槇原敬之もやめられなかった「覚醒剤」を吸い続けた人の末路 | FRIDAYデジタル

槇原敬之もやめられなかった「覚醒剤」を吸い続けた人の末路

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2度目の逮捕となった歌手の槇原敬之容疑者。なぜ「覚醒剤」から抜け出すことができないのか
2度目の逮捕となった歌手の槇原敬之容疑者。なぜ「覚醒剤」から抜け出すことができないのか

清原和博、酒井法子、ASKAも

2月13日、歌手の槇原敬之容疑者(50歳)が覚せい剤取締法違反(所持)並びに医薬品医療機器法違反(所持)の疑いで逮捕された。2018年4月当時、知人男性と同居していた港区のマンションで覚醒剤を所持したほか、3月30日には危険ドラッグであるラッシュを所持した疑いがもたれている。

1999年にも覚醒剤所持で現行犯逮捕されている槇原容疑者。懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けるも、その後音楽活動を再開し、完全に薬物依存から立ち直ったかのように見えていただけに、各所に衝撃が走っている。

他にも、元プロ野球選手の清原和博、タレントの酒井法子、歌手のASKAなど、多くの芸能人が手を染めてきた「覚醒剤」とはどんなドラッグなのだろうか。一度、服用すると人はどうなってしまうのか。専門家たちに聞いた。

他の薬物では味わえない「ガーン」とくる刺激

「小さなパケから取り出した氷砂糖のような『スピード(覚醒剤)』の結晶を、小さく二つ折りにしたアルミホイルの上に載せる。それを焦がさないようにライターで下から炙ると、結晶が気化して、白い煙が立ち昇ってくる。ストロー状に巻いた紙幣を片方の鼻孔にあて、その白い煙を深く吸い込む。2〜3回も吸い込むと、すぐに気分が高揚してくる。空腹感も時間が経つのも忘れてしまい、一緒にいた仲間と10時間以上話し続けたこともあります。次から次へと話したいことが頭に浮かんできて、気がついたら朝になっていた。

効き目の長さもさることながら、いきなりガーンと頭に来るあの感覚は他のドラッグでは味わえません。僕がドラッグ中毒に陥ってしまった当時は、とにかく『スピード』を追い求めていた。仲間がコカインを持ってきたらガッカリするぐらい、あの刺激に夢中になっていたのです」

こう語るのは、90年代にドラッグカルチャーを体験取材し、そのドラッグ体験をノンフィクション小説『SPEED スピード』(1996年、飛鳥新社)にまとめた作家の石丸元章氏だ。

取材の過程で、覚醒剤にのめり込み1995年には覚せい剤取締法違反で逮捕され、懲役1年6月、執行猶予4年の判決を受けた経験を持つ石丸氏が言う“いきなりガーンとくる”覚醒剤の効果は、どんなメカニズムで引き起こされているのだろうか。日本薬科大学の船山信次教授が語る。

「我々の体内で作られるアドレナリンは、脳や身体を緊張させたり、興奮させたりする働きを持つことが知られていますが、アドレナリンは血液脳関門を通過することができません。

ところが、覚醒剤の成分である有機化合物『メタンフェタミン』や『アンフェタミン』は、容易に血液脳関門を通過し、大脳皮質、さらに脳幹にも直接作用し、中枢神経を興奮させます。その際、ドーパミン受容体に働きかけて、大量のドーパミンが放出されることで強烈な快楽や覚醒作用が引き起こされるのです」

日本で覚醒剤が蔓延するワケ

覚醒剤により中枢神経が刺激されると、快楽だけでなく、脈拍数の増加、瞳孔の拡大、発汗増加、血管収縮、血圧の上昇などが引き起こされる。身体は緊張状態であるにもかかわらず、ドーパミンが大量に放出されるために疲れや眠気を忘れてしまうのだ。

