回転寿司「戦国時代」喰うか喰われるか!6500億円市場の覇者

右肩上がりの市場を狙い、大手チェーンが火花を散らす

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グローバル旗艦店としてオープンしたばかりのくら寿司浅草ROX店。日本人にも外国人旅行客にも人気だ

今年1月22日、東京・浅草にド派手な回転寿司店が登場した。くら寿司のグローバル旗艦店「浅草ROX店」である。東京オリンピック・パラリンピックを控え、世界が日本に注目する機会だからと、内装は江戸時代の縁日をイメージしたのだという。

本誌記者も実際に訪れた。外国人観光客を意識しているのか、店内には浮世絵やお面が飾られている。座席は白木で統一され、スッキリとした印象だ。縁日をイメージしているだけあって、射的や輪投げを楽しむことも可能。外国語対応スタッフも常駐し、104の言語に対応する音声翻訳機も導入している。それでいて値段は、一皿2貫100円(価格は税抜き、以下同)が基本だ。

回転寿司をこよなく愛する経済評論家の森永卓郎氏が言う。

「大手の回転寿司チェーンは、価格と品質という、本来は矛盾する要素を相当高いレベルで両立させ、全国展開していきました。しかし、チェーン店が増えて飽和状態になり、次は寿司以外のサイドメニューやデザート、ラーメンまで提供することで、目新しさをアピール。さらに近年はそれぞれの個性を打ち出すことで、新しい客層を取り込んでいます。

たとえば、くら寿司は浅草の新店舗が象徴的ですが、エンターテインメント性を強く打ち出しています。5皿に1回くじを引くことができて、ポケモングッズなどの景品が当たる『ビッくらポン!』をはじめ、タッチパネルで食べたいネタを注文できるようにしました。シャリを半分の量にした『シャリ・ハーフ』やシャリの代わりに野菜にネタを載せた『シャリ野菜』など、お寿司を提供することからさえもはみ出した、かなりぶっ飛んだ方向へ向かっているのです」 

都心を制するのはどこか

回転寿司の市場規模は6500億円とも言われる。競争の激しい外食ビジネスにおいて、毎年成長を続けている数少ないジャンルだ。各社が「喰うか喰われるか」のギリギリの戦いを続けていることがその原動力となっている。回転寿司評論家の米川伸生氏が分析する。

「外食ビジネスで一番重要なのは、飽きられない、ということ。ハンバーガーにせよ、牛丼にせよ、焼き肉にせよ、外食産業はシェアを拡大してもいつかは飽きられる運命です。そのときにお客さんは異業種に流れてしまう。

しかし、回転寿司の最大の強みは、飽きさせない工夫がしやすいこと。寿司のネタには四季それぞれに旬があることが大きい。大手チェーンの回転寿司では、2週間に一度のペースで旬の魚を中心としたキャンペーンを打つのが定番化しています。いつ行っても新しいネタがあるため、リピート率を上げる施策が他の外食に比べて優れているのです」 

大手回転寿司チェーンは郊外のロードサイドに賃料の安い物件を借り、ファミリー層を狙って出店してきた。ところが、郊外店は飽和状態になりつつあり、現在、都心部への進出を活性化させている。くら寿司は’14年に池袋東口に出店し、成功を収めた。それを見て、スシローも池袋や高田馬場に出店を始めている。

「スシローは、昨年5月に『山手線全駅スシロー出店プロジェクト』を実施し、山手線の駅近くにあるビルに小さめのお店を出し始めました。会社帰りのおじさんもこれで足を運びやすくなります。 

スシローはスイーツにも力を入れていて、台湾の『シェアティー』とコラボした『光るゴールデンタピオカミルクティー』をおすすめしています。店で女子高生と一緒になって並ぶのに抵抗があるおじさんでも、回転寿司店なら試してみようかと手が伸びるのではないでしょうか」(回転寿司探究家の柳生九兵衛氏)

スイーツのみならず、スシローは味と、それを支える原価率の高さに定評がある。かつてスシローでコンサルティング業務を行ったこともあるフードビジネスコンサルタントの永田雅乙(まさお)氏が言う。

「スシローは他店が開拓したメニューやサービスの中から当たったものを後追いする傾向があります。それができるのも、『味のスシロー』というブランドイメージが定着し、売り上げトップを走っているから。日本人が一番好きなマグロに関しては、スシローが大手で一番おいしいと思います。原価率が非常に高く、お客さんがマグロだけ食べたらスシローは倒産してしまう。本当は1貫で100円取りたいくらいでしょう。マグロは赤字覚悟。その代わり、原価率の低いエビなどを食べてもらって赤字を補い、『味のスシロー』というイメージを確立したのです」

一方、平日一皿90円という破格の値段で勝負するのが、はま寿司だ。牛丼のすき家を展開するゼンショーホールディングスの傘下だけあって、牛肉を使ったメニューも人気がある。

