アカデミー作品賞を獲る日本人は誰?是枝、黒沢、河瀬、園、蜷川…

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第92回アカデミー賞授賞式(日本時間2月10日)は、世界中の映画製作者とファンに希望を与える結果となった。鬼才ポン・ジュノ監督(50歳)による『パラサイト 半地下の家族』(19)が、作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞の4冠を制したのだ。

これまでにも傑作を生み出し続け、世界的に評価されてきたポン・ジュノ監督だが、非英語圏の映画が米国の映画賞であるアカデミー賞の作品賞と監督賞をダブル受賞したのは、史上初。最早「どこで作られたのか」はアカデミー賞にとって何ら枷とはならない――。この新たな“事実”が、各国の傑作たちがしのぎを削る映画界の新たな流れを生み出していくことだろう。これは当然、日本映画がアカデミー賞作品賞や監督賞を獲る未来も現実味を帯びてきた、ということでもある。

もちろん、『パラサイト 半地下の家族』は、韓国の風土に根差した物語ではあれど、ボーダレスに突き刺さる圧倒的な「面白さ」と、何より「映画の力」を感じさせる完成度が備わっていた。その証拠に、第72回カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールに輝いている。「韓国映画だから」なんていう括りをすること自体に気が引ける稀代の傑作なのだ。ただ、「面白ければ製作国や言語に関係なくアカデミー賞を獲得できる」と分かったこと自体、実にロマンチックではないか。映画は、これからもっともっと面白くなるはずだ。

もちろん、映画監督たちはアカデミー賞を獲るために映画を撮っているわけではないだろうし、アカデミー賞の権威が唯一絶対ということでもない。
とはいえ、必死に仲間たちと撮り上げた作品が海外でも評価され、結果的にアカデミー作品賞を獲るとしたら、それはきっと最大級の祝辞といえよう。

ということで、現時点でアカデミー賞の作品賞や監督賞を獲得する可能性がありそうな日本人の映画監督を、改めて考察してみたい。単純に、注目すべき日本人の映画監督リストという意味でも楽しんでいただければ幸いだ。

是枝裕和監督

今現在、最もオスカーに近い日本人映画監督といえば、やはり是枝裕和監督(57歳)。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『万引き家族』(18)は、『パラサイト 半地下の家族』と同じくカンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作。『そして父になる』(13)はカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。『誰も知らない』(04)はカンヌ国際映画祭で男優賞(柳楽優弥)を受賞。カンヌを中心に、世界中で高く評価されている。昨年は、フランスの生ける伝説カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークと『真実』(19)を作り上げ、海外進出も経験済み。

アカデミー外国語映画賞(現・国際長編映画賞)のレセプションに出席した是枝監督(2019年2月21日)。 写真:AFP/アフロ

▲アカデミー外国語映画賞のレセプション(2019年2月21日)に集まった世界中の監督たち。左からアルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』(メキシコ)、パヴェウ・パヴリコフスキ『COLD WAR あの歌、2つの心』(ポーランド)、ナディーン・ラバキー『存在のない子どもたち』(レバノン)、是枝裕和『万引き家族』(日本)、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク『Never Look Away』(ドイツ)。彼らが、非英語作品で「作品賞」を獲る日も近い?

是枝監督の特徴は、やはりドキュメンタリー畑出身のリアルで透明感のある物語にあるだろう。監督・脚本・編集を1人で行う是枝監督の作品は「ネグレクト」「取り違え」「貧困」といった社会性と、映画ならではのドラマ性がミックスされ、それでいて洗練された静謐なタッチが物語を美しく彩っている。

近年のアカデミー賞作品賞受賞作は、『ムーンライト』(16)と『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)がマイノリティの恋愛、『グリーン・ブック』(18)が差別、『パラサイト 半地下の家族』が格差と、現代的かつ社会的なテーマを映画というメディアに落とし込んだものが選ばれている。そういった作品作りは是枝監督の得意技でもあるため、今後ますます可能性は高まりそうだ。

