暖冬で倒産連鎖の危機 創業60年の老舗スキー場“雪不足破産”
福井県勝山市の「雁が原スキー場」の経営者が語る、異常暖冬で一日も営業できない惨状
「暖冬」に敗けたスキー場が、ついに出てしまった。
2月3日、福井県勝山市の「雁(かり)が原スキー場」を運営する勝山観光施設が、福井地裁に破産申請を行った。地元の有志らが出資して、’56年に開設。市街地からのアクセスがよく、全長1500mの5つのコースにナイター設備も備え、地域の学校のスキー教室にも頻繁に利用される伝統あるスキー場だった。
勝山観光施設の松原一社長(70)が、「管財人にあまり話すなと言われている」としながら、破産に踏み切った理由を淡々とした口調で明かしてくれた。松原社長は、半年前に社長に就任したばかりだった。
「一昨年のシーズンは大雪が降ったんですが、スキー場に続く道の除雪ができず、営業ができませんでした。そして、昨季は暖冬の影響でほとんど開業できなかった。それでも今季に期待して、1000万円かけてリフトのメンテナンスをやったり、夏場にドローン教室を開催したり、何とか踏ん張っていたんですけどね……。でも結局、今季も雪は降ってくれなかった。申し込みをしてくれたスキー教室への返答期限だった1月14日に今季の営業を断念。その後、金融機関からも『融資はできない』と言われたので、残念ながら破産を決めました」
全盛期は2億円以上あった売り上げも、スキーブームの終了とともに減退。そこに、各地の気象台で観測史上最少の降雪量を記録している今季の「異常暖冬」が来れば、ひとたまりもなかった。松原社長が続ける。
「破産を決める前に開いた役員会では、『来シーズンは雪が降るかもしれない』という意見も確かにありました。でも、必ず降るという保証はどこにもないですから。これまで利用してくれていた人や、楽しみにしてくれていた地元の方々には多大なご迷惑をおかけして、申し訳なく思っています」
全国の中でも北陸地方は特に暖冬の影響を受けており、少雪どころか無雪の地域も多い。各自治体は大慌てで対応を協議しているが、はたして自然相手にできることはあるのか。「雁が原スキー場」の悲報をきっかけに、バタバタと連続倒産という事態にならなければいいのだが……。
『FRIDAY』2月28日号より