不倫を断ち切った『スカーレット』三津(黒島結菜)に称賛の声

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1月27日放送のスカーレット第97話「三津が失恋。信楽を去る」で、遂に松永三津(黒島結菜)がかわはら工房から去った。

全国各地の焼き物の名産地を巡った見聞と若者ならではの時代感覚を活かし、かわはら工房に“新風”を吹き込んだ三津。八郎(松下洸平)への想いを募らせるも、ひとつの家庭を壊す前に身をひく潔さは、「泣いた」「切なかった」とネットでも話題になった。三津はなぜ、不倫の道を自ら絶つことができたのか。これまでのストーリーを振り返って考察してみよう。

NHK連続テレビ小説『スカーレット』公式ホームページより

ヒロシに追い越され、傷ついた自分を八郎に重ねた三津

三津の八郎への想いは、自分と同じ境遇に置かれた者同志の、共感が始まりだった。

かわはら工房にやってきた当初、三津の心は別れた恋人・ヒロシのことでいっぱいだった。ヒロシは、三津と同じ美術大学の彫刻科に在籍していたが、陶芸に興味を持って始めた途端、メキメキと才能を開花させた「ヒラメキ型の天才肌」。過去の作品に執着せず、どんどん新しい作品を作っていくところが、喜美子(戸田恵梨香)にそっくりだという。

自分の横で、迷いもなく次々と新作を作って行くヒロシに対して抱いていた不満を口にする三津。その中で次々と、八郎の胸に刺さる言葉が飛び出した。

「できない自分にも腹が立って」
「“君もがんばれ”なんて言われたら、ますます腹が立って」
「才能がある人は、無意識に人を傷つけます」
「そして、耐えきれなくなって別れました」

三津が言葉を紡ぐごとに、隠し事が見つかった子どものような顔をして反応する八郎。同じ思いを経験しているからこそ、八郎は三津に「喜美子に横におられると、しんどいなぁ……」と弱音を吐いてしまったのだろう。

穴窯での新作制作にエネルギーを注ぎ込む喜美子を情熱的に演じる戸田恵梨香

三津は八郎を元気づけるため、「すばらしい作品とは売れる作品だ」と言い、家族を養うために小さな工房で同じ形のぐい飲みを作り続けている老人の話をした。陶芸家としては無名だが、その姿はとてもかっこよかった。その言葉に、無理に天才(喜美子)と肩を並べなくとも、八郎自身ができることをすればいいのではという、肯定と労りの心を感じた。同時に、八郎の弱い面を見たことで芽生えた共感が、三津の心の中でまた違う想いになっていると感じたシーンだっだ。

その後八郎は、生活に密着した、誰もが欲しいと思うものを作りたいと、和食器セットの制作に方向転換する。そして、そんな八郎の作品を「大好きだ」と言う三津。短い間とはいえ、悩み苦しむ姿を一番側で眺めてきた弟子が、師匠を慕うのは当たり前。それが異性の場合、恋慕の情に変化するのは、人間の感情としてごく自然の流れ。自分の感情を素直に表に出す性格の三津は、次第に八郎に対する想いを抑えきれなくなっていく。

「あかんもんはあかん」きっぱりと線引きした八郎にあっぱれ!

自分の助言を受けて銀座の個展の下見に行くことになった八郎に、三津は大胆にも、自分もついて行って東京を案内すると提案。「男と女が泊まりがけで行くなんてありえない」とやんわり諫める八郎に、「私のこと女だと思っていたんですか?」と切り返す三津。挙げ句の果てに「“松永さん”じゃなくて、“みっちゃん”とか“三津”と呼んで欲しい」とまで言い出す。

その昔、喜美子に迫られた時とまったく同じことを言う三津に、八郎が気圧される様子に、視聴者はハラハラしっぱなしだった。「だって三津は女やろ!」と隙を見せてしまうところに「ハチさん相変わらずかわいい」と思う反面、「今は喜美子と結婚しているんだから、しっかりして!」という視聴者の叫びが届いたかのように、「あかんもんはあかん!」とキッパリ拒絶した八郎に、朝ドラファンから拍手が上がったほどだった。

