惜しくも無冠 S・ヨハンソンは演技力×アクションで順風満帆
アカデミー賞初ノミネートにして、史上12人目のダブルノミネートと、大きな話題を集めたものの、今年はあまりにもライバルが強すぎた。
スカーレット・ヨハンソンは、『マリッジ・ストーリー』で主演女優賞、『ジョジョ・ラビット』で助演女優賞にノミネートされながら、惜しくもオスカーを逃した。アカデミー賞初ノミネートにして、史上12人目のダブルノミネートと、大きな話題を集めたものの、今年はあまりにもライバルが強すぎた。
スカヨハは『アイアンマン2』(2010年)以降、ほぼ年に一度のペースでアメコミ映画のクロスオーバーシリーズ“マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)”に、ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ役で出演を続けている。
そのせいか、近年はすっかりアクション女優のイメージだが、そういえば彼女はインディペンデント作品をはじめ、ソフィア・コッポラやウディ・アレンのようなクセのある映画監督の作品でキャリアを重ねた女優だった。
生々しい現実世界を描いた『マリッジ・ストーリー』で夫役のアダム・ドライバーとヒリヒリするような夫婦喧嘩を緻密に演じたかと思えば、トンマな脳内ヒトラーが登場する奇想天外かつヒューマンな作品『ジョジョ・ラビット』では、チャーミングかつ大胆不敵なママに扮すしている。
アクションもシリアスもコメディもなんでもござれで、バランス良くそういった役柄にキャスティングされ続けている女優は、なかなかいない。
そんな芸達者なスカヨハだけに、オスカー初受賞を期待したファンは多かった。ダブルノミネートということで、「どちらかは獲るのでは?」と期待していたファンもいたはずだ。
結局、主演女優賞は『ジュディ 虹の彼方に』のレネー・ゼルウィガーが受賞、助演女優賞は『マリッジ・ストーリー』で共演したローラ・ダーンが助演女優賞が獲得し、スカヨハのオスカーはお預けとなった。
さて、スカヨハの次回作は、今年5月1日に日米で同時公開される『ブラック・ウィドウ』だ。
MCUシリーズの総決算は昨年公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』だが、『ブラック・ウィドウ』はその補完的ストーリーで、時系列でいえば2016年公開の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の直後にあたるという。
「10年演じた役と離れるのはさみしい」と語り、最後のつもりで『~エンドゲーム』を演じていたというスカヨハだけに、単独主演作の制作はかなり喜ばしいものだったらしい。
シリーズは大物俳優たちがひしめくヒーロー映画とあって、
「10年前はこんな形でナターシャ役を演じられるとは思ってもいなかった」
と心境を語っている。昨年の5月に撮影がスタートし、今や制作は佳境を迎えていると伝えられている。芸歴26年にして演技のコンディションが最高レベルに達しているスカヨハだけに、史上最強のナターシャを観ることができそうだ。
大予算のエンタメも、高い演技力が求められるドラマ系でもスカヨハの活躍は続く。今年は逃したが、オスカーを手にする日も遠くはないだろう。
- 文:原西香
(はら あきか)海外セレブ情報誌を10年ほど編集・執筆。休刊後、フリーランスライターとして、セレブまわりなどを執筆中