黒沢清監督

日本人の映画監督はフランスでの人気が非常に高いが、黒沢清監督(64歳)も日本を代表する映画作家の1人。『CURE』(97)や『回路』(00)といったホラー映画は欧米のシネフィルにも人気が高く、三池崇史監督の『オーディション』(00)と並んで未だにファンから根強く愛されている。

『回路』はカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞、『トウキョウソナタ』(07)はカンヌ国際映画祭の「ある視点部門」審査員賞を受賞、『岸辺の旅』(15)はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞。2016年には、海外進出作品『ダゲレオタイプの女』も手掛けた。『旅のおわり世界のはじまり』(19)も、シルクロードを舞台にした作品だ。

黒沢監督は、「キヨシズム」と呼ばれるはっきりとした作家性が売りだ。揺れるカーテンや、映像をはめ込んだ運転シーン、不自然な沈黙、湿った影や暗がりなど、日常に転がる漠然とした恐怖を見事に映像に映し出している。『ミッドサマー』(19)のアリ・アスター監督など、クリエイターからも愛される存在でもある。黒沢監督の場合、社会問題を扱った作品はそこまで多くないため、今後どのようなテーマを選択していくか、が課題となるだろう。

河瀨直美監督

作家性という意味では、当代きっての映画監督かもしれない。地元・奈良県の風土に根差した映画を撮り続ける河瀨直美監督(50歳)は、1997年の『萌の朱雀』で、カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を当時史上最年少(27歳)で受賞。2007年には、カンヌ国際映画祭で『殯の森』(もがりのもり)が最高賞に次ぐグランプリ(審査員特別大賞)を受賞。2013年には、カンヌ国際映画祭で審査員も務めた。

河瀬直美監督。左:永瀬 正敏、右:水崎綾女「第70回カンヌ国際映画祭」のフォトコール(2017年5月23日)にて  写真:Backgrid/アフロ

現時点での世界的に受賞数が多い監督といえば、まずこの3人の名が上がるだろう。

彼らに続くのは、『淵に立つ』(16)がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した深田晃司監督(40歳)だろうか。そして、『僕はイエス様が嫌い』(18)で、サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を史上最年少で受賞した奥山大史監督(23歳)、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞に輝いた『37セカンズ』(19)のHIKARI監督(46歳)といった俊英たち。

他にも、『宮本から君へ』(19)など突き抜けた暴力表現が持ち味の真利子哲也監督(38歳)、『新聞記者』(19)で国内の映画賞を総なめにした藤井道人監督(33歳)、『凶悪』(13)や『孤狼の血』(18)の白石和彌監督(45歳)、『岬の兄妹』(18)の片山慎三監督(39歳)など、“大化け”しそうな映画監督は数多い。

ローカライズに力を入れているNetflixは、園子温監督(58歳)や蜷川実花監督(47歳)をピックアップ。この2人はネオ・トーキョー感をスキャンダラスに描き出せるクリエイターであり、ジャンル・ムービーの強者として期待を集めそうだ。ジャンルくくりであれば、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)や『ベイビー・ドライバー』(17)のエドガー・ライト監督からも認められた『カメラを止めるな!』(17)の上田慎一郎監督(35歳)の動向も気になるところだ。

アニメ界に目を向ければ『君の名は。』(16)や『天気の子』(19)の新海誠監督(47歳)はハリウッド実写映画化が進んでおり、今後『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)のヨン・サンホ監督のように実写監督デビューを飾るかもしれない。『未来のミライ』(18)の細田守監督(52歳)も、欧米で評価の高いアニメ監督の1人だ。

キリがなくなってしまうためこの辺りで筆を置くが、極論、これからは「世界中のどの映画監督にも、アカデミー賞作品賞・監督賞を手にできる可能性がある」時代へと突入していくだろう。新たなる才能の台頭・或いは活躍中の才人たちの更なる覚醒を楽しみに見届けつつ、サポートしていこうではないか。

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画情報サイトでの勤務を経て、映画ライターに。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント、トークイベント登壇等幅広く手がける。

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