“30歳定年説”の絶望から救え “社員全員が元女子アナ”の企業

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「トークナビ」社長の樋田かおり氏。’85年6月、岐阜県生まれ。金城学院大学から青森放送へ。「声で未来が変わる」をモットーに会社を立ち上げた

「女子アナの“30歳定年説”って、本当にあるんです。30歳直前になると、アナウンス部から総務部などに異動になってね。多くの女子アナは、仕事が激減し絶望的な気分になります。そんな彼女たちの受け皿になりたい思い、会社を設立しました」

こう語るのは、話し方研修や司会者のキャスティングなどを行う「トークナビ」社長・樋田かおり氏(34)だ。「トークナビ」の特色は、社員が全員女性で皆アナウンスの仕事に携わっていたこと。樋田氏自身も、地方局で働いてた元女子アナだ。樋田氏が振り返る。

「アナウンサーになろうと思ったキッカケは、高校時代の体験です。元々あがり症で、人前に出て話すことが苦手でした。そんな時、たまたま地元(岐阜県)の話し方セミナーに参加したんです。『あ・い・う・え・お』と大きくハッキリ話すようなシンプルなトレーニングでしたが、私には劇的な変化がありました。発声が良くなることで表情が明るくなり、性格も前向きになったんです。アナウンサーは天職だと思い、大学卒業前に受けたのはテレビ局ばかり。ただ倍率が高くて、40社ほど受験しほとんど落ちましたが……」

合格して入社したのは青森放送だった。同局ではラジオ番組も担当し、アナウンサー業務だけでなく様々な仕事を経験する。

「ラジオでは流す音楽の選択から番組タイトルの決定、ゲストへの電話取材、編集まで、すべて一人でこなしていました。忙しいながら、貴重なキャリアを積ませてもらったと思います。恋愛もご法度。同期の男性と街を歩いていただけで、上司に呼び出され『仕事に恋人は必要ない!』と叱責されたほどです。ただ20代後半になると、多くの女子アナがアナウンス部から異動させられました。このままでは、せっかく身につけたスキルがムダになってしまう……。不安は募るばかり。アナウンサーという職業に愛着があったので、思い切ってフリーになろうと決めました」

だが、局に所属していた時に比べ仕事は激減。レギュラーは週1本だけとなり、「月に25日以上はヒマ」な日々。「来月、仕事はあるのだろうか」と悶々とした生活を送る。

「一時は絶望的な気分になり、ずっと部屋に引きこもっていました。このままではマズイ。待っているだけでは仕事は来ない。現状を打破するには、自分からアクションを起こすしかありません。そこで思い出したのが、高校時代の体験です。私を変えてくれた上手な話し方を教える会社を、自分で立ち上げようと決めたんです。’15年3月のことでした」

「トークナビ」の採用試験に応募する元女子アナたち。多くがNHKや地方局で働いていた

当初は樋田氏一人で、受講者をレクチャーしていた。ただ、一人では受講者を増やせない。“30歳定年説”で仕事に迷いながらも、声で生きていこうとする元女子アナたちを誘うと、すぐに多くの女性が賛同した。

「女子アナという職業の壁に直面していた彼女たちは、最初は暗い顔をしています。でも仕事をお願いすると、みるみる表情が明るくなるんです。話すことに飢えていたんですね。ウチの会社が採用するのは、ほとんどがNHKや地方局のアナウンサーです。私もそうでしたが、ローカル局の女子アナは営業や記者業務もこなし、いろいろなスキルを持っている。裏方である司会や、話し方の講師にはピッタリなんですよ」

昨年夏からは、「女子アナ広報室」というサービスを開始した。広報のノウハウのない中小企業のために、取材媒体を紹介するなどPR活動を請け負うのだ。

「時には経営者のファッションコーディネートもします。中小企業の社長さんの多くは周囲に注意してくれる人がいないらしく、Tシャツにジーンズという格好でクライアントと会う方もいるんです。社長は企業の広告塔でもあります。『相手によってはジャケットやスーツを着用してください』と、アドバイスすることもあるんです」

セカンドキャリアに悩む女性が、樋田氏のもとに多く集う。「トークナビ」には現在60名近い元女子アナが在籍し、テレビ局などで培ったキャリアをいかしている。

インタビューに答える樋田氏。趣味はピアノとラーメン屋巡りだという
司会をする「トークナビ」所属のトーマス・サリー氏。静岡第一テレビなどで働き、新語流行語大賞の司会を務めたことも
東京・日本橋のシェアオフィスに向かう樋田氏。都心だけでなく地方でも「トークナビ」の元女子アナたちが活躍している
  • 撮影西崎進也

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