「面倒くさい」から「20人以上殺した」久保木容疑者 異様な供述
「点滴に消毒液」で大量殺人 犯行を見逃してきた大口病院も責任重大
「実は、彼女は大口病院を辞めた後の’17年2月から4月にかけて、ウチの介護施設で働いていたんです。当時はまさか彼女が犯人だなんて思ってもいませんでした。今回の報道を受けて、職員はショックを受けています。医療にかかわる人は、自分が身体を壊しても患者さんを治したいという志を持った人が多いもの。それが逆に患者さんを殺すとは……」
そう語るのは、神奈川県内にある介護施設の職員だ。
7月7日、横浜の大口病院(現・横浜はじめ病院)で入院患者が次々に不審死を遂げた事件で、元看護師の久保木愛弓(31)が殺人の疑いで逮捕された。
事件が起きたのは’16年9月。久保木容疑者は勤務時間外に80代男性の患者が打っている点滴に消毒液を混入、中毒死させた。県警の取り調べに対しても、
「20人以上殺した。自分の勤務中に患者が亡くなると、家族に説明しなければいけない。それが面倒で苦手だった」
と、信じられない供述をしている。
「実際、大口病院では’16年7月から3ヵ月で、約50人の患者が死亡している。久保木は当初から犯行を疑われていました。このタイミングで逮捕に至ったのは、彼女の看護服のポケットから消毒液の成分である界面活性剤が検出されたから。それまで取り調べに対して犯行を否定してきた彼女ですが、物証を突きつけられて説明ができなくなったのでしょう」(全国紙県警担当記者)
事件後、大口病院を辞めた久保木はしばしば同県内の実家に帰省していたが、「マスクをして帽子を被り、母親の後ろを隠れて歩いていた」(近隣住民)という。そして、冒頭のように介護施設に再就職を求めたのだ。施設職員が続ける。
「彼女は『ハローワークを見て面接に来た』と言っていました。履歴書には『大口病院勤務』と書かれていましたが、犯人と目されている人だとは思いませんでした。真面目に働いていましたよ。ただ、マスコミ関係者が彼女を追いかけて施設に入ってきたことがあった。こちらとしては理由もわからないので、大パニックです。その騒動がきっかけで彼女は『迷惑がかかるから』と辞めていきました」
当然ながら、彼女の凶行は許されるものではない。だが、犯行を見逃してきた病院にも責任があるだろう。元兵庫県警刑事の飛松五男氏はこう指摘する。
「短期間のうちにこれだけの患者が亡くなれば、病院側もおかしいと気が付いていたはず。病院側が事件として捉えようとしなかったのは、悪評が立つのを恐れたからでしょう。防犯カメラの取り付けや薬物の取り出し記録を徹底しなかった管理体制が、捜査をここまで長期化させたんです。さらに久保木は『面倒くさい』という理由で20人以上を殺したと供述している。その供述は私がかかわってきた事件でも類を見ないほど異様です。このまま明確な動機が語られないと、今後の捜査も混迷を極めるでしょう」
この”無差別大量殺人事件”は犯人逮捕で一件落着とはいかないのだ。
撮影:蓮尾真司(久保木、大口病院)