甲子園秘話 吉田輝星投手「注目された方がテンションが上がる」 | FRIDAYデジタル

甲子園秘話 吉田輝星投手「注目された方がテンションが上がる」

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準決勝で日大三高に勝利した後、宿舎で「侍ポーズ」を決める吉田。この時点で、749球を投げ切っていた

その瞬間、甲子園球場全体が地響きのような拍手と歓声に包まれた。

8月21日の大阪桐蔭戦、1回裏が始まると同時に、金足農業・吉田輝星(こうせい)投手(17)が「侍ポーズ」を披露した。侍が刀を抜くときの動作を彼が決めると(上写真)、観客は大興奮。だが、彼にとって”ルーティン”であるこのポーズを取ることは、準決勝前に「非礼だ」と大会本部から禁止されていたのだ。

「吉田君は禁止令を出されても知らんぷり。純朴で天真爛漫な性格の子ですから、おそらく『悪ふざけをしたら注意された』くらいに捉えていたのでしょう」(ノンフィクションライター・神田憲行氏)

だが、その態度が球審の不興を買ったのかもしれない。1回裏、5番打者・根尾昂(あきら)(18)を相手に投げた外角いっぱいのストレートは、ストライクに見えたもののボール判定。これを境に一気に調子を崩した吉田は、暴投によって3点を失い、試合の流れが大阪桐蔭に傾いてしまったのだ。野球は一球の判定で試合の流れが大きく変わるもの。”大会ナンバーワンピッチャー”とはいえ、まだ17歳の高校生。球審の辛い判定で、投球に狂いが出たとしても不思議ではない。

吉田の人気ぶりを見て思い出すのは、’07年に「がばい旋風」を巻き起こした佐賀北高校だ。金足農業と同じ公立校ながら次々と強豪校を倒し、大会制覇を果たした。佐賀北の場合は、観客も球審も一体となって選手を応援していた空気があり、微妙な判定はすべて佐賀北寄りだった。今回も同様の展開が予想されたが、吉田の”図太さ”により、審判を味方につけることができなかったのだろう。

だが、長所と短所は表裏一体。金足農業を決勝に導いたのもまた、吉田の”図太さ”なのである。

「準決勝前の囲み取材でも、彼は大人の記者相手に緊張せず堂々としていました。本来、野球とは無関係なはずの金足農業の子ブタの話を振られたときも、気さくに『嬉しいです』と返してその場を和(なご)ませていたくらいです。この、神経質さとは無縁な性格のおかげで普段通りのプレーができ、結果として準決勝で勝利できたのかもしれません」(前出・神田氏)

甲子園大会開幕直後から吉田に取材をしてきた記者も、こう証言する。

「吉田フィーバーが起こる前から決勝が終わった現在まで、彼の淡々とした印象はまったく変わっていません。もともと『人気者になりたい』、『注目されたほうがテンションが上がり良いピッチングができる』とあっけらかんと話していた彼ですから、注目を浴びるようになっても、動じるどころかむしろ喜んでいます」

決勝5回で12失点を喫しノックアウトされ、打川和輝(18)と交代した際も、吉田はメンタルの強さを見せた。

「ピッチャーを交代されライトについたとき、吉田君が一人で『侍ポーズ』をやっているように見えたんです。しょげるどころか、禁止されていたポーズを再びやってしまうほど、本人は気を強く持っていました。決勝前に、『身を打ち砕いてでも大阪桐蔭に勝ちたい』と言っていただけあり、落ち込んでいる場合ではないと判断したのでしょう」(前出・神田氏)

そんな吉田だが、今回は大阪桐蔭に惨敗。彼は試合後、「桐蔭打線には歯が立たなかった」と泣き崩れた。

だが落ち込むことはない。彼の投手としての才能は、すでに球界から注目を浴びている。実際、甲子園決勝後に発表された、第12回U18アジア野球選手権大会のメンバーにも、名を連ねているのだ。

甲子園の決勝戦では涙を吞んだ吉田。だが彼の才能は、間違いなくプロでも通用するレベルだ。今後、さらに大きな舞台でますます強くなった姿を見せてくれることだろう。

8月21日、対大阪桐蔭戦。吉田が「侍ポーズ」を披露した途端、ドッと観客がどよめいた

試合後に大阪桐蔭と金足農業の選手が健闘を称え合う場面で、吉田は号泣した

本誌未掲載カット

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撮影:霜越春樹

 

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