【応急処置法】ペットが窒息!あなたが救うパートナーの生命 | FRIDAYデジタル

【応急処置法】ペットが窒息!あなたが救うパートナーの生命

大切なのは飼い主の事前の備えだが〜飼い主ができるペットの救命方法を考える〜

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写真:アフロ
写真:アフロ

全国犬猫飼育実態調査(2019年度)によると、日本にはペットとして犬は879万7000頭、猫は977万8000頭いるという。その数だけを見てもペットは”人間の良きパートナー”といえるだろう。しかし、その良きパートナーの生命をあなたが奪ってしまう可能性があることを認識しているだろうか。実際にそういった事故が多発しているという。

埼玉県に住む50代の女性は、トイプードルのおやつにと、市販されている馬のアキレス腱を加工したおやつを与えた。おいしそうにそうに噛んで、すっかり小さくなったおやつを飲み込んだ様子を見て、彼女はその場を一旦離れた。しかし数分後、ケージに戻ってくると、飼い犬は苦しそうに嘔吐をしてぐったりとヨダレを垂らしていた。動転した女性は急いで動物病院に駆け込んだものの、治療の甲斐なく窒息により亡くなってしまった。

このように、「良かれと思って与えたペットのお菓子、また家庭内にあるさまざまなものが誤飲につながる事故が少なくない」と、一般社団法人日本防災教育訓練センターの代表でペットセーバーのサニー カミヤさんは語る。

実際、アニコム損害保険株式会社が行ったペット保険契約者対象の調査によると、ペットとの暮らしの中で「ヒヤリ・ハットを含む怪我や事故の経験がある」と答えたのは、調査の約9割となり、うち約3割の人々が「大ケガ・事故を含む経験がある」と答えているという。さらに詳しく調査を行うと、ケガや事故は“家庭内”でも多発していることがわかってきた。

ペットの事故と聞くと交通事故を真っ先にイメージするでしょうが、実は家庭内のほうがよりリスクが潜んでいることを認識してほしい」とカミヤさんは語ります。

「おやつの誤飲は、最近よく耳にする事故です。犬用ガムやジャーキーは、よく咀嚼しているようで、実はある程度小さくなったら犬は飲み込んでしまいます。これがノドにつまり、水分を含んで膨張し食道を塞いでしまい、食道閉塞になったり、気道を圧迫して呼吸困難を起こします。おやつやオモチャなどの誤飲以外にも、ソファや階段からの落下による骨折、台所やリビングでの落下物によるケガなど、家族とペットが安心できる場所こそ見直しをすることが大切です」

飼い主が未然に事故を防ぐことの重要性は理解した。それでも事故が起きてしまった時、飼い主は一体何ができるのだろうか? 少しでも命をつなぐため、病院へつれて行く前に対応できる応急処置法を詳しく教えてもらった。

<ペットの意識がない時>

※以下に紹介する手技は実際の動物をモデルに行うと、健康被害が起きる可能性もあるため、ぬいぐるみをモデルに行っています。

① 反応の確認
ペットに声をかけ、表情や尻尾の反応、また外見をチェックして、無呼吸・無反応など、普通の状態かどうかを判断してから、タクシーなど安全な搬送手段を迅速に手配する。かかりつけの動物病院、もしくは直近で診察を受けた病院へ電話をし、カルテ番号と状態を伝える。こうすることで病院側も緊急受入準備ができるため、救命率は上がる可能性が高い。

② 胸部圧迫あるいは胸骨圧迫
意識が確認できない時は一刻を争う。すぐに犬・猫を横に寝かせ(短頭犬は仰向けで胸骨圧迫)前足の付け根部分にある心臓が施術者の中心になるように座る。

