レトロ感満載! 昭和ワンダーランド「タカセ洋菓子店」の秘密 | FRIDAYデジタル

レトロ感満載! 昭和ワンダーランド「タカセ洋菓子店」の秘密

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あの尾崎豊も食べていた!? 「ずっと変わらないで欲しい!」ファンを魅了し続ける創業100年老舗の魅力とは

池袋東口真ん前にデンと構えるレトロな「タカセ洋菓子店」。皆さん、「地価いくらなんだろう…」とか下世話なこと考えていませんか? 

それはいいとしてこの「タカセ」、いつ行っても混んでいます。入れ替わり立ち替わりパンやケーキを買っていく人々。店内の動線が混乱してもはやカオス。東京人タカセ好きすぎだろ! とツッコミたくなります。

自社ビルの1階がパンと洋菓子、2階が喫茶、3階がレストラン、9階がコーヒーラウンジ。他のテナントが肩身狭そうです
自社ビルの1階がパンと洋菓子、2階が喫茶、3階がレストラン、9階がコーヒーラウンジ。他のテナントが肩身狭そうです

かくいう私も、東京に住んでいた頃は月2回ほど通うヘビーユーザーでした。ちょうど自宅のあった浅草行きの都バス「草10」が目の前のバス停から出ていたので、タカセでパン買うのに迷いすぎてよくバス1本見送っていました。

しかしタカセってこんなに存在感ハンパないのに、あまりメディアに露出していません。店が古風すぎて「メディアに出る」ということに慣れていないのか? それとも東京のメディア関係者はタカセの存在に慣れすぎて、空気みたいに思ってしまっているのか?

と疑問に思ったので、取材を申し込んでみました。

しかも、私が指定した日はクリスマス直前の土日。今までの経験上、ケーキ屋にこの日取材したいって言ったらブチ切れられます。なのに、タカセの常務・森弘樹さんは取材を許諾してくださいました。神!! (正確には日程変更を希望されましたが、地方から東京に行くのがこの日しかないんですよ! と無理強いしました)

日本の食品サンプル文化の象徴のようなショーウインドウですね
日本の食品サンプル文化の象徴のようなショーウインドウですね

森さんは古風なタカセの常務とは思えないほどビジネスパーソンな雰囲気です(失礼)。「森さんの写真撮っていいですか?」と聞くと、「えっ、Yahoo!ニュースとかに載るんですよね! 勘弁してください」と拒否されました。

現社長は三代目で、タカセは森さんの曽祖父である森茂吉さんが1920年(大正9年)に創業したそう。

って、えっ! 苗字タカセじゃねえの!?

と激しく動揺しましたら、「森氏が香川県三豊市の高瀬町出身だったからタカセ」なのだと教えてくれました。なんと、タカセには高瀬さんという名の人などいないのですね。

で、最初はあんパンの店として始まったそうで、のちに「森永ベルトラインストアー」(森永の菓子を販売する日本初期フランチャイズで、昭和12年には4400軒もあったらしい)の名前で営業していました。

当時珍しかったあんパンは爆発的にヒットし、昭和10年に4階建ての自社ビルを建て、喫茶や洋菓子も始めたのですが、戦争で全て焼失し、昭和26年ごろに再建。昭和37年に「タカセ洋菓子店」として法人化し、現在の9 階建てビルに改築したのは昭和53年。そこから現在まで変わらない佇まいです。

まだ4階建てだったタカセ。昭和30年頃撮影(推定)
まだ4階建てだったタカセ。昭和30年頃撮影(推定)

店舗は他に、南池袋店、板橋店、巣鴨店もあります。実は池袋本店の真裏にも「別館」があるってご存知でしたか?

別館のコーヒーサロンは比較的空いているので、穴場かも!
別館のコーヒーサロンは比較的空いているので、穴場かも!

私ったら恥ずかしながら巣鴨店と板橋店しか把握していませんでした。タカセのファンと名乗れませんね。

パンは板橋店で焼いて全店に運んでいます。パンが運ばれてくると店内が一層カオスになります
パンは板橋店で焼いて全店に運んでいます。パンが運ばれてくると店内が一層カオスになります

で、話を伺ったらタカセ愛がますます深まってきて、多分とりとめもない文章になりそうなので、要点をまとめてみました。

タカセのここが好き① パンが安い。カロリーとか気にしていない

商品が最も多いのは12時〜13時。いつも夜に行くのでスカスカなのですが、こんなにパンが並んでいるタカセ、初めて見ました!
商品が最も多いのは12時〜13時。いつも夜に行くのでスカスカなのですが、こんなにパンが並んでいるタカセ、初めて見ました!

