「アウトレットモール」集客と価格の秘密 御殿場、木更津、泉佐野

ブームから20年経っても衰えない客足、なぜ郊外のショッピングモールに人々は通うのか?

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
南町田グランベリーパークは駅もリニューアルして、昨年11月にオープン

御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県御殿場市)は今年、開業から20周年の節目を迎える。4月16日には第4期増設計画の新エリア「ヒルサイド」をオープンさせ、国内最大のアウトレットモールへと返り咲く。それに先立って、昨年12月15日には敷地内に温泉リゾートホテル「ホテル クラッド」と日帰り温泉施設「木の花の湯」がオープン。富士山を望む絶景と自家源泉の温泉がウリだ。アウトレットモールは、常に新しい施設に更新し続けることで、常連客の心をつなぎとめる。流通専門誌『販売革新』編集長の西岡克氏が解説する。

「御殿場プレミアム・アウトレットや、りんくうプレミアム・アウトレット(大阪府泉佐野市)が開業した『第一次アウトレットブーム』から20年が経っても集客力が衰えない理由は、買い物を楽しむ『非日常の空間』を作ってきたからです。噴水があったり、大きなフードコートがあったりして、消費者はリゾートの雰囲気を楽しむ非日常の時間消費型テーマパークのように利用しているのです」 

アウトレットとは、本来「はけ口」や「出口」といった意味の英語で、生産余剰品や過剰在庫をメーカーが格安で処分することを指していた。アウトレットモールで扱う商品は売れ残りだったため、当初は「安かろう悪かろう」というイメージがつきまとった。それを払拭したのが、御殿場プレミアム・アウトレットの開業だった。アウトレットモールに詳しいライターの木下千寿氏が言う。

「アウトレットモールはシーズン落ちの商品も並んでいるため、『宝探し』のような感覚でアイテムを探す楽しみがあります。特に御殿場プレミアム・アウトレットは、クロエやルブタン、プラダなど女性に人気の高いハイブランドがあるほか、男性に人気のザ・ノース・フェイスやディーゼルといったファッションブランドが充実しているので、若いカップルが遠出するデート先として選ぶのもうなずけます。家電のダイソンやデロンギ、ル・クルーゼやティファールといった調理器具など、多様なラインナップで様々な角度から楽しめる作りになっているのが、人気の秘密でしょう」

ベンツのアウトレット

高級ブランドでは、三井アウトレットパーク木更津(千葉県木更津市)も負けていない。日本でここにしかない、高級ドイツ車、メルセデス・ベンツのアウトレットがあるのだ。他にも有料でスタッフが車を駐車し、帰りは車寄せまで持ってきてくれる国内アウトレットモール初の「バレーパーキングサービス」(税込み1000円)も行っており、ラグジュアリーな雰囲気を楽しめる。

「アウトレットモールは郊外にあり、低層なので、周囲の風景と調和しやすいのが特徴です。駅前の百貨店やショッピングモールより『出かけた感』の強い写真が撮れるのも、若者に人気の理由でしょう。都心から木更津へアクアラインを通って行けば、突然、街が出現するような感覚に陥ります。都心から1時間足らずで味わえる『非日常』なのです」(建築エコノミストの森山高至氏)

イオンモールが運営するレイクタウンアウトレット(埼玉県越谷市)も館内はオープンエアで、四季折々の自然を感じることができる。ペットと一緒に食事や買い物を楽しむことも可能だ。

渋谷から急行で33分

昨年11月、南町田にオープンし、2ヵ月で来客数が400万人を突破したのが、グランベリーパーク(東京都町田市)だ。ここは元々アウトレットモール「グランベリーモール」があったが、町田市と東急電鉄が3年近くかけて商業施設や公園、住宅、駅を総合的に開発。旧・南町田駅を南町田グランベリーパーク駅に改称し、駅直結の巨大な街づくりを行った。渋谷駅から東急田園都市線の急行で33分と、都心からの近さも魅力的だ。

「安価でトレンドを楽しめるファッションブランドを中心に、キャロウェイなどゴルフウェアブランドや雑貨系も多く、小さな子供連れのファミリー層を意識しているのでしょう。モンベルの店舗には、クライミングを体験できるウォールやカヤックの試乗ができる池も併設されていて、アウトドア好きの心をくすぐります」(前出・木下氏)

地方の巨大なアウトレットモールもそれぞれ特徴的で面白い。米国のアウトレットモール事情に詳しいランドスケープアーキテクトの天野伸子氏がこう話す。

「アウトレットモールは米国が本場で、’80年代後半から流行りだしました。日本では’00年前後から作られ始め、米国のものと施設配置やランドスケープデザインもよく似ています。米国の歴史ある港町チャールストンをイメージしたりんくうプレミアム・アウトレットや、ジャズ発祥の地、米ニューオーリンズをモチーフにした三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島(三重県桑名市)などは、日本にいながらにして海外気分を味わえます。海外からの観光客も米国にいるような感覚で買い物を楽しめるでしょう」

