では仕事と恋に奮闘する女性検事、‘19年『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)では、ウェブ制作会社を舞台に「働き方改革」を唱えるクリエーターを演じるなど、アラサーの代表として様々な悩みに寄り添ってきた。

しかしその一方で、吉高本来の野性味はすっかり影を潜めている。吉高自身は”お仕事女優の女王”と呼ばれることについて、どう考えているのか。

これが大人の女優になるということなのか。だがそうした心配は、どうやら取り越し苦労のようだった。

なぜなら、今年1月からスタートしたドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ系)では、影を潜めていたはずの吉高の野生が時折、見え隠れしている。

「今回、吉高が演じているのは、政治の不正疑惑や芸能界のスキャンダルまでスクープを連発する『週刊イースト』の敏腕女性記者・真壁ケイト。ところがある日、女手一つで育ててくれた母・杏南(秋吉久美子)が急死。ケイトの父がかつて世間を騒がせた殺人犯・乃十阿徹(小林薫)だということが明らかになり、自らの出生を巡りドラマは大きく展開していきます」(番組関係者)

”出生の秘密”を知った途端、ケイトを取り巻く恋愛模様も一変する。ケイトにプロポーズしていた編集部の後輩・野中(重岡大毅)は、手の平を返すように結婚を破棄。

しかしその一方で、元カレのカメラマン・尾高(柄本佑)の存在が、ケイトの心を再び揺さぶる。第2話のラストシーンでは、そんな二人のドキドキするようなドラマが展開される。

「深夜、尾高の仕事部屋を久しぶりに訪ねるケイト。そこで生前、母の杏南が乃十阿徹の出所記事を見て尾高の元を訪ね、乃十阿との関係をケイトに知られることを恐れて『ケイトを生涯守って欲しい』と涙ながらに訴えていたことが明らかに。そこでケイトは『父親が殺人犯であることを知りながら、プロポーズしてくれた』当時の尾高の想いを知り、泣きじゃくり『時間よ、戻れ』と心の中で呟くラストシーンには、心奪われました」(放送作家)

前2作のお仕事ドラマでは見せなかった、全身を震わせ泣きじゃくる吉高の熱演ぶり。そして「時間よ、戻れ」の呟きは、吉高の心の奥底に眠る野生の扉をノック。「蛇にピアス」の頃の鬼気迫る何かが、吉高の中で弾けた。

吉高には、女優として生きていくと決めた”壮絶な過去”がある。朝ドラ『花子とアン』の後、休業の末1年ぶりに女優業を再開した折、デビュー10年を振り返り、転機となった出来事として、吉高自身もその体験を挙げている。

「‘07年、映画『蛇とピアス』の主演が決まった直後、吉高は顎の骨を折るなど全治半年の交通事故に遭いICU(集中治療室)に入院。隣のベットで亡くなっていく人の姿を目の当たりにして、『もしかしたら明日は自分が死ぬのか』といった恐怖を味わい、心の底から”生きたい”という思いがこみ上げてきたと告白しています」(制作会社プロデューサー)

生きたい、そして”生きて演じたい”。この時、”女優・吉高由里子”は、生まれたといっても過言ではあるまい。心の底から”生きたい”と願った吉高は40度の高熱にうなされながらも、半年かかると言われた怪我をわずか1ヶ月半で治すという驚異の回復力をみせる。

「しかもこの事故で映画の降板もやむを得ないと覚悟していた矢先、制作サイドから『治るまで待ちます』と言ってくれたことも、吉高に生きる力を与え『いかにまわりに助けられているのか知るきっかけにもなった』と告白しています。さらに以前の自分勝手な行動を思い返し『人に感謝することも知らず、お前は一度、痛い思いをしないとわからない。だからああいう事故が与えられた』と考えるまでに至ったことも口にしています」(前出・制作会社プロデューサー)

女優・吉高由里子の原点は、この臨死体験ともいうべき”壮絶な事故”にあった。「時間よ、戻れ」と心でつぶやくシーンを演じる吉高の脳裏には、”生きたい”と願ったあの日々が蘇っていたのかもしれない。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO田中俊勝

Photo Gallary1

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