ヨーロッパで広がる「飛び恥」と日本人はどう向き合うべきか? | FRIDAYデジタル

ヨーロッパで広がる「飛び恥」と日本人はどう向き合うべきか?

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昨年末、ヨーロッパを中心に世界で「飛び恥」が大きな話題となった。「あ、恋ダンスの?」という声が聞こえてきそうだが、もう一度よく見て欲しい。「逃げ恥」ではなく「飛び恥」だ。一言で言うと「環境問題を考えるなら、CO2排出量の多い飛行機ではなく、鉄道を利用すべき」と訴えかける運動なのだが、果たしてこの日本でも今後、「逃げ恥」ほどのブームになるのか?

ヨーロッパでは「飛び恥」ムーブメントの広がりで、鉄道利用が飛躍的に伸びたという 写真:アフロ
ヨーロッパでは「飛び恥」ムーブメントの広がりで、鉄道利用が飛躍的に伸びたという 写真:アフロ

2019年9月23日、ニューヨークで開催された『国連気候行動サミット』でのスピーチが話題となり、名前を無断で商業利用する輩も現れたため、先頃名前を商標登録したという17歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏。彼女の母国であるスウェーデン発祥のムーブメントと言われる「飛び恥」の原語は「Flygskam」といい、スウェーデン語で「飛行恥」「飛び恥」という意味になる。

これは二酸化炭素排出量の多い航空機ではなく、鉄道を使うことで環境に配慮しようという運動だ。世界の航空会社全体で排出する二酸化炭素の量は、すべての二酸化炭素排出量の約2%を占めるとも言われているため、理に叶っていると言えよう。

また、オランダのフラッグ・キャリアである「KLMオランダ航空」は窓口に来た客に鉄道利用を薦め、その場で鉄道のチケットを買えるようにすると発表した。実際に環境意識の高いヨーロッパでは、航空利用を控える人たちも現れ出しているが……日本でこの動きは定着するのだろうか。

昨年末、COP25参加のため船でポルトガル入りした後、鉄道でスペインに向かった環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏 写真:アフロ
昨年末、COP25参加のため船でポルトガル入りした後、鉄道でスペインに向かった環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏 写真:アフロ

「日本は新幹線を含めた鉄道網が発達しているので、すでに鉄道利用を積極的に行っているといっていいでしょう。アメリカやヨーロッパは国土が広い割に高速鉄道が限られているので、どうしても飛行機での移動がメインになってしまう。この件に限っていえば、日本は“環境先進国”と言えるかもしれません」

そう話すのは、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏だ。年間100フライト以上に搭乗し、約18年以上航空業界を取材し続けてきた彼からしても、今回のグレタ氏の演説が航空会社に与えたインパクトは大きいという。

「各航空会社が、エネルギーやCO2の問題も含めて、環境問題対策に本腰を入れる必要があると再認識したと思います。もちろん今までもエコ燃料の研究やCO2排出量の少ないエンジン開発などに取り組んできましたが、それらを機体に導入していくスピードをさらに加速せねばと思ったはずです」(航空・旅行アナリスト鳥海高太朗氏 以下同)

しかし狭い島国である日本で、「飛行機利用=悪」と決めつけてしまうのは早計過ぎるという。ここで改めて飛行機のメリットを考えてみよう。

1 移動時間が新幹線より短い

「これは当たり前過ぎる理由ですね。新幹線で数時間かかる距離でも、飛行機では1時間ほどで移動することができます。ビジネスマンが日帰り出張できるのは飛行機があるからこそですし、それによって日本経済が成り立っているとも言えるでしょう」

2 地方経済活性化に役立つ

「グレタさんに言わせると、環境と経済を比較して経済を優先するのはナンセンスなのかもしれませんが、手軽に地方に行くことができる飛行機があることで、地方経済が成立しているのは明らかです。

例えば外国人観光客が北海道に行きたいとしましょう。自国から何時間もかけて羽田に到着し、そこから荷物を持って東京駅まで移動し、札幌まで新幹線と在来線を乗り継いで約8時間……移動だけで1日、下手したら2日かかってしまいます。一方、飛行機を使えば、羽田―札幌間はたったの1時間半。その手軽さが観光客にとっては魅力ですよね」

3 災害に強く、大きな貨物を運べる

「新潟県中越地震の際、線路に障害があって運行できなかった新幹線の代わりに、緊急物資輸送や人員輸送に飛行機が大いに役立ったことがありました。昨年10月、台風19号の影響により長野県長野市の車両基地が水没し、北陸新幹線10編成すべてが廃車になったことも記憶に新しいでしょう。このように地面を走る新幹線は、意外と天候に弱いというデメリットがあります。飛行機も大雪や台風などの天候に左右されることがありますが、天候が回復すればすぐに離着陸できるメリットがある。やはり空の上を飛んでいるのは強いです」

4 早割などの割引制度、マイレージ制度などがある

「海外の鉄道会社は積極的に早割を取り入れていますが、日本ではあまりありません。その点ではさまざまな方法で割引しており、マイレージも貯められる航空券のほうが、交通費を抑えることができます」

5 ドリンク、無料Wi-Fi、映像や音楽等の各種サービスがある

「これらは鉄道会社も積極的に取り入れようとしていると思いますが、どうしても後発感が否めません。飛行機ならではのメリットとして、これらを挙げる人も多いでしょう」

では日本人は、この問題とどう向き合うべきなのか。

「飛行機と新幹線が“共存”する日本では、両方を上手く併用する形がベストです。近距離であれば、飛行機よりも新幹線を積極的に使う人が今後増えるかも知れませんが、新幹線や飛行機を頻度高く使う人はそう多くないはず。それよりも、自家用車をハイブリッドに換えるなど、日常生活で頻繁に使うものを換えていくほうが、環境保護には効果的だと思います」

最後に鳥海氏に質問を投げかけてみた。「今後も飛行機を積極的に利用しますか?」

「ここでYESと答えるとバッシングを受けそうですが、やはり答えはYES。各社がいかに企業努力し、いかに飛行機の性能が上がっているかを間近で見てきているので、飛行機が悪であるとは言い切れないのです。世間の声に流されず、さまざまな情報を集め、理解した上で自分はどうするかを決めて欲しい。

『飛行機を利用する人は、環境問題について何も考えていない人だ』と決めつけ、『飛行機利用者から環境税をとれ!』というような極端な意見が出てきてしまうのが恐ろしいですね」

  • 取材・文周防美佳

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