「カメ止め」上田監督 “ブレイク”寸前の手応えと不安を直撃!

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6月23日に都内のわずか2館で公開が始まった映画「カメラを止めるな!」。300万円という低予算で作られた自主製作映画だが、封切り直後から連日の満席状態で、ついには全国109館での拡大公開が決定している(8月2日現在)。2018年映画界最大のトピックスとなりつつある男、上田慎一郎監督にFRIDAYデジタルが直撃取材を敢行した。

ゾンビポーズをとる上田慎一郎監督。カメラマンの注文にテンポよく即応

——話題沸騰ですね。

上田監督 「カメラを止めるな!」は宣伝費がない映画なので、動員目標は、監督とプロデューサーとキャストたちが会議室に集まって、最終的に「5000人」と決めました。それが、8月1日に動員が6万人を超えました。ここまでの反響はまったく想像できませんでした。「6万人」も、7から8館くらいで公開している中で達成したので、これから上映が100館以上に増えたとき、何がどうなるのか、まったく分からないです(笑)

——ヒットは予想外、ですか?

上田監督 この映画は、僕たちの「こういうことが起きたのなら、次はもしかしたらこういうことが起きるかもしれない」という予想をすべて越えてしまうのです。明日(8月3日)、舞台挨拶をするTOHOシネマズ日比谷は客席が491席あるのです。当初は「これは頑張って埋めなければ」と思っていたのですが、最近の感触を受けて、「もしかしたら1日で売り切れるかも」と話していました。それが、発売開始から2分で完売しました。僕たちは映画の力を信じて作ってはいましたけど、ある意味(自分たちも)「映画の力をなめていたな」と感じました。

「37分ワンカットでゾンビ映画を撮る」。プロデューサー陣の楽観をよそに、撮影現場は修羅場と化して行く

——監督も急に超多忙に?

上田監督 業界内での評判が高かったので、公開前に取材を10社以上は受けました。ただ、これまでに、テレビも合わせると、40社くらいから取材を受けています。こんなに取材を受けるなんてまったく予想していませんでした。(笑)

——作品に手応えを感じたのはどの段階? 

上田監督 完成したときに手応えは感じていたのですが、作品として胸を張れると思ったのは関係者試写会のときです。関係者試写会は、スタッフだったら自分の仕事に対して、キャストだったら自分の演技に対してあら探しをしてしまうので、笑いが起きたりということは経験上ありませんでした。それが、この作品は、関係者試写の段階で気持ちがいいくらいの笑いか起きて、終了後の拍手も長かったです。その後の打ち上げは4次会まで、12時間続きました。「これはちょっといいものができたのでは」と感じました。

「カメラは止めない!」 ゾンビ作品を取りつかれたように演出する監督(を演じる濱津隆之さん)

上田監督にも同じポーズをお願い。37分ワンシーンワンカット撮影には6回チャレンジ。通しの撮影に成功したのは4回。使われたのは最終の6テイク目。この37分の「偉業」を観るだけでも貴重な体験。映画全体の上映時間は96分。何が起きる?

——興行面の自信や手応えはありましたか? 

上田監督 関係者試写会での評判が高いことと、ヒットすることは別なので、ヒットするかどうか不安なまま、ひたすら宣伝をしていました。昨年11月に6日間だけ先行公開をしたのですが、インディーズ映画は知り合いを呼んでなんとか席を埋めることが多いのです。この映画の場合も、6日間のうち、最初の2日間は知り合いが多かった。ただ、短期間のうちに口コミが広がって、3日目からは知り合いでも入れない状態になりました。最終日は、映画館の開館と同時にチケットがソールドアウト。映画ファンに受け入れられるという点でも、「これはいけるかも」と思いました。

——それで6月の公開を迎えたのですね。

上田監督 公開までに、ありがたいことに、海外の映画賞をはじめいくつか賞を頂いたり、ネットでニュースにして頂きました。試写会を重ねて著名な方からコメントを頂いたりなどし、業界内での評判も広がりました。そんな状態で迎えた公開だったのですが、「インディーズ映画を観る層」と、「一般の映画ファンという層」と、「年に1回映画館に行くか行かないかという層」がいます。「インディーズ映画を観る層」を突き抜けて「一般の映画ファンという層」に到達するまでにどれくらいかかるかなと思っていたのですが、公開2週目から、インディーズ映画のファンに加えて、若い人たちも増えてきました。「インディーズ映画を観る層」はすぐに突破したなと思いました。今はもう、「年に1回映画館に行くか行かないかという層」も劇場に来てくれているのですが、そこまで一気に行ったので、びっくりしています。

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——どんな反響が届いていますか?

上田監督 映画はDVDや配信などでも観ることができますが、「年に1回映画館に行くか行かないかという層」の方が、「映画は家で観ればいいと思っていたけど、映画館で映画を観るっていいじゃん」と言ってくれました。そんな人たちが、これからも映画館で映画を観たいなと思ってくれたら、すごく嬉しいです。

  ——逆に、全国拡大上映を前に不安に思っていることは?

