神戸製鋼ダン・カーター「ラグビー界の至宝が語る引退説への自論」

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試合後ファンの声援にこたえるダン・カーター。神戸製鋼に所属し2シーズン目になる

昨年のラグビーW杯の成功を受け日本国内にラグビーへの関心が集まる中、満を持して1月12日に開幕した、国内最高峰リーグのトップリーグ(TL)。どの会場も例年を上回るファンを集め、活況を呈している。

2月1、2日にシーズン第4節を終えた時点で、1月18日に豊田スタジアムで行われたトヨタ自動車対パナソニック戦で、TL史上最多の3万7050人を記録。平均観客動員数は1万1132人に上り、昨シーズンの5471人(カッププール戦及び順位決定トーナメント戦を除く)からほぼ倍増している状況だ。

W杯終了後に日本代表選手たちのメディア露出度が非常に高かったこともファン獲得の一助になっているのは確実で、最多の日本代表6人を擁するパナソニックを筆頭に、代表選手が所属するチームは、いずれも集客が順調に推移しているようだ。

昨シーズンのTL覇者の神戸製鋼も、間違いなくそんな人気チームの1つだ。W杯で全試合に出場した山中亮平選手、ラファエレ・ティモシー選手、中島イシレリ選手ら4選手が所属。さらに同じくW杯でオールブラックス(ニュージーランド代表)の一員だったブロディ・レタリック選手も新加入するなど、注目を集める存在になっている。

チーム自体もパナソニック、リーチ・マイケル選手所属の東芝とともに開幕4連勝を飾り、TL連覇に向け素晴らしいスタートを切っている。特にシーズン第4節のNTTドコモ戦(2月2日)では、TL史上最多得点差、97対0という歴史的大勝を飾るなど、圧倒的な強さを見せつけている。

そんな人気、実力ともTLトップクラスのチームの中で、地元ファンたちから代表選手たちに勝るとも劣らない支持を集めている選手がいるのをご存じだろうか。昨シーズンからチームに加わっているダン・カーター選手(37)だ。

このカーターこそ、2015年のW杯後に代表活動から引退を表明したため昨年のW杯には出場していなかったものの、すでに世界中にその名を轟かせているラグビー界の至宝ともいえる選手だ。

オールブラックスでの代表活動12年間で、112キャップを数えるとともに、代表チーム史上最多の1508得点を記録。ワールドラグビーの年間最優秀選手に3度(2005、2012、2015年)選出されるなど、サッカー界でいえば、現在のリオネル・メッシ選手やクリスチアーノ・ロナウド選手に匹敵する存在といっていい。

彼のポジションは、ラグビーの司令塔といわれるスタンドオフ。状況に応じて華麗なパスとキックを使い分ける変幻自在のプレーは、世界中のファンを魅了し続けてきた。特にプレースキックの精度は世界屈指といわれ、どんな位置からもフィールドゴールを決められる得点力を有する。

昨シーズンのカーターは126得点(公式戦及び順位決定トーナメント戦を含む)を記録し、2位に32得点差をつけて堂々のTL1位に輝くとともに、リーグMVPを獲得。2003年を最後にリーグ制覇から遠ざかっていたチームが、昨シーズンは全勝(1分けを含む)でリーグ制覇できたのも、カーター選手の加入があったからといっていい。今シーズンもここまで全4試合に先発出場し56得点を記録しリーグ1位を走っており、昨シーズン同様その存在感を示し続けている。

「とにかくラグビーが好きなんだ」

ニュージーランド出身のカーター。NTTドコモのディフェンスを巧みなステップとランで突破する

今シーズンも最高のスタートを切ったチームだが、現在の自身の状態を含めカーター自身はどう受け止めているのだろうか。本人を直撃した。

「良いスタートだとは思うが、個人的にはチームも、自分自身のパフォーマンスももっと良くなっていくと思っている。特に自分は、この12ヵ月間ラグビーをしてこなかった状態でシーズン開幕に臨んだ。シーズンを通じてトレーニングしながら状態を上げていき、しっかりフィールド上で結果を残していきたい」

W杯の関係でTL開幕が遅れたことで、カーターの休養期間も長くなってしまった。本人の言葉通りまだ本調子といえる状態ではなく、今後さらに好プレーが期待できそうだ。チーム練習でも1人残ってキック練習を黙々と続けるなど、調整に余念が無い。

ところでカーターは神戸製鋼と2年契約に合意しており、今シーズンが契約最終年ということになる。3月に38歳を迎えるベテランだけに、現役引退が確実に近づいているのは間違いない。今シーズンが日本でプレーを見られる最後のチャンスになる可能性もある。

だがカーター自身は、今もラグビーに対する情熱を失っていない。

「とにかくラグビーが好きなんだ。昨シーズンもチームと一緒に目標に向かって何かを達成するということが、自分にとってプレーを続ける上での大きなモチベーションになった。

それと自分が30代前半でいいプレーができなかった時に周りから引退すべきだと言われたりした時も、その状況を楽しんでいた。他の選手たちを勇気づけるために、少しでも長くいいプレーを続けようという義務感を味わっていた。

多少将来のプランは変わってきているが、今もできる限り長くラグビーを続け人々を勇気づけたいという思いはある」

そうなると、カーターが来シーズンもTLに残ってくれるかが、我々にとって最大の関心事になってくるところだが……。

「今はシーズン途中であり、シーズンに集中しているし、チームのためにいいパフォーマンスをしてシーズンを乗り切ることだけを考えている。

シーズンが終わったら家族と話し合いながら今後について決めていくことになると思うが、今は自分のラグビーを満喫したい」

いずれにせよ、カーターのプレーを日本で見られること自体、幸運なことこの上ない。ぜひ会場に足を運んで「世界の至宝」のプレーを目に焼き付いて欲しい。

ポジションはスタンドオフ。身長178cm、体重96kgとラガーマンにしては決して恵まれた体格ではない
チームメイトと勝利を喜ぶ。6歳からラグビーを始めた
試合後ファンからのサインの要求に丁寧に答える。愛称はDCで日本での生活にもなじんでいる
  • 取材・文・撮影菊地慶剛

    1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂英雄投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始める。20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技を取材。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、近畿大学で教壇に立ちスポーツについて論じている。

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