美人“専属司会者”が金言メモ 野村克也さん“奇跡の雑談”90分

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野村克也さんからもらった色紙を手にする樋田氏。専門分野の野球以外には口を出さないというノムさんの哲学が書かれている

講演60分、控室での雑談90分――。

2月11日に84歳で急逝した野村克也さんは、トークショーの後に必ず控室で主催者やスタッフと話に花を咲かせていたという。ノムさんの“専属司会者”だった、元フリーアナウンサーの樋田かおり氏(34)が振り返る。

「普通、有名人の方だと簡単な打ち合わせをする程度で、ほとんど会話などありません。講演会が終わると、スグに帰ってしまいます。野村監督は違いました。お菓子を食べながら、私たち裏方ともゆっくり話をしてくれるんです。しかも一方的にしゃべることはない。私が『高校時代(甲子園の名門・県立岐阜商業)は野球のウグイス嬢をしていました。将来は話し方の講師として生きていきたい』と話すと、『エエやないか』と孫に接するように話を聞いてくれるんです。私のようなフリーの人間でも受け入れてもらえたのが、とても嬉しかった。一流の人とは、野村監督のように包容力のある人物のことをいうのだと心から感激しました」

樋田氏がノムさんの“専属司会者”になったのは、6年ほど前のこと。当時、ノムさんは年齢や体調を理由に、一人語りの講演会を断っていた。インタビュアーがいるならトークショーに出てもいいという特例が出て、白羽の矢が立ったのが学生時代から野球と縁のあった樋田氏だ。以来、彼女は3年間にわたり、ノムさんの講演会に毎回帯同することになる。それは樋田氏にとって、人生勉強の時間でもあった。講演や雑談で聞いた“野村語録”は、樋田氏の血となり肉となっているという。

「野村監督からいただいた言葉で、私がどれだけ助けられたか……。大げさに言えば、人生とはなにか、生きるとは何かを教えていただきました。心に響いた監督の言葉は、メモして今でも見返しています。私の人生哲学です」

樋田氏が影響を受けた、ノムさんの言葉を紹介しよう。

当たり前の事を当たり前にやる。その積み重ねで信用や信頼を得ることになる

「野村監督は、テスト生として南海に入団しました。決してエリートではありません。そこで来る日も来る日も、練習後に素振りを繰り返したそうです。最初のうちはチーム全員が当たり前のように素振りをしていましたが、1人減り2人減り……。最後まで続けたのは監督と2~3人だけだったとか。そこで大多数の選手と差がつき、チームの信頼を得られたそうです。監督はこうも言っていました。『人には2つの道がある。一つは、何もしない平坦でもつまらない道。もう一つは、困難でも自分で未来を切り開いていく道だ』と」

選手の表情より歩き方を見る。歩き方でその選手が伸びるかどうかわかる

「投手がノックアウトされると、監督はベンチに戻ってくるまでの歩き方を見るそうです。ポーカーフェイスの選手もいるから、表情ではわからない。でも歩き方はごまかせません。『悔しがって、歩き方が乱れているようなヤツは伸びる。次は何とかしようと必死で考えるから。ああ、やられたなと、歩き方が平然としているヤツはダメだ。諦めて努力をしない』と。また、こうも話していました。『努力はスグについてこない。後からやってくるんだ。ジワジワジワ~~~ッとね』」

好きな事をとことんやる。好きだから上達する。努力を継続することが大事。必ず誰かが見ていてくれる

「当時の私は地方のテレビ局を辞め、フリーになったばかりでした。局にいる時は上司から毎日話し方の指導を受けますが、フリーだと注意してくれる人がいません。ついつい甘えて、発声練習をしない。せっかく大好きなアナウンスの仕事をしているのに、ボイストレーニングをサボりがちな日々を送っていました。そんな時に監督が講演で、この言葉を話したんです。しかも壇上でMCを務めていた私に向かい、『見ているからなぁ~』と茶目っ気たっぷりに言うんですよ。身体がゾゾッとしびれました。『あっ、甘えていちゃダメだ。やらなきゃ』と、気を引き締めたのを覚えています」

人間は生まれながらに何か才能を持っている。選手の良さを見抜くこと。魅力を引き出すこと。これが監督の仕事だ

「監督が指揮するチームに、伸び悩んでいる捕手がいたそうです。練習熱心なのに、結果が出ません。しかし観察していると、他の選手より脚のバネが強いことがわかりました。捕手を外野手に転向させると、脚力をいかし広い範囲を守れるようになった。盗塁も増え、見違えるような活躍を見せたんです。才能を見抜けば、人は必ず輝きます。私も話し方をレクチャーする会社を立ち上げましたが、社員(元女子アナ)の能力を見て仕事をわり振るようにしています。また監督は、こうも話していました。『キャプテン、エースの存在は大切だ。一人光る選手がいればチーム全体が伸びる』と。私の会社でも、毎年エース格の社員を決めています。すると周囲が刺激を受け、『私も彼女のようになりたい』と努力し組織が活性化するんです」

ノムさんの言葉には、決して冷めない熱と重みがある。野球というワクを超え、そっと進むべき方向を示してくれるのだ。樋田氏は人生に行き詰った時、仕事で迷った時、今でも講演や雑談で聞いた“野村語録”のメモを見返している。 

樋田氏がメモしたノムさんの言葉。心に静かに響きます
樋田氏のメモ、その2。じっくりお読みください
樋田氏がもらったノムさんからの色紙。達筆です

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