農協は要らない!? メルカリが農家と消費者を繋ぐ「流通革命」 | FRIDAYデジタル

農協は要らない!? メルカリが農家と消費者を繋ぐ「流通革命」

市場では値がつかない “キズ物”も売れる。テストマーケティングにも適した新たな販売のプラットフォーム

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メルカリで農作物を販売している宮原さん。メルカリ5周年の際に、フォロワー数ナンバーワンであると公式発表された
メルカリで農作物を販売している宮原さん。メルカリ5周年の際に、フォロワー数ナンバーワンであると公式発表された

佐賀県武雄市で「ミヤハラ農園」を経営する宮原龍磨(りゅうま)氏(31)が言う。

「3年前からメルカリで野菜や果物を売るようになり、開始3ヵ月ほどで、メルカリの月商は100万円を超えました。いまや、メルカリ内でのフォロワー数は出品者全体のナンバーワンです」

いま、フリマアプリ「メルカリ」を舞台に、農家の間で「流通革命」が起きているのをご存知だろうか。メルカリといえば、ユーザー同士でモノの売り買いを楽しめるアプリだが、そこに自分の畑で丹念に育てた野菜や果物を出品する農家が急増。購入者からも、「安くて美味しい」と評判を呼んでいるのだ。

いったい何が起きているのか。前出の宮原氏は話す。

「多くの農家は農協(JA)に出荷するのが普通で、農作物の卸しや販売は業者に任せています。すると、農協、卸売業者、仲卸業者、スーパーなどの小売業者が売買を仲介し、販売価格の半分近くの中間マージンがとられる。しかしメルカリで販売すれば、必要経費は販売手数料と送料あわせて2割ほどまでに抑えられます」

また、味に問題はなくても見た目が悪いため市場では売れない『キズ物』を販売できるのもメルカリのメリットだ。従来の売り方では廃棄するしかなかった『キズ物』ミカンを1㎏1000円で販売し、一日に70セット売る農家もいるという。

作った農作物はすべて農協に卸す――インターネットの発達により個人間での取引が容易になったことで、いままでの農業界の常識が崩壊。手数料が浮いたぶん利益が増えることに気づいた農家が、メルカリでの出品へと舵(かじ)を切り始めたわけだ。

農家の間でメルカリが流行っているのは儲かるからだけではない。その手軽さも人気の理由だ。静岡産業大学で農業政策を専門とする堀川知廣教授が解説する。

「農作物のネット販売は、いままでも楽天市場などで行われていた。しかしメルカリはその手軽さにおいて、従来の販売プラットフォームとは大きく異なります。たとえば、メルカリの登録料金はタダのため、登録へのハードルは非常に低い。一方、楽天市場は高額な月額料金を払わないと出店を継続できません。年中作物を出荷している大規模農家であればいいのですが、特定の季節しか作物が穫れない零細農家にとっては、莫大な出費です」

また、梱包・搬出・配送などの煩雑な業務をすべてやってくれる「大型らくらくメルカリ便」といったサービスがあるのもメルカリの強みだ。これらの手軽さによって、多くの人が農作物のネット販売に乗り出している。

「メルカリでの農作物販売はテストマーケティングに最適です。『新品種を開発したから売れるかチェックしたい』、『農業に興味があるから試しに始めてみたい』といった人々が、ノーリスクで出品できるからです。このトレンドがより大きくなると、農作物の配送方法が洗練され、いずれはメルカリなどのプラットフォーマーが農協と同じ役割を果たすようになると考えられます」(堀川教授)

農家にとっては良い事ずくめのようにも思えるが、課題がないわけではない。農テラス代表取締役で、農業コンサルタントの山下弘幸氏が語る。

「品質保証の面では、ネット販売はまだまだ課題を残しています。鮮度は保たれているのか、生産地情報に噓偽りはないのかなどをチェックする機能がないことが理由です。たとえば、使用不可の化学農薬を使っていることをあえて記載しない出品者もいます。消費者が安易に飛びつくような表記を用いているのです。この点においては、農作物の品質管理にノウハウと信頼のある農協の役割は失われていません」

メルカリは食品の出品時に消費期限と食品表示が確認できる画像の掲載を義務づけるなどのルールづくりも進めており、今後、農作物の安全保証が強化される可能性はある。山下氏が続ける。

「農協を通さない農作物が増えるのは間違いないでしょう。生産者の顔や名前が可視化され、どういった農作物なのかではなく、誰が作った農作物なのかが重要視されるようになる。農家個人にファンがつく時代がやってきます」

メルカリの存在が、日本の農業に大革命を起こそうとしているようだ。

メルカリの山田進太郎社長もアプリで野菜を売る農家に注目しており、過去には自身のフェイスブックで紹介したことも
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メルカリで「野菜詰め合わせ」と検索した際のスマホ画面。各々の農家が独自のセットを考案している
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『FRIDAY』2020年2月14日号より

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