小中学生へわいせつ行為を繰り返した 英会話教室の極悪外国人教師

平成を振り返る ノンフィクションライター・小野一光「凶悪事件」の現場から 第41回

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英会話や気功の教室を開いていた長いひげの外国人。近所の人からサンタクロース先生と呼ばれていた男は少女にわいせつな行為を繰り返す「鬼畜」だった。2010年に明らかになったおぞましい犯行はいかにして行われたのか。ノンフィクション・ライター小野一光氏が犯人をよく知る人物へ取材を重ねて浮かび上がった犯罪者の素顔とは。

ひげを長く伸ばしていたことから、近所ではサンタクロース先生と呼ばれていた

福岡県福岡市で英会話教室を経営する米国人の男が、自宅に小中学生を連れ込み、わいせつな行為を繰り返したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕され、同罪で起訴されたとの情報を得たのは、2010年3月のこと。

犯人のランプ・アラン・ニール(逮捕時69)がこれまでに重ねてきた犯行について、福岡県警担当記者が説明する。

「長年にわたり英会話や気功の教室を開いていたランプは、これまでに確認されただけで40人以上の女児の裸を撮影。600本以上のビデオを残していました。それらのうち被害申告が取れた犯行当時9歳の少女A、11歳の少女BとC、12歳の少女D、13歳の少女Eの5人に対するわいせつ行為で立件されました。いずれも性行為をともなっており、最年少のAに対しては、性行為の様子を撮影までしています。私の知る捜査員はランプについて“鬼畜”という表現を使っていて、それくらい許せない犯行だと憤りを隠せない様子でした」

なお、後にランプは強姦罪(当時=現:強制性交罪)でも起訴されており、最終的には03年6月から09年4月にかけて9~16歳だった教え子15人に暴行したり、わいせつな行為をさせてビデオ撮影するなどしたとして、起訴されている。

その手口は極めて悪辣なものだ。前出の記者は続ける。

「ランプは”勉強会”と称して、児童たちを自宅に連れて来ていたようです。そこで、『きっと将来の役に立つから、先生の言う通りにして』と、女児の体を触ったり、性行為に及んでおり、ときには撮影もしていました。そして行為の後には『このことを話せば、先生も親も捕まる。だから絶対に話してはいけない』と児童に釘を刺しており、被害者のほとんどが、『親に迷惑がかかると思い、抵抗できなかった』と答えています」

ランプが住むのは竹やぶに囲まれた2階建ての一軒家で、彼は逮捕の30年以上前からそこでひとり暮らしをしていた。日本語の会話は流暢だが、読み書きはあまり得意ではないという彼は、10数年前から制服姿の女児を車に乗せて自宅に出入りしていた。また、家の近所で女子生徒と買い物をしたり、家の前の林で女児を撮影する姿が近所の住民に目撃されている。身長が180㎝近くあり、体格も良いランプは、不審に思った住民から女児を連れてなにをしているのか問われると、「私は彼女の英会話教室の先生。親も知っているし大丈夫ね」と答えていたという。

彼が経営する英会話教室では、英会話の授業とは別に、気功や催眠術と称してセミナーを行っており、気功の施術を受けてランプを信頼した親が、彼の元に娘を行かせたりすることもあったようだ。

ランプと長年にわたって気功を通じて知り合いだったというAさんは、私の取材に次のように答えている。

「彼と最初に出会ったのは1987年のこと。古くから付き合いのある人物が、福岡でとある超能力者の実演会をすることになっていて、私はその人物に会うために会場に行っていました。その会場のロビーで、私が気功の実演をしていたところ、『すみません、あなたいま、何してたんですか?』と尋ねてきたのがランプでした。私がそこで気功だと答えたところ、『すみません、もう少し教えてください』と言われ、付き合いが始まったのです」

最初に会ったときから、ランプはAさんに対して、「自分にも同じような能力があり、人の体に手をかざすと、相手が気持ちよくなり、体が楽になったと言われる」と話していた。

「あと、『手をかざすことで悪い部分がわかる』とも言ってました。ただ、ランプは気功という言葉よりも、『チャクラを調整する』という言葉を使っていました。やがて、彼にそういう能力があるという噂が口コミで広がり、見てもらいたいという人が、どんどん彼の元を訪ねるようになったんです。それで、88年になると、英会話教室が夕方に終わってから、教室で『チャクラの調整』を行うようになりました。たしか水曜日には瞑想教室を、土曜日には『チャクラの調整』をやっていましたが、土曜日になると、教室の前にずらっと人が並んでいるんです。ひとり10分程度なんですが、多いときは午後7時から深夜1時くらいまでやっていました」

被害にあった女児は40人以上にものぼる。

チャクラとはヨガなどで使用される「エネルギーの出入口」を意味する概念のこと。ランプによる『チャクラの調整』は、相手を立たせ、その横や前後から手をかざし、その手を動かして気を送り、人体に数箇所あるチャクラを調整するというものだった。その効果については定かではないが、90年に中国・北京で中国人気功師たちと交流した際には、北京にある某医院の老師が、ランプの気功の実力を認めるなどしていたとAさんは語る。

「私がランプと最後に会ったのは10年くらい前で、いまは年賀状のやり取りだけです。今回の事件のことは全然知りませんでしたが、それまで、彼からそうした裏の部分を感じることがなかっただけに、大きなショックを受けています」

逮捕後のランプの供述について、別の福岡県警担当記者は明かす。

「ランプは『(わいせつ行為は)女児にせがまれたのでやった』と口にし、みずからが繰り返してきた犯罪行為について、『(被害女児の)親もわかってくれるはず。許してくれると思う』と嘯くなど、反省の様子はまったくありません。また、『撮影は女児が大人になった時、成長記録として見せてやるつもりだった』と説明しているそうです」

当然ながら、そうした空疎な言い訳が裁判で通じるはずもなく、11年3月に福岡地裁でランプに対して懲役18年(求刑懲役20年)の判決が言い渡されている。

被告側は「被告の行為は教育の一環だった」と、控訴審で争う姿勢を見せたが、福岡高裁は11年9月に、「教え子の心身に重大な悪影響を与えたのは明らかで、教育の一環とみる余地はまったくない」として控訴を棄却。12年1月に最高裁が被告側の上告を棄却したしたことで、一審判決通りの懲役刑が確定したのだった。

  • 取材・文小野一光

    1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。アフガン内戦や東日本大震災、さまざまな事件現場で取材を行う。主な著書に『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(文春文庫)、『全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと』(小学館)、『人殺しの論理 凶悪殺人犯へのインタビュー』 (幻冬舎新書)、『連続殺人犯』(文春文庫)ほか。最新刊は『震災風俗嬢』(集英社文庫)

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