戸田恵梨香が脚本家と衝突 朝ドラ『スカーレット』に足りないもの | FRIDAYデジタル

戸田恵梨香が脚本家と衝突 朝ドラ『スカーレット』に足りないもの

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関係者らとともに高級寿司店で食事を楽しんだあろ、ガレット店へとハシゴした戸田恵梨香。スマートフォンを片手にご機嫌だった(’19年)
関係者らとともに高級寿司店で食事を楽しんだあろ、ガレット店へとハシゴした戸田恵梨香。スマートフォンを片手にご機嫌だった(’19年)

2月5日の朝ドラ『スカーレット』(NHK)を観て虚脱感に襲われたのは、私だけなのだろうか――。

6度の失敗にもくじけず、共に夢を追いかけて来た夫を失っても、2週間穴窯を焚き続け、ついに”信楽自然釉”を甦らせた主人公・喜美子(戸田恵梨香)。彼女と共に、成功の余韻にすら浸ることもできない。このやるせなさを、一体誰にぶつけたら良いのか。

「朝ドラ『スカーレット』は、焼き物の故郷・信楽を舞台に女性陶芸家のパイオニア川原喜美子の波乱に満ちた生涯を描いた物語。女性が窯に入ることすら許されない頃、安土桃山時代に千利休や小堀遠州といった茶人たちから愛された”古の信楽焼”を、まさに命がけで蘇らせる。釉薬を使わず自然の美しい色を醸し出すこの挑戦こそ、最高の見どころだと思われていただけに、成功の瞬間から名声を得る7年間を全く描かなかったことに、驚きの声が上がっています」(制作会社プロデューサー)

このドラマのモデルと言われる女性陶芸家の草分け・神山清子さんと昨年の初夏、私が信楽でお会いした際、誰もがなし得なかった”信楽自然釉”誕生秘話についてお話を伺った。それは秘話どころではない、命を賭けた壮絶な闘いだった。

神山さんは、4年の歳月をかけて窯の温度、焚く日数、焚き方、挙句には穴窯を築き直すなどの試行錯誤を繰り返すも、失敗の連続。ついには薪を買うお金すらなくなり、今度失敗したら「出稼ぎに行くしかない」ところまで追い込まれ、まさに乾坤一擲。16日間、1200度で炊き続け、高温で窯の天井が壊れ、火が燃え盛るも粘土で塞ぎ、火を鎮めついに古の信楽焼を甦らせている。しかも、闘いはそれだけではなかった。

「ドラマでも夫・川原八郎(松下洸平)と喜美子の元に弟子入りする、松永三津(黒島結菜)という女性が登場。三津が八郎に想いを寄せる場面も登場しますが、神山さんの場合はそれだけではすみません。夫と住み込みの弟子が不貞関係に陥り、家を出てしまうという悲劇にも襲われます。やがてその噂が信楽中に広まり、神山さんは自殺を考え夜の街を彷徨っています。成功の陰には、そんな苦悩が隠されていたのです」(ワイドショー関係者)

こうした命懸けの闘いを描かずして、『スカーレット』はドラマとして成り立つのだろうか。

「ドラマでは、八郎に想いを寄せる三津が身を引き、信楽を去って行きました。”不倫騒動”が相次ぎ非難の声が上がる昨今、朝ドラで不倫の末に駆け落ちでは流石にまずいと考えたのでしょうか。しかし古の信楽焼に賭け、火に向き合うヒロインの情念のようなものを描くためにも、そんな場面が必要だったのでは」(前出・制作会社プロデューサー)

『スカーレット』の前にNHK-BSプレミアムで再放送されている朝ドラの金字塔『おしん』では、ほぼ同じ時期におしんの次男・仁(山下真司)が、奉公人だった百合(丘山未央)と不貞関係に陥り、おしんの元を去るといったショッキングな場面が登場する。『おしん』は、決して耐えるだけのドラマではない。欲にまみれた人間たちの葛藤も赤裸々に描き、ドラマに深みを持たせている。

「主人公のおしんは、昭和天皇と同じ明治34年生まれ。ドラマ『おしん』は同じ明治・大正・昭和を懸命に生き抜いた名もなき女性の苦労を昭和天皇に知って欲しかったという思い込められています。戦前戦後の混乱期に育ち、”古の信楽焼”を甦らせた喜美子にも、そうした葛藤や達成感がもっと描かれても良かったのではないでしょうか」(放送作家)

その思いは、喜美子を演じてきた女優・戸田恵梨香にもあったようだ。

「撮影開始から半年が経った頃、”喜美子の描き方”についてヒロインの戸田と脚本家・水橋文美江さんとの間に意見の食い違いが生じ、水橋さんが撮影現場まで足を運び、話し合いが持たれていたようです。その席で戸田は『芸術家でもあるヒロインの苦悩も表現したい』と訴えたと言われています。戸田は会見の場でも、『女性がモノ作りをするのが難しい時代を懸命に生きた人たちがいたからこそ、今の私たちがある。そうした方への敬意を持って演じたい』と話しています。戸田にとっても、何かが足りないという思いがあったのではないでしょうか」(前出・ワイドショー関係者)

このままでは、全話平均視聴率20%を超えることが難しくなって来た朝ドラ『スカーレット』。「わたしの”信楽自然釉”は、苦しみと悲しみの中で生まれたのよ」と呟いた神山清子さんの言葉が、今も私の中で棘のように引っかかっている。

  • 取材・文島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • 撮影足立百合

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