厚生労働省発表の発表によると、平成30年の覚醒剤押収量は1206.7kgで3年連続で1トンを超えている。なぜ、日本でこれだけ覚醒剤が蔓延しているのだろうか。

「他のドラッグに比べ、覚醒剤は国内で圧倒的に流通していると考えられていますが、それもそのはず。現在、日本の覚せい剤取締法で規制されているメタンフェタミンとアンフェタミンのうち、メタンフェタミンは明治時代の日本で生まれた有機化合物なのです。

言い方は悪いですが、いわば日本は覚醒剤の本場。戦前、メタンフェタミンは『ヒロポン』、アンフェタミンは『ゼドリン』の商品名で薬として市販されていたこともありました。ちなみに、ギリシャ語で『philo(ヒロ)』は『好む』、『pons(ポン)』は『労働』を意味し、合わせると『労働を好む』となります。

服用したら2〜3日寝ずに働き続けられる覚醒剤は、戦時中、将兵の士気高揚や軍需産業における生産力向上のため重宝されました。その危険性が知れ渡り、違法薬物となったいまでもこれだけ蔓延しているのですから、もしかしたら働くのが好きな日本人の国民性に合っていたのかもしれません」(船山氏)

2016年に覚せい剤取締法違反で逮捕された清原和博(写真/『FRIDAY』2019年10月4日号より)
2016年に覚せい剤取締法違反で逮捕された清原和博(写真/『FRIDAY』2019年10月4日号より)

「快楽」ではなく、「仕事がデキる」からハマる

そして、この「仕事ができる」という点にこそ、一度手を出すと抜け出せなくなる覚醒剤の恐ろしさがあるという。10年以上にわたって、ヘロイン以外のあらゆるドラッグを使用した経験を持つ片岡貴利さん(仮名、会社員)が語る。

「芸能人が捕まると、シャブ(覚醒剤)の依存性がよく報道されますよね。でも、私の体感としては、シャブと酒だったら、正直なところ酒の方が依存性は高い。ただし、シャブやコカインなどのアッパー系ドラッグの場合、疲れを忘れて仕事ができてしまいます。長時間起きている必要がある長距離トラックの運転手がシャブに手を出すのはお約束ですけど、楽しみのためではなく、仕事のためにドラッグを始めると、次第に薬物なしでは仕事ができなくなってしまう。このパターンが最も危険だと思います」

さらに、他のドラッグに比べて覚醒剤が圧倒的に手に入りやすいという国内事情も、覚醒剤がやめられない原因になっていると、前出の石丸氏は言う。

「覚醒剤の場合、コリア系・中国系のヤクザが覚醒剤の受け入れ先になり、末端の売人が捌いているケースがほとんどで、末端価格は1g当たり2万5千円〜4万円ほど。大抵はさらに細かい量で購入します。とにかく、戦前から覚醒剤が普及していた日本では、覚醒剤を安定的に国内に供給する太いルートが歴史的に構築されてきた。これが、コカインやMDMAとの決定的な違いでしょう」(石丸氏)

欲しい時にすぐ手に入る環境が整っているために手を出しやすく、やめにくい。そんな覚醒剤は、当然体に与える影響も甚大だ。

「覚醒剤の後遺症として、フラッシュバック現象という症例が知られています。重度の中毒にならずとも、時折、脳が覚醒剤を使用したときの快感を思い出し、本人の意思とは関係なしに、また欲しくなってしまうのです。そうして、繰り返し使用するうちに、幻覚や妄想といった症状に襲われることも明らかになっています。また、大量に服用すると痙攣、昏睡といった状態に陥り、死に至るケースもあります。

なにより、覚醒剤中毒の治療法はいまだにありません。医療施設で何ができるかというと、基本的には中毒患者を覚醒剤から離すだけ。根本的な治療法がないために、再び覚醒剤で捕まってしまう人が後を絶たないのです。一度手を染めたら最後、覚醒剤のほうに支配されてしまい、覚醒剤を求めるだけが目的の人生になってしまいかねません」(前出・船山氏)

一度ハマれば、覚醒剤の誘惑は死ぬまで続く。決して手を出してはいけない、悪魔の薬物なのだ。

  • 取材・文今川芳郎

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