ときめき、サラダ、花畑――どうしてこうなった、メルヘン地名

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いったいなぜこのようなメルヘンチックな地名が誕生したのか…。その由来を調べてみた

ときめき、サラダ、お花茶屋、メイプルタウン、にっさい花みず木、ばらの丘、おもちゃのまち。童話に出てきそうなメルヘンな言葉だが、実はこれらには共通点がある。すべて、れっきとした地名・居住表示なのだ。 

“はなばたけ”にあらず「花畑(はなはた)」

東京都足立区花畑。埼玉県草加市と八潮市に隣接する地域で、もともと花俣(はなまた)や花又村と呼ばれていた。明治時代に周辺の村と合併した際に花又村の地名を残しつつ、さらに美称化し「花畑」となったという。

ある武士の戦果を喜んだ僧侶が「今回の凱旋は枯れ木に又、花の咲く如くなり」と称賛し、これに気をよくした武士が「この地を又花と呼ぶとよい」と言ったことが、そもそもの地名の由来という説も。ただし特に文献が残っているというわけではないので、おとぎ話程度にご査収を。「川が多くて、又わかれになってるから“又”が使われるようになったんじゃないかしら~」とは足立区立郷土博物館の方の言。

【花畑】足立区のほかに“はなはた”と読む地名は福岡県に、“はなばた”と読む地域は熊本県、“はなばたけ”は、福島県、茨城県、京都府、福岡県にある(写真はイメージ:アフロ)

なぜかわからないけど「ときめき」

日本海に面する新潟市西区のやや内陸、近くには信濃川が流れる地域で、1996年3月から現地名「ときめき東」と「ときめき西」となっている。新潟市役所に地名の由来を問い合わせたが、残念ながら詳細・経緯はわからず。一説によると信濃川にかかる橋の名前を公募したところ「ときめき橋」(現存する橋)が採用され、この地名も橋の名前に由来するとか。 

住所はときめきではないが、近隣には新潟の銘酒、燕市・三条市の刃物・金属品、新潟5大ラーメンなど新潟全域の名物が大集合した、心ときめくスポット「道の駅 新潟ふるさと村」も。立ち寄る機会があればぜひ。

【道の駅 新潟ふるさと村/新潟県新潟市】東京ドームの約1.4倍の広い敷地に数々の施設や花畑が点在。毎年春には「GWチューリップフェスティバル」が開催され、屋台や新潟出身歌手のライブなどのイベントが行われる(画像・情報提供:新潟おでかけマップ)

超合金、ガンプラのふるさと「おもちゃのまち」

全国的に有名な珍地名、栃木県下都賀郡壬生町(みぶまち)おもちゃのまち。1960年代に東京の下町を産地とするトミー(現タカラトミー)を筆頭に、バンダイやエポック社といった玩具メーカーが協同組合を設立したことが誕生のきっかけ。製造の拠点となる用地を探していた組合に対して、東武鉄道の協力のもとに壬生町が誘致、1965年に工業団地が設立された。1964年には東武鉄道が東武宇都宮線「おもちゃのまち駅」を新設。1966年から住宅地も売り出されて住人も定着したこともあり、1977年に正式に「おもちゃのまち」が町名となった。

超合金やガンダムのプラモデルといった“おもちゃのまち生まれ”の大ヒット玩具がここで生産され、全国各地へ出荷されていた。現在は製造拠点としての工業団地ほか、「壬生町おもちゃの博物館」や「おもちゃのまちバンダイミュージアム」など、“大人の子供心”をくすぐるスポットも。

【壬生町観光協会公式HP】壬生町観光協会のキャラクター、「壬城苺花(みしろいちか)」と「ベリビー」。地元高校生との連携により誕生した。このほかに、壬生町の公式HPにも数々のキャラクターが登場する

地名に寄せるスタイルの「にっさい花みず木」

埼玉県坂戸市にある地域で、2002年から現地名に。もともと入西(にっさい)という地名で、大規模開発の際に新地名を公募したところ「にっさい(入西)の名前は残したい」や「花、水、樹木が美しい土地」という意見があり、審議委員会での検討により「にっさい花みず木」に決定。なので、植物のハナミズキに由来しているわけではないが、決定後に街路樹にハナミズキを植樹するなど「地名の方に寄せている」(坂戸市役所職員)という。3月末~4月にかけてはこのハナミズキのほか、桜並木も見ごろになるなど、名は体を表し中。

