プロ野球選手の「サインの転売」を防ぐためのささやかなアイデア | FRIDAYデジタル

プロ野球選手の「サインの転売」を防ぐためのささやかなアイデア

選手もいい気はしないし、他のファンも不快になる「サインの転売」。この行為を防ぐ手立ては?

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キャンプでブルペンに入る佐々木朗希。サインをもらえた人は大喜びかと思いきや・・・
キャンプでブルペンに入る佐々木朗希。サインをもらえた人は大喜びかと思いきや・・・

現時点では、新型肺炎の影響で選手との接触を規制している球団もあるが、春季キャンプにやってくるファンのお目当ての一つは「選手のサイン」だ。これは今も昔も変わらない。

いつもは球場で見るだけの選手も、キャンプ地ではすぐそばで見ることができる。話しかけたり、握手に応じたりしてくれることもある。そして幸運に恵まれればサインをもらうことも可能だ。

小さい頃にプロ野球の春季キャンプでもらった選手のサインが、何よりの宝物になることもあるのだ。野球ファンを醸成するうえでも大事なファンサービスではある。

しかし、最近はもらったばかりのサインを数分後にはスマホで写真を撮って転売サイトで販売する行為が横行している。

今シーズンで言えば、最大の注目を集めるルーキー、千葉ロッテの佐々木朗希のサインがその日のうちに転売サイトで売られたことが話題になった。

これは違法でも何でもないが、選手が練習の合間の時間を割いてファンサービスの一環として書いたサインが「商品」として売買されるのは、選手に対する背信行為だろう。ファンの風上にも置けない。

選手自身もいい気持ちはしないし、まわりのファンにしても、残念な気持ちになるはずだ。

なんでも金に換える風潮は、ネット社会になって加速した感がある。

そういう目で見てみると、キャンプ地には分厚い色紙の束が入った大きな紙袋を抱えて、選手を求めてうろうろ歩く人の姿が結構あることに気づく。

もちろん、ひいきチームの選手のサインをできるだけたくさん集めたいと思うファンもいるだろう。しかし中には転売で小遣い銭を稼ぎたいと思う人も混じっているようだ。

球団は選手には「できる範囲でファンサービスをするように」と申し伝えている。昔の選手の中には、ファンに取り囲まれてもうるさそうな顔をする人もいた。サインを頼んでも顔をしかめて断るような選手もいた。

今は、ファンには笑顔で接し、できるだけサインなどにも応じるようにしている。そうした教育は12球団とも徹底している。

しかし問題は、一人のファンにサインをすると、あとからあとからファンが後ろに並んで際限がなくなることだ。選手がファンに囲まれて立ち往生することもある。

そこで、多くの球団では、サインをする場所と時間を決めている。また、選手一人にするのではなく、公報スタッフが付き添ってファンを整列させたり、時間を見て列を「ここまでで終了です」と切ったりもする。

春季キャンプでの選手の仕事はあくまで「練習」であり、「ファンサービス」はその次だから、こうしたマネジメントは必要だろう。

ファンの中には、サインをもらえないからと不満を言う人も散見されるが、ファンは、本来、選手が心置きなく練習できることを願うものだ。それを邪魔立てするのは、「贔屓(ひいき)の引き倒し」だ。ファンの風上にも置けないということになろう。ファンにも自制心が必要だ。

しかしそういう形で球団が選手のマネジメントをし、ファンがマナーを守ったとしても「サインの転売」は、防ぐことはできない。

野球選手のサインで価値が上がるのは、選手が落ち着いた環境で丁寧に揮毫(きごう)したものだ。たくさんのファンに殴り書きのように書いたサインは、かなり価値が落ちる。しかし、その選手がのちに大スターになった時には「初期のサイン」に値打ちが出てくることもある。

たとえ殴り書きでも、投機的な価値が生じる可能性があるのだ。

「転売ヤ―」の中には、利益うんぬんよりも「転売行為」そのものをゲーム感覚で楽しむ人もいるという。

こうした転売行為の一定の抑止力の一つとして「宛書きを書く」という方法がある。

色紙にサインだけでなく、「〇〇様」とファンの名前を書くことで「転売ヤー」の転売意欲は一気に薄れる。誰かの名前が書かれたサインは、その人のために書かれたものであり「商品性」は一気になくなるからだ。

また転売した人物の名前も書かれたサインをネットに上げるのは、さすがに後ろめたい。

宛書きを書くのは選手にとっては邪魔くさいことではあろうが、それをすることで転売は、大幅に減るのではないか。

その判断を選手一人一人の判断にゆだねるのではなく、球団が「サインには必ず宛書きを書くことになっている」旨の通達をしてルールにすることで、この習慣を定着させることができるのではないか。

サイン色紙の転売そのものは、すべて問題があるとは言えない。しかし「書いてもらって即転売」という身もふたもない行為を抑止するためにも、「宛書き」を検討してはどうだろうか?

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

  • 写真時事通信社

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