そこで自分の想いを押し通すほど、三津も考えなしではないところも良かった。口から出てしまった言葉をすべて冗談だとごまかし、八郎の留守中、三津は200枚もの絵付け小皿を1人で制作する喜美子の手伝いを通じて、「やっぱりすごい」と喜美子への尊敬の念を新たにする。

ちょうど同じ頃、三津は信作(林遣都)との結婚に真剣に向き合う百合子(福田麻由子)を支えてもいた。正式なプロポーズを受けて一緒に喜んだ夜、百合子に「そういえば、最近ヒロシ? の話をせえへんなぁ」と言われ、三津はドキリとする。「誰も気になる人もいいひんの?」と問われ、「……修行にきているんですよ」と、まるで自分に言い聞かせるように言う三津。きっとその心は、募るばかりの八郎への想いと、その八郎に頭を下げて自分の弟子入りを頼んでくれた喜美子への恩義が、激しくせめぎ合っていたに違いない。

八郎の寝込みを襲う三津!? そして別れへ……

ところが、とうとう三津の理性が崩壊してしまう瞬間が訪れた。それは大金をかけて作った穴窯に初めて火を入れ、日夜寝ずの作業を喜美子、八郎、三津が交代で番をして5日目のこと。なんと、工房の作業台に突っ伏して眠る八郎の背に、三津が寄り添うようにして寝ている! さらに目を覚ました三津は、八郎の寝顔を見つめ顔を寄せ、今まさに触れようとするその瞬間、奇跡的(いやドラマ的?)に八郎が目を開けた。

三津が八郎に寄り添う姿を目撃してしまった喜美子も、三津の行動を知った八郎も、その“事件”についてあえて触れなかった。八郎に至っては、三津が謝ろうとするのを遮るように振る舞う。それが2人の思い遣りだと理解したからこそ、三津は自ら、かわはら工房を去る決意をすることができたのだ。

登場当初、底抜けの明るさが「穏やかな作品の雰囲気とそぐわない」と言われていた黒島結菜の演技だが、八郎への想いに封をするように口数が少なくなり、心の葛藤を見事に表現した退場間際の演技とのギャップは、称賛に値する。

昨年公開された映画『カツベン!』でヒロインを演じた黒島結菜。主役級女優への道を着実に歩み始めている

わざと怒らせるかのように、「穴窯はもう古い」「こんなところで修行しても役に立たない」などと批判した三津を2人が諫めなかったのも、なんとなくわかる気がする。

結果はどうあれ、行き詰まっていた八郎と喜美子に、新しい風を吹き込んでくれた三津。三津の励ましがあったから、八郎は初心に帰ることができ、銀座の個展でも成果をあげた。そしてそんな八郎の姿を見て、喜美子も穴窯での新作制作に乗り出すことができた。

弟子が泥棒に入った時もできる限り穏便に済ませようとした2人らしく、三津の方便を聞き入れ、「陶芸続けるんやろ」と釉薬の配合を書いたノートを渡して送り出してくれた優しさに、三津もきっと「自分の行動は正しかった」と胸を張れる日がやってくるだろう。

「男ならよかった」

最後に三津がぽつりとつぶやいた言葉は、とても深い。「男なら」純粋に弟子として八郎の側に居ることができただろう。それ以前に、「男なら」かわはら工房ではない場所で、弟子入りできたかもしれない。でも、三津は女。真剣に八郎を愛することで、喜びとともに苦しさも知り、ひとつ大人になった。若さを武器に突っ走らず、人として理知的な行動をとったことは、ネットでも称賛されている。

三津の登場以来、ネットでは、喜美子のモデルとされている神山清子さんの夫が、女弟子と駆け落ちした事実から、「八郎と三津が不倫するのでは!?」と騒がれていた。しかしキスも未遂で終わり、本当に一迅の風が駆け抜けるように去って行った三津。奇しくも、東出・唐田不倫問題への批判が高まる今、朝ドラファンの想いを汲むかのように「不倫からの離婚」を回避していた脚本家・水橋文美江、そしてNHKに“先見の明”があったことに、感心するばかり。

しかし、穴窯を巡る喜美子と八郎の意見の対立が気になるところ。そして三津と同じく、喜美子も「男なら」という呪いに苦しむことになる。2人がどうなってしまうのか、引き続き『スカーレット』から目が離せない。

  • 取材・文中村美奈子

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