ついに四大陸選手権で金メダルの羽生結弦がみせた「大ハシャギ」
世界選手権では人類初の4回転半を目指すも不安定なメンタルが心配
2月9日に韓国・ソウルで開催された四大陸フィギュアスケート選手権のエキシビションで、大トリを務めた羽生結弦(25)。フィナーレで転倒し、リンク上の隋文静(ずいぶんせい)(24・中国)に助け起こされる際に大笑いする一幕もあった。
彼がハシャいでいるのにはワケがある。四大陸選手権で初優勝を飾った羽生は、同大会を含む主要6大会を制覇し、フィギュア男子史上初の「スーパースラム」を達成したのだ。
「(四大陸選手権は)なかなか勝てないなと思いながらやっていたので、やっと優勝できてよかった」
試合後に笑顔でそう話した羽生。しかし、彼のハイテンションのウラには大きな葛藤があった――。
「四大陸選手権のショートプログラムは羽生選手史上最高の演技でした。得意な平昌五輪の曲に戻し、メンタルを整えて臨めたからでしょう。当然、得点は自身が持つ世界最高記録を更新。韓国や中国のファンも大盛り上がりでした」(スポーツライターの折山淑美(としみ)氏)
しかし、輝かしい成果とは裏腹に、羽生のメンタルを不安視する声も出ている。
「GPファイナル、全日本選手権と不調によるまさかの敗北が続いただけに、今大会はかなり気が張っていたようです。公式練習では時折、周囲を睨み付けるような表情も見せていました。一方、大会での優勝が決まると突然のハイテンション。フィナーレで転倒した際は、一人で大爆笑していました」(スポーツ紙記者)
不安定なメンタルのせいか、フリーではミスが目立つなど、実は羽生にとって薄氷の勝利だった。本人は苦笑いを浮かべながらこう話していた。
「気が散った状態で(フリーに)入っちゃったかなというのが残念です。ショートがよかったうえでのスーパースラムだと思うので、総合的には『とりあえずよかったな』というところですね」
ようやく調子を取り戻しつつある羽生には、無謀とも思える目標があるという。それは、未だかつて誰も成功したことがない最高難度の大技「4回転半」だ。日本フィギュアスケーティングインストラクター協会副理事長の大西勝敬(よしのり)氏は言う。
「3月の世界選手権で羽生選手はネイサン・チェン選手(20)との雪辱戦に臨みます。4回転ジャンプを4種類しか跳べない羽生選手に対し、チェン選手は5種類。テクニック的には相手のほうが一歩リードしています。勝負師の羽生選手のことですから、『4回転半』も視野に入れているでしょう」
最後の切り札として大技を準備する羽生。だが、右足首の故障を経験している羽生にとって、足に大きな負担がかかる新技の練習はケガの再発と隣り合わせだ。
不可能に近い目標を達成したとき、羽生の〝電撃引退〟も囁かれる。昨年9月にこんなことを漏らしていたという。
「今は本当に4回転半をやるためにスケートやってるな、そのために生きてるなって思います」
タイトルをほしいままにした羽生の唯一のモチベーションになっている「4回転半」。人跡未踏の夢に挑む羽生の「ギリギリの闘い」はこれからも続く。





『FRIDAY』2020年2月28日号より