タカセの魅力といえばまず安くてボリュームのあるパン。70~80種ある商品の中から、一部を紹介します。

「カジノ」380円。写真ではわかりませんが、小さい枕ぐらいのサイズ感です。フルーツ入りのホイップクリームとカスタードクリームが挟まれ、さらにシュガーコーティングまで。

4つに切れています。1切れで菓子パン1個分くらいの満足感
4つに切れています。1切れで菓子パン1個分くらいの満足感
スイートブレッド。この大きさで180円ですよ! やや甘い生地で、「昔のパン!」って感じの味
スイートブレッド。この大きさで180円ですよ! やや甘い生地で、「昔のパン!」って感じの味
ハーフで150円。あんバタトーストにすると美味しいですよ
ハーフで150円。あんバタトーストにすると美味しいですよ

こんなに緑色のパンをしれっと売る店ってあんまりないと思うんですが、固定ファンがいるんでしょうね。

「ファンタジークリーム」。タカセの中では高価な部類に入る250円ですが、想像以上にでかくて重いです。フルーツ入りクリームが詰め込まれています
「ファンタジークリーム」。タカセの中では高価な部類に入る250円ですが、想像以上にでかくて重いです。フルーツ入りクリームが詰め込まれています

 

笑えるぐらいでっかいサンドイッチ「ジャンボミックス」240円。単品だと大きさが伝わりませんね。

隣のロールサンドとの差を見たらデカさが分かると思います。ちなみに森さんは「僕はちょっとこれ1個はキツいですね…」とヒヨっていましたが、私はぺろっと食べましたよ。

フルーツドーナツ、あんみつドーナツ150円。あんこは自家製です
フルーツドーナツ、あんみつドーナツ150円。あんこは自家製です

まー、なんという狼藉でしょう! 揚げパンに生クリームとフルーツ、あんこと求肥餅を挟んだカロリーモンスターなパンたち!

見た目の可愛さだけでこれ作ってるんだろ〜と思ったら、これも固定ファンの多い商品だそう。タカセのパンってこう、「子供の頃からの夢」をカロリーとか気にせずそのまま形にしちゃってるんだと思います。だから買うときにタブーを犯しているような背徳感とワクワク感があるんでしょうね。

 

この「ハンバーガー」も、わざとでしょ! ってぐらい古典的です。こんなフォント見たことない。欲しい
この「ハンバーガー」も、わざとでしょ! ってぐらい古典的です。こんなフォント見たことない。欲しい

…と、このまま行くと延々とパンを紹介する恐れがあるので、話題を変えます。

タカセのここが好き② 洋菓子もメルヘンチック

人気はイチゴショート。この日はクリスマス仕様になっていました
人気はイチゴショート。この日はクリスマス仕様になっていました

洋菓子もクラシカルなビジュアルです。多分この30年間ぐらい、「ティラミス」とか「エッグタルト」とか「バスチー」とか周りが騒いでいても、素知らぬ顔でこのスタイルで生き抜いてきたんだろうな。潔い。

 

18個入り1200円。たま〜に、激レアな「アーモンドチュイルの切れ端」が売られることも。カップにいっぱい入って700円でした
18個入り1200円。たま〜に、激レアな「アーモンドチュイルの切れ端」が売られることも。カップにいっぱい入って700円でした

そして! 私が大好きなのがこの「アーモンドチュイル」です。いわゆるフロランタンのようですが、真ん中にあんずのジャムをサンドしてあり、さほど硬くはありません。

東京在住時代、よく北海道の母にこれを贈っていました。私って親孝行ですね!

 

クッキーも「今って本当に令和なのか」と疑いたくなる様相です。600円…安い…
クッキーも「今って本当に令和なのか」と疑いたくなる様相です。600円…安い…
ロールケーキ、と思ったら「ロールカステラ」。バタークリーム入りの「プラソネロール」が昭和な味!
ロールケーキ、と思ったら「ロールカステラ」。バタークリーム入りの「プラソネロール」が昭和な味!

どれも、見た目だけでなく味もレトロということがポイント。このご時世、キラキラしたケーキはよくありますが、「今はやりの商品を追求するよりも、いつまでも愛される商品を作りたい。昔のまま変わらず、安定して提供でき、安心感があること。それがタカセの良さだと思っていただければ」と森さん。なるほど! できれば永遠にこのビジュアルのままでいてほしいです。

タカセのここが好き③ 喫茶室が超穴場

で、喫茶・レストラン部門ももれなくレトロです。まず9階のコーヒーラウンジ。他で見たことのないような円形デザインの自動ドアが、「ゴイイイン」というあまり他で聞かない音を立てて迎えてくれます。

9階は落ち着いた雰囲気。どっこも混んでいる池袋界隈で、このゆとりは貴重

見てくださいこの池袋駅ビュー! 夜景も綺麗です
見てくださいこの池袋駅ビュー! 夜景も綺麗です

実は2階の喫茶室と9階のコーヒーラウンジは、メニューがほんのすこしだけ違うのです。2階にしかない「モンブランパフェ」、9階にしかない「モカパフェ」「プリンアラモード」など。あ、2階はモーニングもあります。

プリンアラモード720円。「卵の味がしっかりする硬めのプリンと、バニラアイスに生クリーム。「プリンアラモード選手権」でもあったら、100点付けたいぐらいです

タカセのここが好き⑤ サンプルを信じるな

この取材で一つだけ失敗しました。それは、森さんに「3階レストランのオススメ料理は何ですか?」と聞いたところ「断然ハンバーグですね!」と言われたにもかかわらず、「じゃあフレンチピラフで!」と反発してしまったことです。森さん、「何なのだこの人」と思ったに違いありません。だって、事前にチェックしたハンバーグのサンプルが、これなんですよ↓

微妙ですよねえ。なので、ネーミングだけで気になった「フレンチピラフ」を頼んだわけです。しかも、ミニハンバーグ、ソーセージ、チキンカツがついているので一番おトクじゃん! と思ってしまったわけですよ。

そして運ばれてきたフレンチピラフ。顔ですね。これも十分なインパクトです。

笑ってる…! ちょっとホラー!
笑ってる…! ちょっとホラー!