【ハナミズキ】原産は北アメリカ。今やワシントンの名物としても有名な日本から贈られたソメイヨシノの返礼として、1915年に贈られた。英語名は、「犬の木」を意味する「dogwood」(写真はイメージ)

実はソーサーの方の「サラダ」

徳島県三好市池田町サラダ。もともとは皿のような地形だったため皿田という表記だったが、明治になって「時代の先を行くぞ!」と思い切ってカタカナ表記にしたという、攻めの姿勢が光る逸話も。近隣には、こちらも“攻めダルマ”の異名で高校野球ファンにおなじみの故・蔦文也監督が率いた県立池田高校がある。

【蔦文也】「さわやかイレブン」「やまびこ打線」で知られる池田高校野球部を40年間指導した。優勝3回(夏春連覇1回)、準優勝2回。池田町名誉町民第1号!(写真:アフロ)

全国屈指のファンシー地名「メイプルタウン」

佐賀県多久市北多久町メイプルタウン。市の木がカエデ(市旗のモチーフにもなっている)なことから2001年にこの地名になったというサンリオ感漂う町。メイプルタウンがある多久市には、その名の通り秋にはカエデやモミジが映える紅葉、春には桜が見ごろになる「西渓公園」や、学問の神様・孔子を祀った国宝、国の重要指定文化財「多久聖廟」といった観光スポットも。孔子をモチーフにした多久市のマスコットキャラ「多久翁(たくおう)さん」の存在感もなかなか。

【多久翁(たくおう)さん/佐賀県多久市】学問の神様・孔子を祀る多久聖廟にちなみ、孔子をモチーフにした「多久翁さん」。手に持っている赤い本(論語)にさわると頭がよくなるらしい(イラスト提供:多久市商工観光課)

「ばらの丘」

静岡県島田市ばらの丘。もともと島田市はバラの生産が盛んで、1992年には「島田市ばらの丘公園」がオープン。それにちなんで2000年から周辺の地名を「ばらの丘」としたそうだ。島田市の市花はもちろんバラで、ミスシマダという地元由来の品種も。 

また、ばらの丘がある島田市には、SLが走る大井川鉄道や、「世界一の長さを誇る木造歩道橋」としてイギリスのギネス社に認定されている蓬莱橋などの観光名所も多い。バラだけでなくお楽しみがいっぱい。

【蓬莱橋/静岡県島田市】夜は緑色の高輝度LED照明でライトアップされて幻想的な雰囲気に。橋の長さ「897.4m」にちなみ「やくなし」=「厄無し」、「長い木の橋」=「長生きの橋」など、ご利益スポットとしても有名(写真提供:島田市観光協会)

徳川将軍由来のありがたき「お花茶屋(おはなぢゃや)」

東京都葛飾区お花茶屋。鷹狩り大好きでおなじみの八代将軍徳川吉宗がこの地で鷹狩りをしていたことに端を発する。鷹狩り中に腹痛をおこした吉宗は、近くの茶屋(もともとは「新左衛門茶屋」という名前)で休憩したところ、茶屋の娘の介抱によって復調したことがあった。これで大いに機嫌をよくした吉宗が、茶屋とその娘の名前「お花」をとって、お花茶屋という地名をつけたという、将軍由来のありがたい地名。

【徳川吉宗】江戸幕府 八代将軍。「暴れん坊将軍」のモデルとして知られる。写真は和歌山市の「徳川吉宗公之像」

平成の大合併では、過剰な美称やカタカナ表記の市町村が多く誕生したが、今回取り上げたのは、それ以前に制定された地名が多く、他の美称・カタカナ(ひらがな)とはそのメルヘンさで一線を画している。たまたま訪れた地や知人の住所がこんなメルヘンな字面だったら、なんだか優しい気持ちになれはしないだろうか(筆者は心からそう思います)。

みんながほっこりして優しくなれる地名の町――。令和の時代、市町村合併などで地名を変更する場合は、積極的にメルヘン地名を推奨したい所存であります。

取材協力:足立区立郷土博物館、坂戸市役所、新潟市役所、島田市役所、多久市教育委員会

参考:葛飾区公式サイト、おもちゃのまちサイト、壬生おもちゃのまち博物館、三好市移住ポータルサイト

  • 取材・文高橋ダイスケ

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