「花園」ではベスト8敗退 京都成章高校が新チームで目指す栄冠

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突進する京都成章の選手たち(青と黄色ジャージー)。1月19日の近畿大会府予選決勝、合同チーム戦で

172-0。奪ったトライは26。完封もつけた。

京都成章は圧倒的な強さを見せる。

1月19日、同志社国際など9校からなる合同チームを一蹴。予選Aブロック決勝を制し、2月の近畿大会出場を決めた。

「公式戦での最多得点やと思います」

監督の湯浅泰正は淡々と話す。この4月で就任33年目。青と黄色のジャージーを一代で全国屈指の強豪に育て上げた。

合同戦は新チームとして初の公式戦だった。

「けが人を除いた現状でのベストですね」

湯浅は、力がかなり劣る相手にもメンバーを落とさない。昨年の正選手だった2年生6人のうち、5人が出場した。

交替可能な8人を使い切った後半は101点。前半に30を上乗せした点数が、選手たちの手抜きのなさを証明する。

「今日のテーマは、突破後のサポートの枚数でしたが、できていたと思います」

楕円球の周囲には人がわく。守備側に的を絞らせず、前後半60分でほぼ2分に1本のトライを記録した。湯浅には満足感が漂った。

チームは半月ほど前、大きなショックを受けた。この日、その影響は感じさせなかった。

年末年始、京都成章は99回目の全国大会に出場した。優勝候補筆頭であるAシード3校のひとつとしてである。

超高校級のフォワードだった。平均身長と体重は182センチ、100キロ。先の大学選手権で優勝した早大は181センチ、102キロ。ほぼ同じサイズ。チームの高校日本代表候補6人はすべて前8人の中にいた。

ボールを獲得し、勝敗を決めるフォワードに人材を配しながら、京都成章は1月3日の8強戦で敗退する。常翔学園に24-27。ラストワンプレーで逆転トライを奪われた。

「あのフォワードを持ってしてね…」

湯浅の表情は一瞬くもった。

残りのAシード2校、桐蔭学園と御所実は順調に決勝に進む。そして、桐蔭学園が23-14のスコアで2回目の優勝を決めた。

8強敗退の理由を湯浅は語る。

「自己の判断と決断を伸ばしてやれなかったことですね」

後半24分、24-20と再逆転する。直後のキックオフでボールを奪われてしまう。

ボール確保の責任を担うロックが、蹴り込みを警戒して下がっていた。常翔学園は試合再開のキックを手前に落とす。競った上での再確保を考えていた。

「こちらで指示できなかったことがすべてなのですが、ただ、選手たちが自分たちの判断で前に上がってくれていれば…」

キックオフボールを取り、大会随一のフォワードで突破を繰り返しながら、残り5分を消費する。その思惑は現実化しなかった。

常翔学園戦のはるか前、湯浅は理想とする高校生を見ている。主将として桐蔭学園を初の単独優勝に導いた伊藤大祐である。

昨年4月の選抜大会4強戦で、優勝する桐蔭学園に20-21で敗れた。常翔学園戦と同じラストワンプレーで、スタンドオフの伊藤にライン裏へのショートパントを上げられ、トライにされた。

「エリアを取るキックはない。ポゼッションをとってくる。そう思いました。だからフルバックをラインに上げさせました」

試合再開の位置はハーフライン付近。地域よりもボール保持を優先して、攻撃回数を重ねて攻めてくる。そう読んだ。

ところが、伊藤は湯浅の上を行く。カバーがきかないライン裏へ短い蹴り。京都成章の守備陣形から最終プレーを選ぶ。

「高校生に負けました。彼には判断と決断があった。しびれる最後の場面での選択。そしてそれを遂行する勇気がありました」

京都成章の全国大会出場は6年連続12回。最高位は3回の4強だ。まだ見ぬ決勝戦進出、そして頂点に立つためには、施しているきめ細かい指導以外に必要なものがある。それを湯浅は「判断と決断」と考える。

2つの苦い経験から、湯浅は全国8強敗退後にできた新チームには、主将を置かず、11人のリーダーを定め、日替わりでリーダーシップを持たせるようにしている。

合同戦はロックの堤保澄(つつみ・ほずみ)が志願してゲームキャプテンをつとめた。全国大会では30人の登録メンバーに入らなかった。湯浅の目じりは下がる。

「おっ、ええやん、となりました。リーダーに手を挙げてくれる子がいるのはシンプルにうれしいですね」

昨年からスクラムハーフのレギュラーになった宮尾昌典もリーダーのひとりだ。

「みんなが前に立って、リーダーの気持ちを話す、言うことを言う、それが今以上の自主性を持ってきてくれそうな感じはします」

16校参加の71回近畿大会は2月15日に開幕する。京都成章は1回戦で兵庫・報徳学園と対戦(山城総合運動公園球技場B、12時25分キックオフ)。5位までに入れば、3月の21回全国選抜大会の出場権を手にする。宮尾は言う。

「去年、優勝しているので、連覇になるのですが、そういうことを考えず、今年の一番を目指すという気持ちで臨みたいです」

昨年は決勝で東海大大阪仰星を33-12で退け、近畿王者の称号を手にした。

湯浅の最終的な目標は決まっている。

「去年の全国大会ベストエイトを超える」

その位置にたどり着くまでの戦いにおいて、選手たちに「判断と決断」をつけさせたい。その時間はたっぷりとある。

  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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