りんくうプレミアム・アウトレットは関西国際空港と海を隔てた真正面に位置し、りんくうタウン駅から徒歩6分という立地が魅力だ。こちらも施設の充実が続き、今年夏には大阪湾を一望できる場所に第5期増設エリアのオープンを予定している。豪華なキャンプ施設を誘致してグランピングが可能になるなど、アウトドアアクティビティが楽しめる広大な芝生広場が登場するという。

三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島は、東海地区屈指のレジャー施設「ナガシマスパーランド」や「名古屋アンパンマンこどもミュージアム&パーク」に隣接していて、リゾート施設と一体になっている。

「アウトレットモールは買い物だけでなく、レジャー施設としての魅力も大きいですね。行楽に行きたいけど家族で旅行するほどの余裕がないときには、アウトレットモールがちょうどいい。近所のファミリーレストランで外食するくらいの金額で一日中楽しめるし、割引率の高いものを買えば、おトクな気分も味わえます」(前出・森山氏)

ショッピング機能だけでなく、エンターテインメント施設も充実させるのが、近年のアウトレットモールの特徴だ。

’18年4月にオープンしたジ アウトレット広島(広島県広島市)は、ナイキやアディダスなどの人気スポーツブランドのアウトレットだけでなく、通年でスケートを楽しめる「ワンダーリンク」を併設。VRゲームが体験できるアミューズメント施設「プラサカプコン」や、「イオンシネマ」などのエンターテインメント施設も充実している。

「ここはアウトレットではない、一般のショッピングモールフロアもあります。さらにフードコートには、瀬戸内・広島ならではのグルメもある。たんなるアウトレットモールに留まらない、意欲的なハイブリッド型商業施設と言えるでしょう」(前出・西岡氏)

変貌著しいアウトレットモールだが、これからはどうなっていくのだろうか。経済評論家の平野和之氏が語る。

「安い価格でブランド品を買えるのが魅力でしたが、今ではゾゾタウンやメルカリが登場し、アウトレットモールの圧倒的強みはなくなりつつあります。モノ消費からコト消費への流れを受け、アウトレットモールもレジャー施設として変貌を遂げているのです。御殿場プレミアム・アウトレットがその最先端で、ホテルや日帰り温泉を併設しました。さらに、国際会議場やスポーツ施設が施設内にできれば、買い物やレジャーという枠を超えて、統合型リゾート施設として発展していくでしょう」

一方、電車で行けるような都市部のアウトレットモールは、百貨店にとって脅威となりそうだ。

「都心の百貨店はアウトレットモールと比べれば価格は高いし、店内が狭いので子供を遊ばせられません。また店員の接客もアウトレットモールのほうが百貨店よりも淡白で、気楽に感じる人も多いでしょう。これまでショッピングの王者として君臨した百貨店は、その座をアウトレットモールに脅かされるようになるはずです」(前出・森山氏)

単なる安売りにこだわらず、常に変わり続けることが、アウトレットモールの「集客力の秘密」なのだ。

三井アウトレットパーク木更津は、高級ブランドのアウトレットも魅力的
御殿場プレミアム・アウトレットは富士山を望む絶景も楽しめる

最大で80%オフの商品も なぜ「アウトレット」は安く売れるのか

本来、アウトレットとは、売れ残りの在庫や不良品処分のための安売りだった。ところが、今では「アウトレットモール専売品」が開発されている。経済評論家の平野和之氏がこう話す。

「全国のアウトレットモールで販売できるほど商品が余ったら、そのメーカーは倒産してしまいます。ところが、アウトレット品は大量に売られている。それは、メーカーがアウトレットモールに安定的に供給できる安価な商品を開発したからです。こうした流れは、’08年のリーマンショック以降に強まっていきました。不況で消費者がアウトレット品しか買わなくなり、メーカーも在庫がない中で、割安品を出さざるを得なかったのです。

私はかつて、ブランド名は言えませんが、実際にアウトレット専売品の工場に行きました。そこで外国製の激安アパレル商品に大手ブランドのタグがつけられ、専売品になっていく様子を見て、驚いたこともあります」

安く作られたものがさらに売れ残ると、8割引きなどという考えられない値引きになるのだ。アウトレットモールで安く買い物ができる理由はこれだけではない。

「モール自体が大きな倉庫のようなものなので、ブランドが一つ撤退しても、次のブランドが内装費をかけずに出店できるのです。百貨店に出店するとなると、ブランドの世界観を演出するためにコストがかかりますが、アウトレットではその必要がありません」(建築エコノミストの森山高至氏)

コストカットの積み重ねが安さの秘密なのである。

アウトレットでの買い物は「お宝探し」感覚で楽しもう

『FRIDAY』2020年2月7日号より

  • 撮影結束武郎(御殿場・南町田) 中村將一(木更津)

Photo Gallary6

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事