感染しても症状ナシ!? 新型コロナウイルス感染者は身近にいる
外務省医務官としてSARS(重症急性呼吸器症候群)に対処した経験を持つ関西福祉大学教授の勝田吉彰氏が話す。
「今回の新型コロナウイルスについて我々が危惧しているのは、一人で10人以上に感染を拡げてしまう『スーパースプレッダー』の出現です。’03年のSARS大流行の際にも、その存在が複数確認されています。なぜスーパースプレッダーが出現するのか、そのメカニズムはまだ解明できていませんが、’15年には韓国でMERS(中東呼吸器症候群)が大流行した原因にもなりました。危機管理の原則として、今回もスーパースプレッダーが出るという最悪のケースを前提に対応する必要があります」
ウイルスを爆発的に拡散させるスーパースプレッダー。それがついに日本にも現れたのか――。1月28日、厚生労働省は中国・武漢への渡航歴のない60代の日本人男性が新型コロナウイルスに感染したことを明らかにした。男性は奈良県在住のバス運転手で、今年1月に2度、武漢から来た中国人観光客をツアー客として乗せていた。日本国内において、ヒトからヒトへの感染が確認されたのは初めてのことである。
「恐ろしいのは、感染源と見られる中国人観光客と、感染した日本人男性が潜伏期間中に自覚なくウイルスを拡げていた可能性があることです。今回のコロナウイルスは潜伏期間が最短1日、最長で14日あると中国当局が発表しており、発熱していない状態でも他人に感染するため、すでに感染者となっている人がたくさんいるかもしれない。厚労省は男性の家族や医療従事者を濃厚接触者として18人ピックアップしており、彼らの状態を注視しています」(全国紙厚労省担当記者)
昨年末、初めてWHO(世界保健機関)に発生が報告された新型コロナウイルス。感染の拡大は、’03年のSARSのときと比べて圧倒的に早い。長崎大学・熱帯医学研究所教授の山本太郎氏は話す。
「中国人の海外進出が進んだことで、日本を始めとした外国に来る機会が多くなったことも一因です。実際、SARSが流行った頃と比べて、日本に来る中国人は20倍以上も増加していますから。今後、ヒトからヒトへ感染していく過程で、ウイルスが感染力の高いものに変異すると、大流行につながる可能性もあります」
中国政府による封じ込めが功を奏すれば、今回の流行は春までに収束すると見られている。しかし、目に見える流行が収まっても、再び感染拡大が起こる危険性もあるという。
「7月から始まる東京オリンピックでは警戒が必要です。大勢の人が特定の期間に1ヵ所に集まることを『マスギャザリング』と言うのですが、群衆を媒介して感染症が広がったことは歴史的に何度もある。最近では米カリフォルニアのディズニーランドから『はしか』が全米に拡がったという例もありますし、メッカの巡礼で侵襲性髄膜炎が流行したこともありました」(前出・勝田氏)
今回の新型肺炎には、いまだ有効なワクチンや治療法が発見されていない。感染はいったい、どこまで拡がるのか――。
『FRIDAY』2020年2月14日号より
- 撮影:蓮尾真司
- 写真:時事通信社