韓国プロ野球の影が薄くなってこんなに様変わりした沖縄キャンプ

日韓関係の悪化が、こんなところにも影響を及ぼしていた!

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那覇空港にある、沖縄でキャンプを張るチームのユニフォームのディスプレイ。韓国プロ野球(KBO)は左端のLGツインズとその隣のサムソン・ライオンズ2チームのみと寂しい

プロ野球春季キャンプも中盤に差し掛かりつつある。今季の沖縄キャンプは例年とかなり様変わりしている。

一つは「巨人がまだ来ていない」こと。今季は、宮崎で1~3軍までが春季キャンプを張り、1軍が15日に沖縄入りする。例年は、2月1日から3軍が那覇でキャンプを張り、交代で中旬に1軍が沖縄入りするパターンだった。那覇市のセルラースタジアム那覇は、2月に入ると巨人の幟(のぼり)がはためいていたが、今年はそうした飾りつけはまだない。巨人のキャンプは実質的に10日間だけになっている。東京オリンピックによる開幕日の前倒しの影響ではないかと思われる。

例年2月は、中国の旧正月(春節)からの流れで、多くの中国人観光客が押し寄せる。大きなスーツケースを何個もゴロゴロと引きずって移動するさまは、いまや日本全国で見られるが、沖縄県唯一の鉄道である沖縄都市モノレール線(ゆいレール)は、例年この時期は中国人観光客で身動きが取れなくなるものだ。特に那覇空港へ向かう早朝の便は、乗車できずに乗り過ごすことさえあったが、今年はかなり緩和されている。数が少ないからか、おとなしい観光客が多い。やはり新型コロナウイルスの影響だろう。今は、途中駅からでも座れることがあるくらいだ。沖縄でもマスクは品薄になっている。

国際通りなどでは、毎年、浴衣にスニーカーという不思議な格好をした中国人観光客が楽しそうに闊歩していたが、それもほとんど見られなくなった。昨年10月に首里城が焼失したことも、インバウンドの観光客の減少に影響を与えている可能性もあろう。

もう一つの変化は、韓国プロ野球(KBO)の春季キャンプが、あらかた沖縄県から撤退したことだ。KBOは10球団からなるが、例年7球団前後が沖縄や宮崎でキャンプを張っていた。日本より緯度が高く冬の寒さが厳しい韓国のKBO球団は、ほぼすべてが海外でキャンプを張ってきた。日本は距離的にも近く、沖縄県、宮崎県は格好のキャンプ地だった。

しかし今年はサムスン・ライオンズが沖縄の恩納村で通期キャンプ、LGツインズが沖縄、具志川で2次キャンプ、トゥサン・ベアーズが宮崎で2次キャンプを張る以外は、すべて他の国に移動した。

これはもちろん、昨年後半に韓国で起こった「反日運動」の影響だろう。

もともとKBO球団のキャンプには、NPB球団とは異なり、見物客はほとんどなかった。球場に選手、指導者や球団関係者、少数の韓国メディアがやってくるだけだったが、それでも地元にとっては、数十人単位の宿泊や飲食などの消費が期待できるありがたい存在ではあった。かなりの痛手だろう。

それ以上に、沖縄でキャンプを張るKBO球団は、NPB球団にとっても重宝する存在だった。温暖な沖縄県では、チームの仕上がりは早い。キャンプ中盤には実戦モードになるが、こんなときにKBOチームは格好の練習相手になったのだ。

沖縄キャンプでは、紅白戦が終わるとKBO球団との練習試合、NPB球団との練習試合、そしてオープン戦と徐々に対戦相手が変わって実戦モードが高まっていくのがパターンだったのだ。前述のとおり、今季は東京オリンピックによるペナントレースの中断が予定されているため、昨年よりも開幕が9日早い。それだけに実戦練習を前倒ししたいところだが、今年は、相手のKBOチームはほとんどいないのだ。

数年前まではKBOチームとNPBチームの試合には韓国から観戦ツアーがやってきたり、韓国のテレビの中継が入ったり、にぎやかなものだったが、それも完全になくなった。

このKBO球団との交流戦、NPBのフロントやスカウトにとってはKBO球団の外国人の品定めをする機会でもあったのだ。

今季もSKワイバーンズからアンヘル・サンチェスが巨人に、キウム・ヒーローズからジェリー・サンズが阪神にやってきたが、KBOで大活躍する外国人は、NPBでも通用する確率が高いのだ。MLBからいきなりやってくるよりも、同じ東アジア文化圏での生活を経験する方が、カルチャーショックが少なくて済む。そういうこともあって、練習試合のバックネット裏ではKBOの外国人選手をチェックする球団関係者の姿もあったのだ。

KBOとの関係は、日韓関係が悪化する少し前から薄れていた。2016年オフにイ・デウンがロッテを退団して以来、NPBで活躍するKBO出身韓国人はいなくなった。しかし日韓の野球界は今も人的なつながりを保っている。

ソフトバンクホークスには今年、工藤公康監督が韓国野球界の重鎮キム・ソングンを1軍のコーチングアドバイザーに招いている。昨年オフにはKBOを引退した元ソフトバンクのイ・ボムホが、ソフトバンクにコーチ修行にやってきている。日韓関係とは関係なく、野球関係者の間では交流は続いているのだ。

KBOは、年間観客動員が800万人弱。MLB(7000万人弱)、NPB(2650万人)についで世界3位の観客動員を誇るプロ野球リーグだ。海峡一つ隔てた近い距離にあるNPBとKBOが手を組むことは、双方にとって大きなメリットがある。それだけに、今年の春の沖縄のさびしい風景は誠に残念だ。近い将来、春の沖縄で再び野球の日韓交流が盛んになることを望みたい。

  • 取材・文・撮影広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

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