「はま寿司は受付に、今ではすっかり見なくなったソフトバンクのロボット、ペッパーを巧みに使いこなすなどして人手を省き、少しでも人件費を浮かせて価格を抑えています。さらにゼンショーのグループ内でメニュー開発を進め、ローストビーフなどの肉寿司もおいしい。しかもグループ内には調味料メーカーのサンビシもあるため、醤油が卓上に5種類も用意されています」(経済ジャーナリストの長浜淳之介氏)

10年前は業界トップだったかっぱ寿司は、’11年にスシローに抜かれてから、業界4位にまで転落。回転寿司「戦国時代」における競争の激しさを物語っている。そのかっぱ寿司に復活の兆しが見えてきたという。

前出の米川氏がこう語る。

「かつての王者はイメージ戦略で後れを取りました。スシローとくら寿司が味を追求しているときに、安さを売りにして失敗したのです。しかし、’14年に牛角などを運営するコロワイドに買収され、徐々に回復してきました。安かろう悪かろうのイメージがついていますが、久しぶりに店舗を訪れたら驚くと思います。店内がとにかくきれいで、高級ネタや肉系の寿司が非常によくなっている。昨年からテレビ露出も増やしていて、じわじわと評判が戻ってきています。復活の兆しありですね」

かっぱ寿司では、大手チェーンでは初めてとなる「食べ放題」も実施。ウェブで予約すれば、60分間食べ放題を楽しむことができる(男性1680円~、女性1580円~)。

500円でお酒が飲み放題!

大手チェーンは安さにこだわりを見せるが、それとは異なる視点の回転寿司チェーンが現れ、攻勢をかけている。

「昔ながらの職人が握る、グルメ系回転寿司が人気を集めています。店舗は広くなくても構いませんし、味で勝負できるのが強み。たとえばいいネタが入ったら、600円で売ることもできる。技術を持った職人で勝負できるので、これから伸びしろがあるのは、こちらではないか」(前出・永田氏)

千葉・銚子港で水揚げされた鮮魚が売りのすし銚子丸は、千葉を中心に首都圏のみで94店舗を展開する中堅のチェーン店である。前出の森永氏が言う。

「家族とよく利用します。100円に抑えていない分、かなりしっかりした値段になるのが特徴です。一番高い大トロなどは一皿580円もする。油断して食べていると結構な金額になるのですが、質を考えるとコストパフォーマンスは悪くないと思います。平日昼間はアラ汁の無料サービスがあるのでおすすめです」 

他にもグルメ系回転寿司は星の数ほどある。どこがおいしいのか。特徴的な店舗を前出の米川氏が挙げる。

「持ち帰り寿司の老舗、京樽が運営している海鮮三崎港は15坪ほどの小型店舗を都心の駅前に展開しています。回転寿司の原点に立ち返っている点が、逆に新しい。うまい出店戦略だと思います。

また、神奈川県や多摩地区を中心に出店する独楽(こま)寿司は、関東屈指の実力店ですよ。毎朝、小田原漁港で水揚げされた地魚を買い付け、それを各店舗に届けて使っているので鮮度も抜群。500円でアルコール飲み放題もつけられ、ファンを増やしています」 

天下統一するのは、大手チェーン系かグルメ系か。決めるのはあなただ。

フタ付きの皿は乾燥防止に加え、ウイルス感染を防ぐ意味も。注文はタッチパネルが一般的だ

一皿100円が当たり前 なぜ回転寿司はここまで安くできるのか

回転寿司が安いのは、聞いたこともない外国の魚を使っているから――。かつてはそんなことを言われていたが、もはや消費者を簡単に騙せる時代ではない。

「一般的に外食産業の原価率は30%に収めるのが常識ですが、回転寿司チェーンは大手でも40~50%で、総じて原価率が高い。この原価率でやっていくために、ロボットやタッチパネルなどを導入することで人件費をスリムにしています。シャリはロボットが作り、ネタは工場で加工されて、店内では人がネタをシャリに載せるだけ。回転寿司店のバックヤードは調理場というより、食品工場というイメージです」(フードビジネスコンサルタントの永田雅乙氏)

さらに郊外のロードサイドに店を構えることで、家賃をギリギリまで低く抑えることにも成功している。

「加えて、皿にICチップが入っていて、一定の距離を回ると自動的に廃棄されるシステムになっています。これで廃棄されたネタも枚数もわかる。そのうえ、タッチパネルでオーダーも集計しているので、データを蓄積していけば、今いるお客さんに対して適正な品揃えがわかる。その結果、廃棄率が劇的に改善されました。今では廃棄率は3%が一つの目安。100皿あったら3皿しか廃棄されない。人間が勘に頼っていた時代は廃棄率が10%くらいあったので、相当大きい」(永田氏)

オペレーション改革が激安を支えているのである。

100均系と対照的なのがグルメ系回転寿司だ。石川県発祥の「金沢まいもん寿司」では職人が高級なネタを握る

『FRIDAY』2020年2月21日号より

  • 撮影結束武郎 足立百合 つのだよしお/アフロ

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