「後ろ足の付け根部分にある大動脈に触れて脈を確認」
「軽くアゴを上げて気道確保&呼吸の確認」
「目で胸の動きの確認」

以上3つを素早く確認する。約6秒の間にそれらの動きがない場合は胸部圧迫を開始する。

施術者は肘を伸ばしたまま1分間に100回のペースで、体幅の1/2から1/3程度心臓を30(約20秒で30回)圧迫。その後、ペットの口を閉じて気道確保し、口対鼻(子犬や短頭犬種、猫は鼻と口両方)の人工呼吸をペットの肺の大きさ(大きさは呼気を吹き込んだ際の胸の上がり具合で確認。普段、ペットが寝ているときの胸の上がり幅程度が適当な呼気の量)に合わせて1秒かけて呼気吹き込みを2回行う。この流れを搬送中、獣医師に引き渡すまで、可能な限り、繰り返し行う。

心臓へ十分な圧力がかかるよう、ためらわずに行うこと。
心臓へ十分な圧力がかかるよう、ためらわずに行うこと。

③ 人工呼吸
ペットの舌を犬歯の後ろにずらし、口の脇に出して、両手でペットの口を塞ぐ。胸の上がり方を確認しながら、ペットの鼻から肺の大きさに応じた呼気を吹き込む。

空気を入れすぎると胃の内容物が逆流する。胸が少し膨らむくらいが適度な呼気の量だ
空気を入れすぎると胃の内容物が逆流する。胸が少し膨らむくらいが適度な呼気の量だ

<異物を飲み込んで苦しんでいる>

① どこに物が詰まっているかを確認
② 気道に詰まっている場合は犬の大きさによって以下の手技を行う。
小型・中型犬、猫の場合「背部叩打法」⇒
飼い主の手を後ろから前足と後ろ足の間から手を入れ、アゴを手のひらで支え、ペットの口を確認しながら肩甲骨の間を手のひらの腹の部分で叩く。

アゴを押えた際に顔を上向きにすると吐き出せなくなる。腕は床につけ、頭部が下になるようにする。
アゴを押えた際に顔を上向きにすると吐き出せなくなる。腕は床につけ、頭部が下になるようにする。

大型犬の場合「ハイムリック法」⇒
犬のお尻と自分の腹を密着させ、片方の手のひらをグーにして腹部を強く圧迫させる。

動物の体が施術者に密着していないため、正しく腹部に圧力がかからず、異物を出すことができない姿勢
動物の体が施術者に密着していないため、正しく腹部に圧力がかからず、異物を出すことができない姿勢

いずれの手技もペットのいざという時に役立つので、知識として身につけておきたい。しかし実は何より大切なのは「飼い主の事前準備」だとサニーカミヤさんは語る。

「意識を失ったペットを前に飼い主は平常心を保つことはできません。緊急時にすぐ対応できるように、予め、かかりつけの動物病院、または最寄りの夜間・緊急動物病院の電話番号と住所、ペットの体重、使用中の薬の有無、これまでの病歴、カルテ番号などをメモし、携帯に保存しておきましょう。

そして、ペットを病院まで運ぶ手立ても想定しておきましょう。緊急時に自分で運転するのは危険です。ペット運搬が可能なタクシー会社を2ヵ所以上把握しておきましょう。その際にペットの同乗条件を聞いておくことが大切です。

そして何より、施術をする飼い主の安全確保が一番です。いずれの手技を行う場合も、必ず感染予防の手袋をつけてください。また必要であればマズル(口輪)もつけましょう。自分の安全が確保できて初めてペットの命を守ることができます」

家族の一員であるペット。自分の知識が足りなかったことで命を落としてしまった時の後悔は計り知れない。前述した女性も「病院に行くまで、ただ抱っこをしているだけで、何もしてあげられなかった。私に知識があればあの子の命はつながっていたのかもしれない」と語る。ペットと幸せに生きるひとつの手立てとして、救える命を助けるための救命法を知ることは必要だろう。

サニー カミヤ:プロフィール

元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際救急援助隊所属。元ニューヨーク州救急隊員。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人 ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人 ピーズウィンズ レスキューアドバイザー、防衛省 消防防災技術指導員など。

構成:SUPERMIX
取材・文:知野美紀子(SUPERMIX)

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