前田健太のツインズ移籍から見えた日本人投手に求められていること | FRIDAYデジタル

前田健太のツインズ移籍から見えた日本人投手に求められていること

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2017年、ヒューストン・アストロズとのワールドシリーズ第3戦で登板する前田健太
2017年、ヒューストン・アストロズとのワールドシリーズ第3戦で登板する前田健太

前田健太投手がロサンゼルス・ドジャースから、ミネソタ・ツインズに移籍となり、キャンプに合流しました。

当初はボストン・レッドソックスも含む3球団間での“ブロックバスター・トレード”が報じられていましたが、メディカルチェックでトラブルがあったとのことで、頓挫。このあたりの事情と駆け引きは、トレードに関わっている球団フロントと、当該選手のエージェントやその契約内容や期間などによって刻一刻と変化します。

それでも当初の動き通り、前田投手のミネソタ行きが決まったのは、ツインズが先発投手を強く欲しがっていたのでしょう。ツインズのスターター(先発投手)は昨年15勝のジェイク・オドリッジ投手、14勝のホセ・ベリオス投手がいますが、白星を稼いだ両右腕に次ぐ、13勝のカイル・ギブソンはテキサス(レンジャーズ)へ、10勝のマーティン・ペレスはボストンへ。それぞれ新天地に向かいました。前田投手は3番手としてローテーションをシーズン通して守ることが求められています。

同時に前田投手本人も先発投手としての評価を重要視しているようですし、ポジティブな移籍なのではないでしょうか。「ロスに残れば、またプレーオフ出場は確実なのにもったいない」という声もちらほらと聞かれますが、ツインズも若返った昨季は100勝を超えたポテンシャルを秘めたチームですし、チャンスは十分あります。何よりも、前田投手自身プレーオフはもう何度も経験したので、それよりも先発としてシーズンを完走したい希望が強かったのでしょう。

器用な投手ですし、投手陣が充実していたドジャースでは、言葉は悪いですがどうしても“便利屋”として使われてしまった。

ただ、DHのあるアメリカン・リーグで投げるとどうしても防御率は上がってしまうと思いますが、逆にしっかり6回まで投げてゲームを作ると、3失点までのクオリティスタートではほとんどの場合、勝ちがつきます。時には5失点でも味方が打って勝たせてくれる。

打席がないので代打を出されたりしないこともあり、自分の投球に集中できるのはピッチャーとして大きな利点です。それを頭に入れてまずは6回、しっかり投げ切るゲームを繰り返せば、エース級の存在になれると思います。期待したいですね。

良い点も悪い点もあり、興味深いのは契約形態ですね。

ドジャース時代から前田投手のインセンティブはしばしば、話題になっていました。

彼の基本給は8年で2500万ドル(26-27億円)でしたが、ここから100万ドルの契約ボーナスを差し引くと、年俸は約3億円あまりです。これは、1年目の2016年シーズンの175イニング消費の16勝、2017年は134で13勝、2018年は125イニングで8勝、2019年は153イニングで10勝といった、平均140イニング超えの12勝という成績と照らし合わせると、あまりにも安い。

だからこそ、ドジャース時代は「開幕ロースター入りで15万ドル」「150イニングで25万ドル」などといった細かい出来高が設定されていました。

おそらく今回のツインズとの契約もそう大きく変わらないと思います。既に基本年俸300万ドルに併せて、開幕ロースター入りで15万ドルの出来高が報じられていますが、イニング数、先発登板数などで細かい数字が設定されているでしょう。

もちろん、これらをクリアできれば、本人にも大金が入りますし、それに比例してチームの成績が上向く。悪いことではないでしょう。

しかし、その一方でインセンティブ契約というのはあくまでオプションであることも忘れてはいけません。「この選手ならこの数字はクリアできるだろう」という期待を込めたものであると同時に「クリアできなかったらお金は支払わなくて済む」という球団にとっての保険でもあるのです。

やはりそれは手術や故障者リストに入る日本人投手のイメージと無関係とは言えません。故障しがちな日本人、というイメージは少なからずメジャーには存在します。今もMLBのスカウティングチームはアジア担当、日本担当に中学時代、高校時代のポジションやトレーニングの内容などの調査を続けています。肘や肩の状態がどうなのか。ポテンシャルはあるのか。常に探っています。

現行の育成方法で育ってきた現在のメジャーリーガーはある意味ではそれと闘いながらのプレーになりますが、未来のメジャーリーガーにそういったネガティブな要因を与えないように、野球界、特に育成方法を見直すのも、メジャーで選手が活躍してくれることと同じくらい大切なことなのではないでしょうか。

  • 長谷川滋利

    1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

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