 

ハンバーグにナイフを当てただけで、ジャー! と音を立てそうなほど、肉汁が溢れました。

やはり隣近所を見てみると、もれなく頼んでいるのはハンバーグ。「えっ、このお婆ちゃん、まさか大盛頼んだ?」と思うほど巨大なハンバーグが鉄板でジュウジュウ言いながら運ばれて来ていました。

これにライスorパン、サラダが付きます。ちなみに巣鴨店はパン食べ放題!
これにライスorパン、サラダが付きます。ちなみに巣鴨店はパン食べ放題!

追加でハンバーグ単品頼めばよかった…。もちろんフレンチピラフも、大変美味しいです。ピラフはバターがしっかり効いていて、せん切りのニンジン、タマネギがシャキシャキと楽しい食感。ハンバーグは牛と豚の合挽きで、塊肉を仕入れて食感を残すよう荒くひき、手で丸めているそうです。

どうでもいいけどあのサンプル、実物通りに作り直すか、横に実物の写真も置いた方が良いと思います。ってサンプルの意味ないですが…。

 

3階レストラン。白状すると、利用は初めてです。昼時は行列ができているので断念していました
3階レストラン。白状すると、利用は初めてです。昼時は行列ができているので断念していました

タカセのここが好き⑥ 店員がフレンドリー

皆さんもお気づきかもしれませんが、タカセの店員さんは非常に礼儀正しいです。

白いタキシードをピシッと決めています
白いタキシードをピシッと決めています

取材日もエレベーターに乗ろうとしたら「寒いところを、どうぞ、いらっしゃいませ」と声をかけてくれました。また、ドアの写真を(勝手に)撮っていましたら「お写真をお撮りいただき、ありがとうございます」とお礼を言われました。牽制されたのかと思いましたが、多分そうではないでしょう。

また、常連さんも多いようで、取材時は80代ぐらいのご老人と親しげに話していました。「今日は早いね。どうしたの?」(店員)「来ちゃったの」(客)。タメ口なのでかなり昔からの常連なのでしょうね。微笑ましいです。

タカセのここが好き⑦ 働きやすそう

しかしタカセの不思議な商品たち、一体どうやって開発されているのかと聞きましたら、定期的にミーティングをして、良い提案は実現させるのだとか。2階と9階でメニューが違うのも、「店長がやりたいと言ったから」。けっこう自由なスタイルなんですね。

本文で触れ忘れましたが、包装紙は東郷青児によるデザインで、店内にも絵が飾られています
本文で触れ忘れましたが、包装紙は東郷青児によるデザインで、店内にも絵が飾られています

そして、勤続10〜20年以上の社員が多いそうです。「働く方にはできるだけ長く勤めて欲しい。20代の若手から、40・50代のベテランさんまで幅広く活躍して、誰でも長く安定して働ける環境かと思います」とのこと。

しかも賄いは1食100円でまかない専門スタッフが作った料理が食べられるそうです。商品も自社割で買えるとか。

えー。転職すっかな! ってこんな人材絶対いらないと思いますが。

以上、回し者のようにタカセのいいところを挙げまくってきましたが、まだまだ言い足りないこともあります。尾崎豊の父親が板橋店のケーキを幼い息子のために買っていたとか、夏に出てくる「ラムネぱん」の話とか…。

 

ラムネぱん110円。最初見た時は何かの間違いかと思いましたが、着色した白あんと、こしあん、生クリームが相まってなかなかイケる
ラムネぱん110円。最初見た時は何かの間違いかと思いましたが、着色した白あんと、こしあん、生クリームが相まってなかなかイケる

ねっ。ますますタカセワールドにハマるでしょ。万が一、タカセが「レトロを脱出してスタイリッシュ目指します!」とか言い始めたら全力で反対運動しましょうね。

タカセを知らない人は、まずハンバーグを食べてみてください。私も食べたい。

タカセ洋菓子店(池袋本店) 住所:東京都豊島区東池袋1-1-4/電話:03-3971-0211 (代表)/営業時間:1階8:00~22:00 2階9:00~22:00(LO21:30) 3階・9階11:00~22:00(LO21:00) 別館7:30~20:30(LO20:15)/定休日:無休

  • 取材・文・写真猫田しげる

    1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。2019年4月から拠点を札幌に移動し、ウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。

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