上田監督 この映画は、84席と170席という2つの劇場からスタートしたのですが、観たい人が殺到して、連日、満席の中、みんなで一緒に笑って、一体感を持って観て頂きました。また、そうやって映画を楽しむことが「最上の体験」と言ってくれる人も多いです。それが、TOHOシネマズ日比谷だと、巨大スクリーンで1日に7回上映など、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」と同じくらいの規模で公開されます(笑) 拡大上映が始まったら、熱気がムンムンした満席の中で観るという体験は、もしかしたら減っていくのかもしれないなと思います。ただ、さっき確認したら、金曜日と土曜日はめっちゃ埋まっていて、難波の劇場とか、完売している回がありました。「また越えてきたな」と実感しています。

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——これからは、地方の人も含めて幅広い客層に映画が届きますね。

上田監督 「今まで家族に映画を一緒に観に行こう」なんて言ったことがなかったという人が、家族を連れて観に来てくれたことがありました。この映画は、ファミリー映画として、家族で観ることもできるのです。ゾンビが出てきたり、血が飛び散ったりするのですが、小さな子どもでも、女の子でも、お年寄りでも楽しむことができます。

——上田監督の生後3か月(撮影時)のご長男も映画に登場しています。

上田監督 息子は、この映画の企画が本格的に始動したときくらいに生まれました。息子が生まれてから色々なことが変わりましたが、僕が忙しいということもありますが、妻の俺に対する興味が減って息子中心の生活になりました。結婚してもぜんぜん変わらなかったことが、子どもが生まれたら変わりました。

(上田監督の奥様は映画監督のふくだみゆき=今年1月に第72回毎日映画コンクールのアニメーション映画賞を『こんぷれっくす×コンプレックス』で受賞、「カメラを止めるな!」では衣装・タイトルデザイン・宣伝ビジュアルを担当。注目の受賞夫婦(めおと)監督だ)

——お子さんが誕生したことで、創作に影響はありましたか?

上田監督 この映画の中で、読み合わせのシーンに泣いている赤ちゃんが登場しますが、それが息子です。僕は自分の経験を脚本に書くことが多くて、あのシーンは、僕がこの映画の脚本を書いているときに、息子の夜泣きがうるさくて思いついたのです。ただの読み合わせだけでは面白くないなと思って。子どもが生まれてからは、色々なことが上手くいっている感じがあります。

「カメラを止めるな!」は、俳優・映画監督の養成スクール 「ENBUゼミナール」の シネマプロジェクト(第7期)として企画がスタート。制作費は約300万円。2017年6月21日~7月1日の内、8日間のロケを実施。10月15日に完成した。

——奥様のふくだ監督は、完成した「カメラを止めるな!」を観て、何と言っていましたか?

上田監督 「面白いんじゃない」と言っていた気がします(笑) というのも、脚本を書いている時点で妻に相談していますし、今までもそうなのですが、女性の繊細な描写や感情の動きは妻にアドバイスをもらっています。妻は、誰よりも俺の脚本の途中経過を見て、編集している様子を見て、完成版を観ているので、僕の映画をフラットな状態で観ることはできないのですね。ただ、家で編集をしているときに、最後の30分を何回も観にきていました。それは今まではなかったことです。「最後の30分は、何回も観られるわ」と言っていました。

——次回作の構想は? 

上田監督 現時点で、発表できることがないのです。走っている企画はいくつかあるのですが、「カメラを止めるな!」がこんな状態になるとは想像していなかったので、色々なスケジュールが後ろ倒しになっています。ただ、「カメラを止めるな!」がヒットしたことで、色々なことが動きやすくなっていますし、いい影響はすごく出ているのかなと感じています。

——「無知で無名で無謀。それが掛け算されると無敵になるのだ」とおっしゃっていました。次回作も「無敵」の作品を期待していいですか?

上田監督 そこが戦いだと思います。次は、違う掛け算にならないといけないなと思っています。もう、無名ではなくなってしまいますし、「無知」という点でも、今回、最初の37分をワンカットで撮影したのは「無理だ」という声を「行こうぜ」と僕が押し切ったのですが、今後、色々なスタッフが集まる中で「上田君、ここは無理だから」と言われてしまうかもしれませんし、それを押し切ることができなくなるかもしれません。これからは、「無知」で「無名」で「無謀」ということとはまた違う方程式で、「無敵」を目指さないといけないなと思います。

FRIDAYデジタルのインタビューに気さくに応じてくれた上田監督。「『無知』で『無名』で『無謀』を掛け合わせて『無敵』になったのは、今回限りでしょうね」と感慨深そうに語っていたが、言葉の端々から映画に対する熱い思いが伝わってきた。そんな上田監督なら、ほどなく次なる「無敵」を見つけ出し、また我々を楽しませてくれることだろう。「カメラを止めるな!」の全国拡大上映とともに、上田監督のさらなる活躍に期待したい。

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取材・構成・撮影(上田監督):竹内みちまろ

『カメラを止めるな!』(c) ENBUゼミナール

製作: ENBUゼミナール

配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール

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