獲得賞金5000万円 東大卒プロゲーマーのスランプ救った空手 | FRIDAYデジタル

獲得賞金5000万円 東大卒プロゲーマーのスランプ救った空手 

空手で培った「胆力」で自分なりの戦い方を身につけた

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ときどの事務所には、優勝した大会のトロフィーが立ち並ぶ。肩に担いだコントローラーは特注品で、重さは4kgほど
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「僕は今34歳です。格闘ゲームの世界ではもう若くはありません。後輩たちのほうが反応速度やルールに対する適応能力が高く、いつ足を掬(すく)われてもおかしくない。そんな状況で僕が生き残るには、自分ならではのスタイルをもっと追求していく必要がある」

こう話すのは、人気格闘ゲーム『ストリートファイターⅤ アーケードエディション』のプロゲーマーとして活躍するときど(本名:谷口一(はじめ))だ。麻布中高、東京大学工学部卒業というエリートコースを歩みながら、約10年にわたってプロゲーマーとして活躍してきた異色の経歴を持つ。これまで数多くの国際大会で優勝しており、累計獲得賞金は5000万円を超えるトッププレイヤーだ。

「初めての格闘ゲームは、7歳のときに従兄弟と遊んだ『ストリートファイターⅡ』。最初はどうやってコンピューターが操るキャラを倒すかで一生懸命でした。中学生になってからは、地元・横浜のゲームセンターでライバルとひたすら対戦する毎日。週末には遠くのゲーセンまで遠征して、より強い相手と対戦するのに明け暮れていました」

高校に上がると、予備校に通いながら当時、世界最強レベルと言われていた新宿のゲームセンターに通うようになった。その後もゲームと受験勉強を両立しつつ、1年の浪人生活を経て東大に合格。東大大学院中退後の’10年11月にプロゲーマーとなった。まだ世間に、ゲームで生計を立てるという考え方がほとんどない時代のことである。

「プロになるためには、出資してくれるスポンサーが必要です。世界中のいろんなところにメールを送りまくって、やっと1件だけスポンサーになると返事をくれたのが、アメリカの小さなTシャツ屋さんでした。連絡が来たときは、本当にうれしかったですね」

しかし、選んだ道は険しかった。プロになって3年が経った頃、自分の戦い方がまったく通用しなくなってしまったのだ。

「スランプに陥るまで、僕の強みは『攻略が早い』ことでした。ゲームがリリースされたらいち早く試合に勝てる強いキャラクターを見定め、強い技、コンビネーションを誰よりも早く磨き上げる。試合本番では、対戦相手のクセや弱点を探して突く。僕がこれまで受験勉強でやってきたことと同じです。ゲームメーカーが出題したクイズに、いかに早く解答するかという感覚で進めていました。それが、ネットを通じてゲームの攻略情報が即座に世界中で共有されるようになったため、戦い方に差がつかなくなり、だんだんと勝てなくなってきたんです」

自分の強みが無くなり、失意のどん底に沈んだときど。そんなとき、マネージャーから紹介されたのが空手だった。

「空手で身に付いたのは『胆力』です。毎週、組手を繰り返すことで、切羽詰まった状況でも練習通りに動けるようになってきました。普通に生活していると、危険が迫ってくる場面というのは少ない。でも空手は『うわっ! やられてしまう!』と思うような状況を経験させてくれます。その訓練によって、ゲームの試合で同じように追い詰められても動じないようになってきた。危機的状況から早く立ち直り、逆転するための力は、空手によって培われたと思いますね。今ではジムでの筋トレと並んで、僕の中で大事なルーティンとなっています」 

近年ではバラエティ番組への出演や自己啓発書『努力2.0』を上梓するなど、活躍の場は大会だけに留まらない。

「いつまでも勝利だけを目標にやっていると、今のeスポーツブームが去ったときに、何も残らないかもしれない。ですから、注目度が高まっているうちに、この世界をもっと多くの人に知ってもらうため、ゲームの面白さをアピールしていくことが重要だと考えています」

格闘ゲームで、人生を勝ち抜いていく――。ベテランプロゲーマーが見据える先には、eスポーツの未来があった。

事務所でゲームの練習を行うときど。10年にわたって豪鬼(ごうき)(画面左)というキャラクターを愛用している
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海外遠征が多く、大会中のスケジュールは過酷。基礎体力をつけるため、週に3回はジムに通っている
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大会で試合する姿が「まるで殺し屋の顔つき」と評されたことがきっかけで「マーダーフェイス」と呼ばれるように
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本誌未掲載カット ときど・東大卒のプロゲーマーに密着インタビュー
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『FRIDAYデジタル』2020年1月31日号より

  • 撮影鬼怒川 毅(1~2枚目、未掲載カット)大須 晶

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