間違うと意味なし 新型コロナ対策「マスク」正しい選び方、使い方
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が拡大中だ。中国では予防のためのマスクが品不足になっているという。日本でも、電車や街中ではウイルス対策のためか、マスク姿の人を多く見かける。だが、果たしてマスクでウイルスを完璧に遮断することは可能なのだろうか。
マスクで完璧にウイルスを防ぐのは難しい
結論から言うと、一般的に市販されている使い捨てマスク(不織布マスク)のみでウイルスを完璧に防ぐのは難しい。
だが、厚生労働省は1月24日に発表した報道向け資料内で、新型コロナウイルスに関連した感染症の対策として「マスクの着用や手洗いの徹底などの通常の感染症対策に努めて」と呼び掛けている。
インフルエンザの本格的な流行も危惧されるこの時期、「マスク」の役割、選び方、使い方などの基本を見直してみたい。
マスクは口と鼻を覆って咳やくしゃみの飛沫が飛び散るのを防いだり、ほこりや飛沫などの粒子が体内に入るのを抑制する衛生用品だ。フィルター部分がウイルスや、飛沫などの粒子を捕捉する役割を果たしている。
薬局やドラッグストアの店頭で、パッケージに「99%カット」といった数値が書かれたマスクを見かけることがあるが、これはフィルター部分の性能を示している。では、このマスクを使ってさえいれば、99%のウイルスを遮断できるのかというとそうではない。なぜなら、吸い込む空気のすべてがフィルターを通って体内へと吸い込まれるのではなく、マスクと顔の隙間などからフィルターを通さずに流れ込んでしまうためだ。
古いデータなので、現在流通している不織布マスクの性能とは若干異なる可能性があるが、2009年に国民生活センターが行った「着用時の顔とマスクの“隙間”からの空気の漏れ」についての調査を紹介したい。
この調査では、プリーツ型および立体型のマスク15種類における、マスク内への空気の漏れを「漏れ率」として算出した。その結果、調べた全ての銘柄において平均漏れ率が40%以上だったという。
つまり、いくらフィルターの機能が優れていたとしても、正しくマスクを着用しなければウイルスを遮断するのが難しいことがわかる。厚生労働省も「新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方」において、「感染していない健康な人が、不織布製マスクを着用することで飛沫を完全に吸い込まないようにすることは出来ない」と述べている。
マスクの機能を最大限に引き出す2つのポイント
では、ウイルス対策にマスクは全く無意味なのかというとそうではない。
前述の厚生労働省が発表した「新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方」では、不織布製マスクによって飛沫を完全に吸い込まないようにすることは出来ないとしながらも「不織布製マスクのフィルターに環境中のウイルスを含んだ飛沫がある程度捕捉される」としている。
さらに、マスクはドアノブ、つり革、スイッチなどに付着したウイルスが手を介して、直接口や鼻に触れるのを物理的にガードするため、接触感染をある程度減らすことが期待されるとしている。
したがって、ウイルス感染予防を目的としたマスクの使用は “ある程度” の対策にとどまることを前提としたうえで、手洗いなどと併用して活用したい。
では、マスクの機能を最大限に引き出すにはどうしたら良いのだろうか。ポイントは2つある。
1、捕えたいウイルスなどの粒子を捕捉できるフィルターの機能を備えたマスクを選ぶ
ウイルスを含む「飛沫」の大きさは3.0~5.0μmなので、この大きさの粒子を捕えることを目的に作られたウイルス対策用のマスク選ぼう。たとえば、花粉対策用のマスクではウイルスを含んだ飛沫はうまく補足できない可能性がある。花粉は30.0μmと、飛沫の10倍の大きさがあるためだ。
2、空気の漏れが少ない顔にフィットしたマスクを選ぶ
せっかくのマスクの性能を活かすためには、顔にぴったりと密着した空気の漏れが少ないものを選ぶことが大切だ。日本衛生材料工業連合によると、自分の顔にフィットするマスクは片手を使って下記の要領で簡単に選ぶことが出来るという。
- 1)親指と人さし指でL字を作る。
- 2)L字にした状態で、親指の先を耳の付け根(上の方)にあてる。
- 3)L字にした人さし指の先端を、鼻の付け根(上の方)から1cm下にあてる。
- 4)その親指と人さし指の長さがマスクのサイズの目安となる。
- このサイズが
- ・9~11㎝:子ども用サイズがおすすめ
- ・10.5~12.5㎝:小さめサイズがおすすめ
- ・12~14.5㎝:普通サイズがおすすめ
- ・14㎝以上:大きめサイズがおすすめ
上記の2つのポイントのほかに、使用中・使用後のフィルター部分にはウイルス・菌が付着している可能性があるので「マスクのフィルター部分に触れない」「捨てるときは表面には触れずに耳にかける紐をつかんで捨てる」「最低でも1日1回は交換する」など等を心がけて、ウイルス対策のひとつとして活用したい。
- 取材・文:高垣育
薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている薬剤師ライター。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。