シーズン終了後にリーグから除外 サンウルブズが今年やるべきこと

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5シーズン目を終了時にスーパーラグビーから除外されるサンウルブズ(写真:アフロ)

スーパーラグビーに日本から挑むサンウルブズが、5度目のシーズンインを見据える。選手層や準備期間の短さなどが指摘される現実を踏まえたうえで、大久保直弥ヘッドコーチは前向きに語る。

「僕としてはいまがどうこうというより、シーズンが始まるのが楽しみです」

スーパーラグビーとは、ニュージーランドなど南半球の強豪国を主体とする国際プロリーグだ。

サンウルブズは2016年に参入し、多くの日本人選手が世界屈指のゲームスピードと強度のもとで成長してきた。昨秋のワールドカップ日本大会で初めて8強入りした日本代表の登録メンバー31名中29名は、サンウルブズもしくは他チームでスーパーラグビーに触れている。

スタンドでは狼の鳴きまねをするファンが定着し、昨年就任した森重隆新会長も「大学とか関係なくあんなに応援して…」と感動していた。4季で8勝という通算成績とは無関係に、サンウルブズは列島に大きな価値をもたらした。

ところがこのクラブは、今季限りでスーパーラグビーから除外される予定だ。何より今季は、これまでスーパーラグビーと開催時期がずれていたトップリーグが、スーパーラグビー開幕の約3週間前にスタートした。日本大会組は揃ってトップリーグを選んでいる。

世界各国からサンウルブズに集まった新顔の経験値には、バラつきがあった。チーム関係者によれば、フォワードの選手のフィットネス数値は日本大会組の基準を下回っている。

沢木敬介コーチングコーディネーターは「もっとよくしていかなくちゃ。スーパーラグビーのレベルでは通用しない」と語る。2015年にワールドカップイングランド大会の日本代表でも同職を務めた沢木氏は、現実から逃げない。

もっとも、今季初めてスーパーラグビーに挑む沢木は「まだまだこれからです。まだ(始動して約)1か月」。話をしたのは1月25日だった。福岡のミクニワールドスタジアム北九州でプレシーズンマッチに挑んだ。

国内下部リーグ連合軍のチャレンジバーバリアンズを81―28で制したこの日は、沢木曰く「アタッキングマインドを持つ」ことを念頭に置いていた。前年度までと同じように多国籍の編成となった赤いジャージィは、自陣からでも果敢に球を回し、高く蹴り上げたボールの再獲得からチャンスを生み出した。

南アフリカ代表13キャップ(代表戦出場数)を持つスクラムハーフのルディー・ペイジはテンポよいさばき、元南アフリカA代表スタンドオフのガース・エイプリルは隙間をえぐるランやキックパスを披露する。

イングランド代表18キャップでセンターのベン・テオ、南アフリカ代表12キャップでウイングのJJエンゲルブレヒトは、簡単に倒されず余力を持った体勢でオフロードパスを放つ。

この2人を「スキル、フィジカルのレベルが違う」とする天理大3年のシオサイア・フィフィタもウイングとして4トライを取った。経験豊富なバックス陣にあって、身長187センチ、体重103キロの大型フィニッシャーとして意気込む。

「今日の試合より、来週(開幕節)が大事。(求められているのは)スピードですかね。スーパーラグビーでもハットトリックを決められるようになりたい」

フォワード陣で目立ったのは、左プロップのジャレット・アダムス。元20歳以下サモア代表の23歳は、身長186センチ、体重125キロのサイズながらスピードあふれるランでトライを決めた。持ち場のスクラムでも膝をつかず、塊を押し込んだ。

田村義和スクラムコーチは、「組む前、組んだ時に何が必要かはもっと共有しないといけない。合流間もない選手もいたので、それは感じました」と全体的なパック構成を課題としながら、アダムスの潜在能力には舌を巻いた。

「前もって観た映像とはイメージが違います。スクラムはいつも崩れていたけど、ここ(サンウルブズ)ではずっとしっかり組んでいるし。彼も、気持ちよく組んでいます」

明大3年でロックの箸本龍雅ら、若き練習生の契約も期待される。早大4年でスクラムハーフの齋藤直人は狭い区画を駆け抜けたり、防御の裏のスペースへピンポイントのキックを放ったりと「経験を積むというよりアピール」との意欲を体現する。

反省も糧にする。センターの森谷圭介ゲームキャプテンは「『コンタクトレベルが上がった時にうまくいかないな』(という場面)が試合を通して見られた。コンタクトで勝っていない時にオフロードパスをしてボールを失うことも」。さらに防御面でもラインがばらついたり、背後のスペースをキックで突かれたりと、離れた味方同士での連係に課題を見つけた。

日本代表強化に貢献したサンウルブズ。2017年には最終戦で2勝目を挙げ、ファンと記念撮影を行った(西村尚己/アフロスポーツ)

2017、18年のサンウルブズも経験した布巻峻介は、防御の改善点をこう語る。

「ディフェンスでは、喋らないと何も成り立たない。『○○(相手選手)を見た』と誰かが言ったのに対し(味方が)『じゃあ、俺は内(側)にいるよ』と、一方通行にならず、お互いが理解した状態を、あの(スーパーラグビーの)スピードのなかで作らなきゃいけない」

トップリーグの集客が好調ななか、今回のサンウルブズの試合の観客数は3017人。収容人数15000人のスタンドには空席が目立った。2月1日に福岡・レベルファイブスタジアムであるレベルズとの開幕節でも、チケット売り上げの面でやや伸びしろがありそうだ。

指揮官の大久保が「いまがどうこうというより…」と話したのは、「スーパーラグビーを戦うレベルといまのサンウルブズのレベルの違いについて」という質問を受けた時だ。

誠実に答えるうち、図らずも「にわか」と自嘲するファンへヘビーユーザー化を勧めておるような。

「まだまだフィジカル、スピード、スキルともどんどん限界を作らずに(高めたい)。ただ、あのプレッシャーのなかでプレーするには何が必要かは、選手が実際にプレーすることで見えてくる。過去4年でいまの代表選手が成長できたのも、(スーパーラグビーでの)経験から学んだ部分が多いからだと思います。…僕としてはいまがどうこうというより、シーズンが始まるのが楽しみです」

スーパーラグビーの運営母体は、近年の観客減や想定外の減収を踏まえリーグ編成の再度見直しを迫られるかもしれない。そうなると、サンウルブズを軸とした日本市場の動向に再度、光が当たりうる。

日本列島のラグビー界を競技力、人気の両側面で支えてきた太陽と狼の集団の行く末は、ますます注目される。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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