進化する吉高由里子!“恋愛”から“お仕事”へ 視聴者層の変化

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『わたし、定時で帰ります。』(19年4月期~)のロケを終えた吉高由里子。本誌記者の目の前を寄り添うように美少年と歩いて人気和食店へ

今や“お仕事ドラマの女王”と呼ばれる吉高由里子

25歳でNHKの連続テレビ小説『花子とアン』の主役に抜擢されて以降、民放連続ドラマの主役が常連となった。この冬クールの『知らなくていいコト』(日本テレビ)は、4本目にあたる。

ドラマの視聴率はいずれも10%前後と安定しているが、決して華々しい数字ではない。それでも視聴者層は拡大と変化をみせている。吉高は女優として、着実に進化を続けていると言えよう。

では視聴者層はどう変わっているのか、データで分析してみた。

吉高由里子 主役4ドラマの視聴率

期間平均が22.6%と、それまでの23作を抜く高視聴率を記録した『花子とアン』。そのヒロインを務め、スターダムの階段を上り始めた吉高由里子は、ここ4年連続で民放連続ドラマの主役を務めている。

過去3作は、28歳の時の『東京タラレバ娘』(17年冬・日本テレビ)、29歳『正義のセ』(18年春・日テレ)、30歳『わたし、定時で帰ります。』(19年春・TBS)。

ビデオリサーチが測定する世帯視聴率は、11.4%→9.8%→9.7%と来て、今回は4話までで9.4%となっている。必ずしも大ヒットとは言えないが、いずれも話題作として視聴者の記憶に残る佳作だ。

世帯視聴率だけで見ると、4作は右肩下がりの傾向にある。
ただしスイッチ・メディア・ラボ(SML)が関東2000世帯・5000人をサンプルに調べる個人視聴率では、“恋愛モノ”だった『東京タラレバ娘』より、その後の“お仕事ドラマ”3作の方が数字は高い(図1)。

吉高由里子 4ドラマの視聴率(図1)

“恋愛モノ”の『東京タラレバ娘』は、世帯が高い割に個人が低かった
若年層が一人で視聴するケースが多かったということだ。「こうしてい“たら”・・・」「ああす“れば”・・・」とマゴマゴしているうちに30歳となってしまったアラサー女の話。実家暮らしの若年女子も、親とは一緒に見辛かったのだろう。

恋愛は過去の話で関心が薄れてしまったのか、親世代の個人視聴率は低かった。

視聴者層の変化

ところが“お仕事ドラマ”となると、視聴者層は変わり始めた。

仕事と恋に奮闘する女性検事が主人公となった『正義のセ』では、F1(女20~34歳)やF2(女35~49歳)の数字が下がった。
代わりに3-層(男女50~64歳)は微増、3+層(男女65歳以上)が急増した。仕事の要素が増えた分、年配者には興味深いドラマとなったようだ(図2)。

吉高由里子 4ドラマの視聴率(図2)

そして次の『わたし、定時で帰ります。』で、吉高由里子の“お仕事ドラマ”は一つの到達点を迎える。

「働き方改革」が注目される中、「残業をせず、定時で帰る」ワーキングガールが主人公となった。その働き方が職場で様々な軋轢を生むが、「何のために働くのか?」と問い、「自分を大切にすること」さらには「仲間を大切にすること」との間での葛藤を描いたため、幅広い層の視聴者の心を揺さぶった。

F1・F2も、そして50歳以上の男女にもよく見られた。
世帯視聴率は二桁に届かなかったが、視聴者のバランスが極めて良いドラマとなった。

スクープ ゲットまでの醍醐味

そして今回は、スクープを連発する週刊誌の敏腕記者・真壁ケイトを吉高は演ずる。
女手一つで育ててくれた母・杏南(秋吉久美子)が急死し、父・乃十阿徹(小林薫)が殺人犯だったことが判明する。この親子関係の謎解明を全体の縦軸に、毎回スクープをゲットしていく、難題解決型お仕事ドラマだ。

例えば初回、結婚詐欺にあっている老女を、常識的に「騙されている!」と切り捨てるのではなく、「アイラブユーをお金で買う」ラブストーリーとして、人の心を打つ記事に仕上げる。
盲目的に邁進する老女の信頼を勝ち得て行くプロセスは、硬軟取り混ぜたアプローチの賜物で、女性記者ならではの仕事といえよう。

2話はDNA婚活。
結婚相談所の協力を得て、婚活の現場を取材。そこでカップルが成立しなかった男に着目し、実はDNA相性最低の彼女がいて、結婚に躊躇していることを突き止める。記事は「DNA相性に頼り過ぎず、信じても信じなくても良し」というテイストに結実する。
発売後、相談所は「話が違う」とクレームを入れて来たが、記事により興味を抱いた読者からの予約が殺到。事なきを得た。メディアではよくある、意外な読者・視聴者の受け止めの問題だ。

4話は、難関医学部の小論文を3年連続で当てたカリスマ塾講師の話。
実は医学部長から情報が漏れているのだが、ケイトの取材によりルートが浮かび上がる。その仮説を、編集部メンバーの連携プレイで、決定的な瞬間を映像におさめる。
さらに関係者全員を同時に直撃インタビューし、カリスマ講師・予備校校長・医学部長・文科省大学教育局長の癒着構造が実証される。

週刊誌のスクープ記事はどう作られているのか。
動物的な直感、緩急取り混ぜたアプローチ、壁にぶつかった際のしなやかで強かな対応、編集部メンバーの絶妙なチームワーク。そして何より編集長(佐々木蔵之介)の、取材に対するアクセルとブレーキを踏み分ける判断力が絶品だ。
舞台裏の迫力という意味では、今作はお仕事ドラマの白眉と言えよう。

仕事は面白いもの!?

ところが視聴率としては、今のところ4作の中で一番低い。
性年齢別の個人視聴率でみても、ほとんどの層で『わたし、定時で帰ります。』に及んでいない。

お仕事ドラマとして、仕事をしている人々の中で見られ方をみても、正規職員(一般職)や管理職(部長級)の間では、前作が最も見られていた(図3)。
やはり「働き方改革」ど真ん中を描いた『わたし、定時で帰ります』の威力は抜群だったことがわかる。

吉高由里子 4ドラマの視聴率(図3)

それでもパート・アルバイトをする人々の間では、『知らなくていいコト』は前作に負けず劣らず見られている。週刊誌のスクープという切り口が、血沸き肉躍る世界のためかも知れない。
仕事の真ん中にいる正規職員や部長たちは、「現実はそんなに上手くいかない」と覚めているのだろう。ところが仕事の周辺を担っているパート・アルバイトの人々には、面白い仕事への憧れが、視聴につながっているようだ。

実は今作は、未婚女性にも支持されている。
殺人犯のレッテルを張られた父を持つことがわかり、今カレは結婚を白紙に戻し、元カレはそれを承知の上でプロポーズしていたことがわかる。
バリバリ仕事をしながら、プライベートで揺れる主人公のあり方に、共感しているのだろう。

その意味で今作は、未婚で仕事をもっと面白がりたい人々に刺さるドラマと言えよう。
恋愛ドラマから、お仕事ドラマ、しかも社会派に振ったかと思いきや、仕事とプライベートのバランスへと回帰している。
こうした良い本に出会い、吉高由里子はどんどん進化を遂げているようだ。
これから後半にかけてどんな展開をみせ、視聴者の心をどう動かしていくのか、楽しみにしたい。

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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