ハコ師、平場師、ブランコスリ…激増する外国人スリ団の常とう手段 | FRIDAYデジタル

ハコ師、平場師、ブランコスリ…激増する外国人スリ団の常とう手段

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スリと聞いてどんなイメージを抱くだろうか。『デパ地下のさと婆』『声かけのタマちゃん』など、警察官らに異名を与えられ、ごくたまに新聞を賑わせる後期高齢者となった単独犯たち……。従来日本では、何度捕まっても犯行を繰り返す、そんな一匹狼的なスリが跋扈していた。しかし、それも今は昔。大都市では今、外国人スリ団が暗躍しているというのである。

警視庁によると、2014~2018年に都内で検挙したスリ犯は約700人。そのうち外国人が1割近くを占める。夏に予定されている東京五輪を控え、警戒を強めているという。

人が近寄ってきても意に介しない人、つまりパーソナルスペースの狭い人は、スリ集団に取り囲まれる危険性が高いという 写真:アフロ
人が近寄ってきても意に介しない人、つまりパーソナルスペースの狭い人は、スリ集団に取り囲まれる危険性が高いという 写真:アフロ

「近年、取り締まりが厳しくなったことや、日本国内のスリの高齢化により、検挙数自体は減少しています。外国人スリ団は入管による厳しい審査により、なかなか国内に入りづらい状況にある。とはいえ、東京五輪を前に、盗犯係の捜査員らは目を光らせています」

こう語るのは、元警視庁刑事の土井紀人氏。外国人スリ団による手口を、こう解説する。

「外国人スリは複数犯行が大半。実行役や見張り役に分かれて動き、刃物でバッグを切り裂く“断ち切り”をして財布を盗むなどの、手荒な手口が目立ちます。そのほか、やはり武器を持って交通機関に乗客を装いグループで乗り込み、ターゲットを複数で取り囲んでから金品を奪い取り、バレそうになると武器を使用し逃げるという手口も。

彼らは携帯電話やトランシーバーで仲間と連絡を取り合い、犯行に及びます。相手の服などに飲食物をかけて、驚いている間に仲間が財布を抜き取る通称『ケチャップスリ』という手口も。金品を奪うにあたり、被害者の気をそらすためのこうした工作を行う場合があるので、注意が必要です」(元警視庁刑事・土井紀人氏 以下同)

従来の単独スリにもいえることだが、外国人スリ団もターゲットをやみくもに選んでいるわけではない。土井氏によれば「例えば交通機関でスリに及ぶ『ハコ師』たちは改札外の『みどりの窓口』や券売機前で、財布を出し入れする乗客らをチェックし、盗めそうな相手を物色している」という。催し物会場などの混雑した場所を根城にする『平場師』らも、財布の出し入れをしっかり見ているのだそうだ。

その際に、スリたちはどんな行動をチェックしているのか。

「人が近寄ってきても意に介さない人、つまりパーソナルスペースの狭い人は、スリ集団に取り囲まれる危険性がある。また、最近では屋外や交通機関でも、スマホを用いて音楽や動画を楽しむことが多いですが、イヤフォンをしている人も周囲の変化に鈍くなるため、狙われやすい。そして、通勤にリュックを使用する人をよく見かけるようになりましたが、背中にしょったリュックにまで注意を払えていない人も、スリに狙われやすいです」

スリにも、さまざまな専門分野がある。先述の『ハコ師』や『平場師』のほか、新幹線内の荷物フック、飲食店内の荷物かけにかけられた上着などから財布を抜き取る『ブランコスリ』、また酔いつぶれた人を解放するふりをして財布を抜き取る『仮睡盗(かすいとう)』などだ。犯行に及ぶ場所や相手は異なるが、防犯のために心がけるべきことを、最後に土井氏に聞いた。

「まずは、人の集まる場所や混雑した交通機関などではつねに警戒し、眠らないことが基本です。日本ではまだ多く見られますが、手荷物やバッグの口を開けっ放しにしない。中身がもろに見えているような状態は、犯人にとってはスリやすいカモ同然。リュックは、体の前に抱えるようにして持つ。ズボンの後ろポケットや上着の内ポケットなど、わかりやすく、周囲から見えるところに財布などの貴重品をしまわないようにしたほうが良いですね。

私も、多くの現金は持ち歩かないようにしています。3000円程度を小さな小銭入れに入れて、盗まれにくいような場所に潜ませて行動。『日本は安全だ』という思い込みを逆手にとって、スリ集団は絶えずカモとなる人間を物色し、あたりをつけていると思って間違いありません」

東京五輪に向け、日本の安全神話を疑ってかかる意識改革が必要と言える。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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