「半身浴」が美容や健康にいい、というのは“幻”だった!

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残念! 半身浴に特筆すべきメリットはなかった

腰から下をお湯につかって1時間……、美容や健康にいいと信じられてきた「半身浴」。だが最近の研究で、肩までつかる「全身浴」のほうがはるかに美容にも健康にもいいことがわかってきた。今まで言われてきたことは都市伝説だったのか!? お風呂研究20年、温泉療法専門医の資格をもつ東京都市大学教授の早坂信哉氏に聞いた。 

 

半身浴が全身浴より、美容や健康にいいという科学的根拠はなかった。映画「スティーブ・バンク・ロバリー」より(写真:アフロ)

20年ほど前に、大流行した半身浴。今でも美容と健康のために半身浴を行っている人は多い。けれど、

「“半身浴ならでは”と、特筆すべき健康効果はありません。あらゆる点で、全身浴のほうがおすすめです」(早坂信哉氏 以下同) 

早坂氏によると、半身浴が大ブームになって以来、「半身浴はそんなにいいのか」と、その効果を実証すべく数々の研究が行われてきたという。その結果、体温の上がり方、血流の改善の具合など、入浴の効能といわれるすべての項目で全身浴のほうが勝っていることが実証されたのだ。

「入浴のいちばんの効果は温熱作用。体が温まることにより、血管が広がり、血流がよくなります。それによって、酸素や栄養分、ホルモン、免疫物質など、体に必要なものが体の隅々まで運ばれ、二酸化炭素や疲労物質、老化物質など不要なものが回収されるのです」 

そのためには、寒い時期なら40~41℃のお湯に肩までつかり、10~15分。これで体の深部体温が1℃上がり、血流の流れがよくなる。

「半身浴なら、倍の時間がかかります」 

 

NYのセントラルパーク動物園で全身浴を楽しんでいるニホンザル(写真:アフロ)

肌にとってマイナスなことも…。半身浴で長湯をすると、皮膚の乾燥が進む

でも、お風呂にゆっくりつかりたい長湯好きの人なら半身浴でもいいのではないだろうか。 

「そのような人は半身浴でもかまいませんが、注意しなければならないことがあります。長い時間湯船につかっていると、角質層に含まれる天然保湿成分のセラミドがお湯に流出し、肌が乾燥してしまいます」 

美容のためと思って半身浴をしているのに、逆に乾燥が進んでしまうとは! 半身浴の場合、つかっているのは下半身だから、すねが乾燥してしまう。寒い時期、すねに粉がふいたようになってしまうのは、長湯のせいかもしれない。

汗をダラダラ流しながら湯船につかっていると、いかにも体中から悪いものが出ているような気がするが…、

「前述したように、疲労物質や老化物質など体に不要なものは血流が回収して、腎臓や肝臓に届けられます。汗をかいているのは、十分に体が温まって血管が広がり、不要なものの回収が進められているというサインですが、発汗自体にデトックス効果はありません」

逆に、脱水症状になることも。さらに、

「入浴熱中症(のぼせ)になる可能性もあるので、汗を流し続けるような入浴方法はおすすめできません。ひたいや鼻の頭にうっすら汗をかいた状態は、深部体温が1℃上がったサインです。そうなったら、湯船から出たほうがいいでしょう」 

お風呂上りにおすすめの飲料は、ミネラル麦茶。ミネラルが含まれることで水分の吸収がよくなるのだとか。

「牛乳もおすすめです。牛乳に含まれているタンパク質も水分の吸収をよくし、脱水を回復させる作用があります。お風呂上りの牛乳、実はとても理にかなったことなのです」

中国のホテルでは、果物と野菜が入った火鍋型の温泉が人気!?(写真:ロイター/アフロ)

 

お風呂の汗は、脂肪が燃焼しているからではない! が、夕食 30分後の入浴はダイエット効果あり!?

汗をかくとダイエットに効果があるような気がするが、これも間違い。

「運動して汗をかくのは、脂肪が燃焼して体温が上がる結果です。けれど、入浴して汗をかくのは、お湯から熱が伝わり体温が上がるから。入浴後、体重が減っていたとしたら、汗として水分が出ただけです。お風呂上りに0.5㎏ほど体重が減っている場合は、脱水症状になっていることが考えられます。しっかり水分を取ってください」 

だが、入浴がまったくダイエットに効果がないかといえば、そうでもないらしい。

「入浴することで血糖値が下がるという研究結果が報告されています。血糖値は食後30分くらいで上がります。このタイミングで入浴すると、血糖値の上昇が抑えられて、ダイエット効果があると考えられます」

空腹時に入浴すると、気持ちが悪くなってしまうことがあるが、これは血糖値が下がるため。理想の入浴のタイミングは、一般的に消化吸収が落ち着いた夕食後1時間後といわれているが、ダイエット効果を求めるなら、夕食後30分くらいで入るのもいいかもしれない。

リラックス効果も、全身浴のほうが優れている

全身浴で最適なお湯の温度は、40~41℃(夏はもう少し低くてもかまわない)。これが42℃以上になると交感神経が優位になってしまい、リラックスできないという。

冷え性の人はどうだろう。

「確かに熱いお湯に入ると、体温は急激に上がります。けれど、急な体温上昇があると、体温を下げるために汗をたくさんかきます。その結果、入浴後の体の温まりが持続しません。

41℃と42℃のお湯につかったあとの皮膚の温度変化を比較したところ、41℃のお湯につかったほうが1時間後も体の温まりが保たれていました」 

入浴には浮力作用もある。 

「水中にいると重力から解放され、関節や筋肉への緊張がゆるみ心身の緊張がほぐれます。半身浴では、こうした浮力作用も半減してしまいます」

さまざまな効果がある全身浴。早坂氏のチームで1万4000人の高齢者を調査したところ、毎日湯船で入浴している人は、週2回までの入浴の人と比べて3年後に要介護になるリスクが29%も低かったという。

心臓や肺に疾患がある人は、半身浴のほうがいい場合もある。半身浴で長時間お湯に入っているほうがリラックスできるという人もいるだろう。ただ、半身浴の効果をあまり期待しないほうがよさそうだ。

早坂信哉 温泉療法専門医。東京都市大学人間科学部教授。生活習慣としての入浴を医学的に研究する第一人者。著書に「たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法」(KADOKAWA)、「入浴検定公式テキスト」(日本入浴協会)、「最高の入浴法」(大和書房)など。

  • 取材・文中川いづみ

Photo Gallary3

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